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  • マーベラス
  • 発売日:2009/07/15
  • 価格:基本プレイ無料+アイテム課金
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業績を伸ばすオンラインゲームの開発と運営のポイントとは? 第2回Japan Creator\'s Networkゲームセミナーレポート
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印刷2010/08/27 17:25

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業績を伸ばすオンラインゲームの開発と運営のポイントとは? 第2回Japan Creator's Networkゲームセミナーレポート

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 8月26日,Japan Creator's Network(JCN)は,第2回JCNゲームセミナー「『モバイル&PCソーシャルゲーム,オンラインゲーム開発と運営のポイント』 〜運営のノウハウが事業成功のポイント〜」を開催した。
 JCNは,経済産業省関東経済産業局が主催するクリエイター関連企業のビジネスネットワーク形成プロジェクトだ。今回のセミナーでは,オンラインゲームの運営サービスに焦点が当てられ,一つのタイトルを5年以上サービスし売上を実現している企業,および現在成功を収めている企業による,セッションとパネルディスカッションが行われた。ここでは,そのレポートをお伝えしよう。

何よりも“繰り返し遊ばせる”ことだけを考えて

企画・開発された「ブラウザ三国志」


ONE-UP 代表取締役 椎葉忠志氏
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 一つめのセッションは,ONE-UP 代表取締役 椎葉忠志氏による「ブラウザ三国志が作る数字」
 同社が初めて手がけた「ブラウザ三国志」は,今や日本のブラウザゲーム市場の代表作だが,2008年後半の企画開始当初は,そもそもゲーム開発自体のリスクが極めて高いこともあって,周囲からほとんど期待されていなかったそうだ。
 2009年4月のクローズドβテストでは,初出タイトルとしては悪くない評価を得たものの,椎葉氏はゲームとして全然内容が足りていないと感じていた。そこで5月いっぱいを使って,椎葉氏自身が研究していた数多くのゲームタイトル──そこには当時登場したばかりの「ドラゴンクルセイド」も含まれている──の面白い要素を,次々に取り入れていったという。

 そのあとの躍進はここで説明するまでもないが,「ブラウザ三国志」をリリースしているAQインタラクティブ,そして椎葉氏自身も,サービス開始から1年を超えて,売上を伸ばし続けるとは予想していなかったという。
 椎葉氏はその根拠として,ゲームのボリュームが少ない点を挙げた。また「ブラウザ三国志」は,4か月に一度リセットがかかるというシステムになっているため,そのタイミングで離脱してしまう人が増えるという懸念もあったそうだ。しかし実際には,事前の予想とは異なり着々と売上を伸ばしているのである。

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 「ブラウザ三国志」の売上を支えているのは,1か月あたりのアクティブプレイヤーの課金率(MAU)と,その平均課金額(ARPPU)の高さだ。MAUにしてもARPPUにしても,一般的なブラウザゲームの範疇を超え,むしろアイテム課金制のMMORPGに近くなっていると椎葉氏は指摘する。
 椎葉氏はその理由を,以下の二つの切り口から説明した。

・コミュニティの深さ=課金率
・コンテンツのボリューム,ARPPUの高さ


 ソーシャルゲーム/ブラウザゲームは,MMORPGと比較して他者との関わりが少なくなるため,プレイヤーは自分のペースでゲームを進める傾向が強くなる。すなわち,「仲間と一緒に進みたい」「他人よりも先行したい」という気持ちが薄れるので,課金率も低くなるというわけだ。
 またARPPUについては,いつまで続けられるか分からないゲームに,多額の金銭を支払うことをためらうプレイヤーが多いと指摘。また,コンテンツボリュームの小さいタイトルでは,やれることがすぐに枯渇してしまう可能性があるため,勢い,ARPPUも少なくなってしまうのではないかと,椎葉氏は述べる。

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 そういった点を踏まえたうえで,椎葉氏は収益性の高いオンラインゲームを作るためのポイントを挙げた。
 第一に「同じことの繰り返しが苦にならないゲームデザイン」にする。
 これは“やり込み要素”など,長く遊ばせるための工夫で,日本のゲームデザイナーはかなり得意なのではないかと,椎葉氏は話す。新たな要素を追加しなくとも遊んでもらえるので,損益分岐ギリギリのラインで推移しているようなタイトルには,重要なポイントであるとのことだ。

