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iPhoneアプリは安すぎる!? スクウェア・エニックスの安藤氏に,この発言の真意を聞いた
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印刷2009/10/02 16:46

インタビュー

iPhoneアプリは安すぎる!? スクウェア・エニックスの安藤氏に,この発言の真意を聞いた

 東京ゲームショウ2009のイベントステージでは,9月25日に「iPhoneから見たゲームの未来」と題した講演が行われていた。司会を務めていたのは,GAP(Global Advanced Phone)研究会の発起人で,ITジャーナリストである林 信行氏。

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 この講演は,世界的な規模で見て急速に普及しているiPhone(および,iPod touch)が,いかにゲームに向いたプラットフォームであるかを,iPhoneアプリ市場の動向や可能性について解説しながら,啓蒙していくといった内容だ。
 林氏のみならず,バンダイナムコゲームスの加藤正規氏,カプコンの手塚 武氏,コーエーの松枝正樹氏,スクウェア・エニックスの安藤武博氏,ゲームロフトの中村玲生氏が代わる代わる登壇し,自社のiPhone用ゲームをPRしつつ,iPhoneの持つさまざまな可能性について語っていった。

App Storeで取り扱われているiPhoneアプリの数は7万5000本。そのうち30%近くがゲーム&エンターテインメント系のアプリだという
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 その中でひときわ異彩を放っていたのが,スクウェア・エニックスの安藤氏。というのも,ひとしきり自社のiPhoneアプリを紹介し,「今後作っていくものに関してはニンテンドーDSやPSPにも内容的に劣らないものを作っていきたい」と語った直後,「ここにはゲームを作られている方も多いと思うので提案があります」と切り出して,コンシューマゲームレベルのクオリティを持つゲームをリリースしているのに,価格設定が安すぎるものがあると,苦言を呈し始めたのである。

 安藤氏自身,iPhoneアプリに関しては市場としての手応えは感じているそうだ。しかし,これからマーケットを作っていくうえで大事な時期にさしかかっているからこそ,長期的に安心してコンシューマゲームクオリティのものを開発していくためには,目先のダウンロード数だけを狙うのではなく,適正な価格で販売していく必要もあるというわけだ。
 そしてそのためには,オンラインゲームのビジネスモデルが月額課金からアイテム課金に切り替わっていったように,iPhoneアプリに関しても,新たなビジネスモデルを早急に見つけなければ,この市場はネクストレベルにいけないのではないかと結んだ。

 登壇者の誰もが,iPhoneの持つ可能性のみをひたすら肯定的に語っていただけに,安藤氏の言葉には驚かされるものがあった。
 そこで,この講演終了後,安藤氏に発言の真意をじっくり聞いてみたのが,ここにお届けするインタビューである。


この市場を育てていくために,iPhoneアプリの価格を考えていきたい


4Gamer:
 ご無沙汰しております。
 先ほどの発言には驚かされたと同時に,凄く納得もできたんですが,スクウェア・エニックスはiPhoneアプリの価格をつり上げようとしているのでは? と,誤解をしてしまう人もいるかと思うので,詳しく聞かせてください。

画像集#009のサムネイル/iPhoneアプリは安すぎる!? スクウェア・エニックスの安藤氏に,この発言の真意を聞いた
安藤武博氏:
 時間が短かったんで要点だけを話してしまったんですが,僕は決して「iPhoneアプリを安くするな!」と言いたかったわけじゃないんです。
 ただ,内容に対して妥当な価格設定をしていかないことには,今後,自信を持ってゲームを開発できなくなってしまうという危惧があるんです。

4Gamer:
 それは,どういうことでしょうか?

安藤氏:
 多くの人は,価格を基準に相対評価をしますよね。
 例えば,ハイクオリティなゲームが,それこそ99セントだとか,100円程度で売られていると,どうしても主流がそっちになってしまいます。それを基準にほかのゲームの価格を見ると,高いと感じてしまうのでは? という恐れがあるんです。

4Gamer:
 確かに私自身,iPhone 3Gが日本で発売されてからのユーザーですが,アプリを購入するとなると,まず価格を見ちゃいますね。
 ただ一方で,コンシューマゲームクオリティのゲームを作るとなると,それなりのコストがかかるのも理解できますし,それを回収して次につなげていくためには,それに見合った価格設定が必要になることも分かります。
 でも,安いものを見てから高いものを見ると,内容とは関係なく食指が動かなくなるというか……。

安藤氏:
 自分自身,消費者としてはそう思いますから,非常に悩ましい部分ではあるんですよね。
 お客様に対して,購入していただきやすい価格で提供したいという気持ちはもちろんあります。先ほどの講演でも話されていましたが,カートリッジの生産コストや流通コストがない分に関して,価格を抑えることは十分に可能です。
 でも,ちゃんとしたものを作ろうとしたら,それなりにお金がかかるのも事実で,それを安く売っていかなければならないとなると,会社として利益を出すためには相当な数を売らなければならないんです。

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4Gamer:
 iPhoneとiPod touchを合わせて,現時点で5000万ものユーザーがいるといっても,利用形態はさまざまですからね。
 5000万ユーザーがすべてゲームの潜在的なプレイヤーというわけではないですし。

安藤氏:
 電話とメールとSafariとGoogle Mapだけっていう使い方の人も多いですからね。
 安い価格にする一方で,プロモーションなどにも相当な予算を割いて,結果的にもの凄い数が売れて,収支がトントンぐらいになったとしても,同じような苦労をその後も引き続きしたいのか? となると,なかなか難しいんですよ。

4Gamer:
 同程度の苦労をするんだったら,iPhoneアプリにこだわらないで,既存の市場を見たほうが数字的にも読みやすいでしょうし。
 実際,海外のゲームの一部には,もの凄いクオリティなのに,やたら安いものがあるんですよね。道楽なのかな? というぐらいに。

安藤氏:
 お祭りとか,イベントみたいなことで目立たせるためには,そういう価格設定も効果的だと思います。
 ただ,長期的に見たときにあまり好ましいものだとは思えないんですよ。一度,iPhoneアプリ価格の相場を下げてしまうと,もう二度と上げられなくなる気がしますし。

4Gamer:
 それこそコンシューマゲームの価格の話でいうと,PlayStationが登場した時期から,パッケージソフトの平均的な価格はぐっと下がりましたよね。そこから15年ぐらい経って,ハードウェアも移り変わり,それに従って開発費が高騰してるなんて話はよく聞くのに,販売価格の相場はそれほど変わってないんですよね。それと同様のことが起きる可能性がありそうです。

安藤氏:
 ええ。お客様としては,安くて面白いゲームを遊べたほうが嬉しいとは思うんです。だからそういったニーズにもきちんと応えつつ,それでいて納得してお金を払っていただけるような仕組みを考える必要があると思っています。

4Gamer:
 先ほどのステージでも,オンラインゲームを引き合いに出されていましたね。

安藤氏:
 オンラインゲームの市場で月額課金からアイテム課金にスタンダードが移行したように,iPhoneアプリに関しても,新しいビジネスモデルを確立するチャレンジをしていかなければいけないフェーズに入ったのかなと考えてはいます。iPhoneでアプリ内課金も可能になりましたし。
 やはり現状は,ほとんどのiPhoneアプリが売り切りになってますけど,それだけだと厳しい部分がありますから。


スクウェア・エニックスにしか作れないものを作っていく


Ethan Nicholas氏による「iSHOOT」は,インディーズ系作者による作品が大成功を収めた一例
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4Gamer:
 日本の携帯電話コンテンツ市場だと,月額300円とか500円とか,ポイント制みたいなものが多くて,それがきちんと受け入れられているんですよね。
 ひょっとしたら,iPhoneアプリに関しても,こういったビジネスモデルも可能性はあるのかなと思うんです。

安藤氏:
 そういったことにもチャレンジしていくべきだと思います。
 ただ,携帯電話の延長としてだけではなく,普通のゲームコンソールとして考えるならば,それに見合ったスキームや流れがあれば,より幅が広がるのになって率直に思うんですよ。

4Gamer:
 といいますと?