 第二に「繰り返し買うことのできる販売アイテム」を作る。たとえばリアルのカードはダブってしまうとトレードするしかないが,オンラインゲームの場合は,合成システムなどで再利用を促すことができる。

 第三に「ゲームを過信しない」。これは,プレイヤーがゲームを遊び続けているのは,ゲームそのものの魅力ではなく,ゲーム内の友達付き合いがあるからだと椎葉氏は指摘する。
 さらにどんなゲームでも飽きるが,友達付き合いは絶対飽きることがないことを踏まえ,ゲームを作っているのか,友達付き合いの場を作っているのか,きちんと考察すべきと付け加えた。

 そして最後に挙げたのは,「心を動かす工夫」「理不尽さを感じさせないゲーム序盤」。これはどちらも,たとえ負けても“次こそは”と思わせることが重要だという指摘である。とくに椎葉氏は,プレイ開始から15分以内を重視しており,いきなり負けても「次にこうすれば勝てるかも」と思わせることに注力しているという。

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 「ブラウザ三国志」は,プレイヤー約15万人で月間2億5000万円の売上を誇っている。余談だが,この売上を維持したまま,8500万人のプレイヤーを抱えるFacebookの代表的なソーシャルゲーム「FarmVille」の規模まで拡大したと仮定すると,年間売上は1兆7000億円という計算になる。
 とはいえ,椎葉氏によると,ONE-UPがリリースしているFacebook版ブラウザ三国志の「Lands and Legends」は驚くほど不人気とのこと。世界展開には大きなチャンスが存在するものの,国によって好まれるゲームがまったく異なるという壁があるため,そうそう計算どおりにはいかないようだ。

※文中の売上高表記に誤りがあったため訂正しました。

話題提供とオープン化で,まず多数のプレイヤーを集める

「スカっとゴルフ パンヤ」のアイテム課金戦略とは


ゲームポット エンタテインメント事業本部 本部長代理 朝倉脩登氏
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 二つめのセッションは,ゲームポット エンタテインメント事業本部 本部長代理 朝倉脩登氏による「スカっとゴルフ パンヤ アイテム課金の成功について」
 朝倉氏によると,累計会員数250万人を誇る「スカッとゴルフ パンヤ」だが,現在でも多いときには月に2万人を超える会員登録があるという。無料オンラインゲームの事情に詳しい人なら,会員登録がどれだけ気軽にできる──たとえば重複登録も簡単にできてしまう──か知っているだろうが,それでも2004年のサービス開始から6年を経て,月2万もの登録があるのはかなりすごいことである。

 「パンヤ」のプレイヤー層は,男女比でおよそ6:4,年齢層は19歳〜20代後半がボリュームゾーンとなっていると朝倉氏は説明。20代後半のプレイヤーはサービス初期から継続している層だが,ここ1〜2年は19歳前後の層が多数流入しているため,全体の平均年齢は下がっているとのこと。
 アイテム課金制ビジネスの主体となる有料アイテムは,全部で4000種類以上が存在し,価格も10〜2000円とバリエーションに富んでいる。その内容は,大きく消費系アイテム,武器系アイテム,衣装アイテムに分けられる。

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 「パンヤ」では,季節ごとに新デザインの衣装アイテムを投入したり,過去に販売したアイテムの再販を定期的に行ったりすることで収益を上げている。これは,上記ONE-UPの「新たな要素を追加しなくとも,繰り返し遊んでもらえるように作る」とは正反対の路線だ(椎葉氏曰く「儲かっていないとできない」とのこと)。
 そのほかパンヤでは,時流に合わせて人気のタレントやキャラクター,アニメとのコラボレーションを行っている。中にはこじつけとも思えるものや,「ふーん,それで?」という冷ややかな反応が返ってくるものもあるそうだが,どんどん企画を立ててプレイヤーに投げていくのが「パンヤ」であり,ひいてはゲームポットの姿勢であると,朝倉氏は述べた。

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 また朝倉氏は,そうした試みを通じてアイテムの価値を創造できる理由について,パンヤが,プレイヤーのキャラクターへの感情移入が強いタイトルであることを挙げた。
 さらに朝倉氏は,アイテム課金の収益方程式や強みを挙げたが,実際にはなかなか理論どおりにはいかないと述べた。
 朝倉氏によれば,「パンヤ」の場合,1日にまったくといっていいほど何も売れない日があったり,逆に1日で1か月分の売上がある日があったりするとのこと。これをいかに平準化し,安定した売上を出せるようになるかが,「パンヤ」の今後の課題となるのだろう。

 最後に朝倉氏は,お金を払ってくれるプレイヤーも大事だが,そうでないプレイヤーも同様に重要であると指摘した。
 すなわち,オンラインゲームのプレイヤーにとって,最も重要なのは一緒に遊んでくれる人がいるかどうかであり,サービスを提供する側は,どうやって母体となるプレイヤー数を増やすかをまず考えなければならない。そのため,パンヤをはじめとするゲームポットのタイトルでは,とにかく毎日公式サイトにアクセスしてもらえるよう,Web上でのイベントを欠かさないようにしている。
 登録会員などで囲い込むのではなく,逆に全部オープンにして多くの人にアピールし,その中にいるお金を払ってくれる人に向けてビジネスをしていくことが重要なのではないかと述べて,朝倉氏はセッションを締め括った。

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市場動向を徹底的にチェックして

過去から現在への流れから“次に来るもの”を予測する


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国際ゲーム開発者協会(IGDA) 日本代表 新 清士氏
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GPコアエッジ 代表取締役社長 宮本貴志氏
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アエリア 取締役 中川英明氏
 続いて,「運営のノウハウが事業成功のポイント」と題されたパネルディスカッションが行われた。
 モデレーターを務めたのは国際ゲーム開発者協会(IGDA) 日本代表 新 清士氏,パネリストは上記のONE-UP 椎葉氏と,GPコアエッジ 代表取締役社長 宮本貴志氏,アエリア 取締役 中川英明氏だ。
 あらためて説明しておくと,GPコアエッジは2004年にサービスが開始された「アルテイル 〜神々の世界『ラヴァート』年代記」を筆頭にブラウザ型のオンラインゲームを長年にわたって提供してきており,アエリアは2009年に「Grand Fantasia -精霊物語-」「MysticStone -Runes of Magic-」を立て続けにヒットさせた。

 新氏が最初に提示した議題は,「顧客が何に対して満足しているか」について。
 宮本氏は,上記の椎葉氏のセッションを受けて,負けたときに「くやしい,次は勝ちたい」と思わせられるかどうかが重要と述べた。そして,スタッフに「そのとき顧客がどんな顔をしているか」を想像させることにより,どのようなサービスをすればいいのか考えさせるという。またスーパーの商品配列やレジの速さなどを例に挙げ,公式サイトの分かりやすさや,手続きの簡単さなどを工夫することも重要であると述べた。
 椎葉氏は,顧客対応で最もマズいのは「ゲームができない時間があること」と述べる。何か不具合が見つかった場合でも,サーバを止めて修正を施すべきか,それとも次のメンテナンスまで保留するかは常に検討しているという。

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 続いての議題は,「これまで主流だったクライアント型と,ソーシャルゲーム/ブラウザゲームの登場で台頭したブラウザ型それぞれの違い」について。
 宮本氏は,ソーシャルゲームとは,もともとSNSのようなコミュニティの基盤の上に存在するものなので,仕組みさえあればゲームとしてはヌルくても成立する,逆にそれを単体で提供しても成功しづらいだろうと述べた。
 中川氏は,ソーシャルゲーム/ブラウザゲームは目的がシンプルであるがゆえに,飽きやすいのではないかと述べ,定期的にイベントを催すなどして目的を提示していかなければならないだろうと付け加えた。

 その一方で,椎葉氏は「ブラウザ三国志」を例に挙げ,対戦ゲームは不公平感が出てしまうので短期的なイベントはあまり向いていないと指摘。ただ,「ブラウザ三国志」は4か月ごとのリセットと,それに伴うワールド統合が大きなイベントとして捉えられているのではと見解を述べた。
 すなわち,1ワールド内のプレイヤー数が倍増し,競争相手が増えることにより,今まで通りの戦略/戦術は通用しなくなる。今後どう進めていくか,誰と協力して誰と敵対するかを,ワールドが統合されるごとに考えなければならないわけだ。