安藤氏:
 iPhoneは一般的な携帯電話よりスペックも高いですから,我々がiPhone向けに作っているものも,だんだんPSPレベルになってきているんです。他社でも,すでにPSPレベルのものを出されていますし。
 となると,ちゃんとしたマーケットさえあれば,PSPで4800円で売っているような内容のものだって作りやすくなるし,幅が広がると思うんです。

4Gamer:
 現状,ハードウェアスペック的には,そういったものが作れるのに,そのためにかかるコストを回収できるだけの環境にはなっていないという認識ですね。
 iPhoneに限った話ではないですが,どこの市場も需要と供給のバランスがとれて初めて成長して,広がっていくものですよね。個人的には,iPhoneアプリは参入障壁が低いこともあって供給過多になっており,それも一因となって,内容を半ば度外視した苛烈な価格競争が起きているように見えます。

安藤氏:
 まさにそうなんですよ。
 iPhoneアプリ市場で特殊なのは,我々のようなゲームメーカーと,インディーズの人達が,まったく同じ土俵で勝負しなければならないことなんです。Xbox Live Arcadeの場合は,きちんと分かれているのに。
 もちろん,だからこそエキサイティングであるというのも事実ではありますが。

4Gamer:
 いわば,商業作品と同人作品が同じ場所にフラットに並んでいて,消費者はどれでも選択できるわけですもんね。
 消費者目線では,選択肢が豊富にあって楽しいことではありますけど。

安藤氏:
 インディーズの人達が持っているアイディアって,我々にはない素晴らしいものが多いのは確かですし,それを半ば趣味みたいな形で開発して,安い価格でリリースした結果,けっこうな売り上げになっているというケースもありますからね。
 ただ,それと同じことをやるよりも,彼らには作れないものをきっちり作って,それに見合った価格で売っていきたいという姿勢は,ゲームメーカーとして崩しちゃいけないと思うんです。

4Gamer:
 企業のプロジェクトとしてゲームを開発するならば,当然のことですよね。

安藤氏:
 なので,コンシューマゲームを作ってきたプロフェッショナルと一緒に,彼らが持つノウハウを選択集中して投入しながら,現在もいろいろと開発しているんです。スクウェア・エニックスっぽいものを。

4Gamer:
 にもかかわらず,それが安い値段じゃないと売れないままだと……。

安藤氏:
 iPhoneアプリ,やめよっか? という話になっちゃうんですよね。
 まあ実際,価格については皆さん悩んでいるところだとは思います。

4Gamer:
 でしょうね。
 かといって,コンシューマゲームのメーカーが,「開発費を抑えて安く販売できるゲームをたくさん作ります!」となって,キャラクターものの落ちものパズルみたいなものが量産されたりしても,それを喜ぶ人がどれだけいるか微妙なところですし。


この市場を少しでも早く確立させないことには,終わってしまう


App Storeのローンチタイトルとなった「スーパーモンキーボール」も,大きな成功を収めている
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安藤氏:
 例えばセガさんの「スーパーモンキーボール」は見事に成功していますが,あれは先行者利益というか,App Storeのローンチに間に合わせるという戦略がきっちりはまったからだと思うんです。

4Gamer:
 競争相手が少なかった分,目立ってましたし。
 だから正直,スーパーモンキーボールの成功を引き合いに出して,「ゲームメーカーの皆さん,この市場は可能性がありますよ!」と言い続けるのは,あまり適切ではないんじゃないかとすら思います。

安藤氏:
 ええ。現状,市場自体は成熟していないし,もの凄くカオスな状態に突入していますからね。まさにこれからどうなるかという時期なので,スクウェア・エニックスとしては価格についても,内容についても,きちんとしたくさびを打っておきたいんです。
 そうやって,マーケットそのものを成長させていきたいですから,それを皆さんもご一緒にいかがですか? というのが,先ほどの提案なんですよ。

4Gamer:
 市場としての可能性があるのは間違いないですからね。

安藤氏:
 そこに疑問を挟む余地はないと思います。
 コンシューマゲームの場合は,発売から3週間で大勢は決してしまいますが,App Storeでは延々売れ続けているゲームもありますし,それこそ,友達から面白いゲームを勧められたら,その場でダウンロードして遊ぶことだってできますし。こんなこと,今までにありませんでしたからね。
 こういう広がり方にも可能性は感じています。これでゲームの内容がコンシューマゲームに近づいていったら,時期尚早かもしれないですけれど,何もかもが変わってしまうような気さえしているんです。

4Gamer:
 では現状,iPhoneでゲームを遊んでいるのは,どんな層だととらえていますか?