 ここで新氏が,「ブラウザ三国志」はゲームデザインとビジネスモデルを含めた“ゲームメカニクス“がきちんと設計されており,拡張しやすくなっていると言及。
 そのことについて椎葉氏は,会社ぐるみで「Travian」を遊び倒し,その面白さや抱えている問題点をスタッフのほとんどが高いレベルで共有したと説明した。その結果,新しい面白さを作り出そうとするのではなく,過去に存在した面白さの中にヒントを求めたという。また椎葉氏は,そういったことはすべて,“いかに繰り返し遊ばせるか“ということを念頭に置いて考えていたとも述べた。

 「ブラウザ三国志」の成功要因について尋ねられた椎葉氏は,“タイミング”と答えた。
 椎葉氏は,世界各国の市場の動きを日々チェックし,現在世の中で受けているものや,過去にヒットしたものから,次に何が当たりそうか常に予測を立てているという。
 「現在は,過去から連綿と続いているもの」と言及する椎葉氏は,「Travian」そのものに影響されただけではなく,そのヒットに至った一連の流れを分析し,「次はこれが当たるはず」とブラウザ三国志の企画・開発を進めたとのこと。

 椎葉氏は,ここ数年のオンラインゲームプレイヤーの動向について,悲観的な意見は散見されるが全体の人口は増えていると述べる。
 ただ供給されるタイトル数が多すぎるために,各タイトル間で時間の取り合いになっており,プレイヤー人口が増えたこともあって“面白いゲーム”という概念が共有されにくくなっていると指摘した。
 宮本氏は,プレイヤー人口が増えたといっても,オンラインゲームとして認識している人がどれだけいるかは疑問だと述べた。また,割合が急増しているモバイルのオンラインゲームを遊んでいる層が,やがてMMORPGなどを遊ぶようになるかというとそれは難しいと話し,従来のオンラインゲームは,新たなゲーム性や面白さを提示する必要があるだろうと見解を述べた。
 中川氏は,アイテム課金制に抵抗がなくなってきたこと,またタイトル数が増えたことにより,コンテンツを見極めるスピードが上がったことに対し,アエリアでは運営サービスを強化することで対応を図っていると述べた。

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 ディスカッション最後の議題は「これからオンラインゲーム市場はどうなっていくのか」
 椎葉氏は,ソーシャルゲームも含めて,市場の流れはライトなゲームからリッチなものへと移っていくだろうと話す。
 それは差別化を図るために起こるもので,開発には時間とコストがかかるようになり,やがて淘汰へと進んでいく。その段階になってしまうと,以前から存在する大手のゲーム企業が有利になるので,そうなる前に何かしらアクションを起こし,チャレンジしてみるのもいいのではないかと見解を述べた。
 またグローバル展開に関しては,先述したとおり,各国でどんなゲームが好まれるかをどこまで理解できるかがポイントだと指摘。ライフスタイルの違いなども含めて,日本でヒットしたものを展開するなら,アジア方面がいいのではないかと述べた。

 宮本氏は,コンテンツやサービスの多様化に触れ,流行を追っているのでは間に合わない時代がやって来ると予測。ゲームメカニクスがきちんとしているタイトルか,あるいは流行の最先端を行くようなキャッチーなタイトルに二極化は免れないとし,各社がどういった方針を持って臨んでいくかが,これまで以上に重要になると述べた。
 またスマートフォンは,世界的にはかつてのWindowsのような普及を見せるとし,モバイル展開するなら,Androidでの開発は確実に視野に入れなければならないだろうと,予測を述べた。

 中川氏は,多くのゲームがオンライン要素を持つようになっていることに触れ,またスマートフォンの台頭により,オンラインゲーム市場は今後も拡大していくと予測。
 とはいえ,PCのゲームをそのままスマートフォンに落とし込むのではなく,それぞれ独立したものを提供すべきであると,中川氏は付け加える。PCとスマートフォンでそれぞれ展開したうえで,そのあと連結するようなアイデアが望ましいのではないかと述べた。

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