安藤氏:
 我々が出しているものに関しては,けっこうゲームが好きな方が多いと思います。バリバリのゲーマーだけでなく,普段はあまりゲームで遊ばないけど,何年かに一度のビッグタイトルの続編は遊んでいるような方も,けっこう多そうな気配ですね。
 レビューを見ていると,「スクウェア・エニックスは●●のようなものを出すべきだ」とか,「●●を待っています」みたいに具体的な要望が多いんですよ。ということは,ほかのプラットフォームでスクウェア・エニックスのゲームを愛してくださっている方が,iPhoneでも購入してくださっているのかなって思いますね。年齢層は,やや高めでしょうけど。

4Gamer:
 iPhone自体,所有者の年齢層はほかのゲーム機に比べて高めですし。

安藤氏:
 だから子供向けのコンテンツではなくて,成人された方でも楽しめるようなものを,作っていこうと思っています。

4Gamer:
 やっぱりiPhoneでゲームをやりたいという人は,ゲームメーカーに対する期待も大きいと思うんですよ。
 いくら世界で売れているといわれているようなインディーズのゲームでも,ゲームに慣れている人にとっては「新しさはあるし,価格は安いけど,満足感もそれなり」みたいな感じがほとんどですし。

安藤氏:
 だから結局,繰り返しになっちゃうんですけど,我々みたいにコンシューマでもゲームを作っているメーカーが,この市場をなんとかして確立させないと,今後につながらないんです。
 じゃないと,試しに作ってそれで終わり。ってなっちゃいますから。

4Gamer:
 実際,すでにそういう会社もありますもんね……。


iPhoneは新しいチャレンジをしやすいデバイス


スライディング・ヒーローズ」(発売中。税込み600円)
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4Gamer:
 せっかくなので,価格とか市場以外のお話もうかがいたいんですが,iPhoneのゲームを作るにあたって,難しい部分はありますか?

安藤氏:
 いまちょっと心配しているのは,アクションゲームとの相性みたいなところですね。
 現状は,物珍しさが先に立っていると思うんですが,もう少し落ち着いてきたときに,ゲームとして快適に遊べるのか? という部分が問われ始めると思うんです。

4Gamer:
 それが,アクションゲームだと難しいかもしれない,と。

安藤氏:
 例えば,我々は十字キーとAボタン,Bボタンの呪縛から離れることが,なかなかできないんです。ただ,これをそのままiPhoneに持って行ったとき,平面のタッチインタフェースだと,ボタンの押し込み幅みたいなものがないので,どうしても気持ち悪い部分が出てきてしまいます。

4Gamer:
 確かにそれは感じます。

安藤氏:
 いわば,タイトルごとにコントローラを考えていくみたいなことですから,ハードウェアデザインに近い部分なんですよ。ところが,そういうノウハウは我々のようなソフトウェアメーカーにはないので,そこで試行錯誤することが多いんです。
 最終的には,それなりに気持ち良いレベルまで持って行こうとしているんですが,ひょっとしたらiPhoneにはゲームのジャンルごとに,相性というものがある……という結論に達するかもしれません。

4Gamer:
 ええ。

安藤氏:
 でも,iPhoneのゲームを作っていると,ボタンって凄いありがたいものなんだなってあらためて気付かされましたね。ゲームデザインというものの原点に立ち返る機会にもなりました。
 もちろんタッチしたほうが気持ちいいインタフェースができあがる場合もあって,そういう発見があるのはクリエイティブの面でいうと凄く特徴的ですし,刺激的ですよ。

4Gamer:
 いくつかアクションゲームは遊んだんですが,コントローラのあるゲーム機と比べると,違和感があるのは否めません。
 そのうえで,よく出来てるなぁとは思うんですが。

安藤氏:
 そういえば,横にしたときにホームボタンを押して遊ぼうとして,ひたすらアプリを落としまくってる人がいたりとかして。やっぱり,みんなボタンを押したいんだなっていうのが分かったりもして。

4Gamer:
 人間はボタンを押すのが好きなんですよね,きっと。

安藤氏:
 結局,押した手応えとか反応みたいなものも,ゲームの楽しさの一つなんですよね。
 なので,iPhoneでやっていくにあたって,このあたりはどうしよう? というのも,考えなくちゃいけない部分だと思っています。

4Gamer:
 iPhoneには傾き検知機能もありますが,これについての感触も教えてください。

安藤氏:
 実は,傾き賛成の自分と,傾き反対の自分がいるんですよ。
 新しいデバイスの新機能をプレゼンテーションするときに派手なものって,実際に使っているうちに,本当はボタン一つ押したほうがいいということに気付いたりするんですよね。なので,新機能みたいなもの対しては,一歩引いて見るようにしているんですよ。
 でもApp Storeでは「傾きゲーム」がジャンルとして成立するぐらい出ていますから,どうせ作るんだったら,傾けないと遊べないものを作りたいとは思うんです。傾けても遊べるし,傾けなくても遊べるというのでは,この機能をわざわざ使うこともないでしょうし。

4Gamer:
 スクウェア・エニックスからは,傾き検知機能を生かした「スライディング・ヒーローズ」というゲームが出ていますよね。

安藤氏:
 あれは僕のプロデュース作品ではありませんが,傾けないと楽しめないという意味で,芯の通ったゲームデザインになっていますね。
 そこにスクウェア・エニックスらしさを足すときに,じゃあRTSをくっつけてみようとなったら,意外とうまくいって,新しい楽しさが生まれています。
 そういう意味でもiPhoneって,新しいチャレンジがしやすいデバイスだと思いますし,作り甲斐はあります。

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「ソングサマナー」は,iPod版のプレイヤーにも遊んでほしい


ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版」(価格および発売日未定)
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4Gamer:
 ではこのまま,各タイトルについても聞かせてください。
 「ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版」は,以前,クリックホイールのiPod用ゲームとしてもリリースされていたものの移植版ですよね?

安藤氏:
 はい,これはiPod,iPhoneのように,誰もが音楽を楽しんでいるデバイスだからこそ楽しめるタクティクスRPGです。

4Gamer:
 確か,曲によって生み出されるファイターが変わるとか,そういうシステムがありましたよね。

安藤氏:
 はい,PSPもDSiも音楽再生機能は持っていますが,どれぐらいの人がそれを使っているか? というのがありますよね。その点,iPodやiPhoneであれば,ほぼ100%音楽も楽しんでいるだろうということで企画したものです。

4Gamer:
 今回,iPhone向けに新しく作り直しているんですか?

安藤氏:
 PSPやニンテンドーDS用のゲームと比べても,遜色のないクオリティのものを目指して,ユーザーインタフェースも含めて変えています。
 我々の本気度のバロメーターの一つとして,アートワークやキャラクターデザインがあるんですけど,これらは直良有祐やフェラーリ ロベルトなど,コンシューマゲームで活躍している人達とチームを組んでやっています。
 プレイ時間としても20時間は遊べるようになっていますんで,満足感はけっこう高いと思いますよ。

4Gamer:
 iPod版では,「ソングサマナー2」がリリース予定だったと聞きましたが……。

安藤氏:
 実は諸事情で出せなかったんです。なので今回は,2の要素も盛り込んでいます。シナリオも改修しましたし,新キャラやマップも追加しました。ファイターの種類も増えています。
 iPod版プレイヤーからの,「生み出した曲が分からない」「ファイターがすぐいなくなっちゃうのが寂しい」「成長要素がもっと欲しい」といった主立ったご要望には,全部応えています。

4Gamer:
 それで「完全版」なんですね。

安藤氏:
 はい。なのでiPod版を遊んだことのある人にも,ぜひもう一度遊んでほしいですね。iPod版をクリアすると表示されるパスワードも,ちゃんと生きるようにしていますから。
 もちろん,iPhoneで初めて遊ぶ人にも,「iPhoneでここまでちゃんとしたRPGができるんだ!」と思ってもらえるように,現在最終調整をしているところです。

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「国破れて山河あり」(価格および発売日未定)
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4Gamer:
 一方,「国破れて山河あり」は,もともとNTTドコモやauの携帯電話用ゲームからの移植ですね。

安藤氏:
 ええ,個人的に遊んでいたら,トイレにまで持ち込んで続けてしまうぐらい,非常に中毒性の高いRTSだったんですよ。なので,これをiPhoneでも遊んでみたいという,プレイヤーとしての願いみたいなものから生まれたものです。「クリスタル・ディフェンダーズ」もそうだったんですけど。

4Gamer:
 好きなゲームを移植するぞ! ということですか。
 国破れて山河ありを,一言でいうとどんなゲームなんですか?

安藤氏:
 うーん,まあ,「Warcraft」から生産の概念がなくなっているというか。

4Gamer:
 一発で分かりました(笑)。

安藤氏:
 RTSって,操作が煩雑だったり,やることが多すぎて取っつきにくかったりしがちですよね。そこで,あえて最低限の行動として,出兵の方向指示,徴兵する本拠地の移動,アイテムを使うという,三つだけに絞ったんです。
 それでいて,RTSとしての面白さもきっちり追求した作品です。

4Gamer:
 間口は広げつつ,奥深さもきちんと用意するということですね。

安藤氏:
 そういうことです。
 こちらでは,マップの追加販売など,アプリ内課金にもチャレンジする予定です。追加マップなども含めて,長い間楽しんでもらえるように作っています。

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本格的なオリジナルのRPGも開発中。来年には移植作品も?


2008年12月リリースの「クリスタル・ディフェンダーズ」,2009年5月リリースの「ヴァンガード・ストーム」で,ある程度の手応えを感じられたからこそ,現在もスクウェア・エニックスではiPhoneアプリ事業を継続しているのだろう
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画像集#025のサムネイル/iPhoneアプリは安すぎる!? スクウェア・エニックスの安藤氏に,この発言の真意を聞いた
4Gamer:
 先ほどのステージでは,“隠し球”もあるとおっしゃっていましたが,それは……?

安藤氏:
 まだ詳しいことは言えませんが,やはりスクウェア・エニックスに対して皆さんが期待しているものに応えたいと思って,本格的なRPGを作っています。

4Gamer:
 おお! それは,オリジナルですか? 移植ですか?

安藤氏:
 オリジナルです。
 もちろん,移植作品やスピンアウト作品もラインナップとして充実させていきますが,せっかくiPhoneという新機軸にチャレンジしやすいプラットフォームでやるんだったら,オリジナルがいいなと。
 ちなみにキャラクターデザインは,直良が手がけています。

4Gamer:
 それは,いつ頃リリース予定なんですか?

安藤氏:
 うーん,年内には出したいんですよね。クリスマスシーズンは,盛り上がりますから。ただ正直,間に合うかなぁ? っていう感じですけど,とりあえず年内には,何らかのアクションをしようと決めてはいます。

4Gamer:
 遊べるものが出せるといいですね。

安藤氏:
 頑張ります!
 これら以外にも,皆さんが知っているタイトルの移植を含めて,来年はさらにいろいろなものを出していく予定ですので,楽しみにしていてください。

4Gamer:
 期待しています。
 今日はありがとうございました。


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 米国時間の9月9日にAppleが行った発表会では,新型iPod touchが“ゲーム機として優れている”ということが強くアピールされていた(関連記事)。iPhoneシリーズも含め,確かにハードウェアの持つポテンシャルは高いし,App Storeを通じて手軽にアプリを販売/購入できるのは,ゲームメーカーにとっても,消費者にとってもいいことずくめである。
 しかも,現時点でiPhoneとiPod touch合わせて5000万台が流通しており,さらに今秋には中国での正式にiPhoneが販売されることも決まっていることから,今後も世界規模でかなりの台数が普及していくのは間違いない。

 しかし,インタビューでも触れているとおり,ゲームの新たな市場として見た場合,すでにかなり混沌とした状態になっているのも事実。それでも可能性があるのは明らかだからこそ,何とかしなければならないという思いが,安藤氏にはあるようだ。
 その思いがどういった結果につながるのか。市場,そしてスクウェア・エニックスの動向から,しばらく目が離せそうにない。

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