連載
徳岡正肇の これをやるしかない:30歳からのマルチプレイFPS入門――とくにストラテジーゲーマーに向けて
2011年後半は「FPSの当たり年」といわれている。6年ぶりのナンバリングタイトルとなる「Battlefield 3」や,メガヒットシリーズの最新作「Call of Duty: Modern Warfare 3」など,数年に1度というレベルのタイトルが激突するうえ,「Crysis 2」「Bulletstorm」「Operation Flashpoint: Red River」など,ハイレベルな作品も少なくない。
しかし,シングルプレイはともかく,マルチプレイともなると,最近衰えを感じて困るという三十路プレイヤーも多いはずだ。正面切っての撃ち合いでも,ナイフさばきでも,十代,二十代の生きのいい若者達には全然歯が立たない,オレももう引退かな……という感じだが,安心してもらいたい。
ストラテジーゲーマーという印象の強いライターの徳岡正肇氏だが,実はかなりコアなFPSプレイヤー。そんな徳岡氏が「30歳からのマルチプレイFPS入門」と題して,反射神経に(あまり)頼らない必勝法を伝授しようというわけだ。実は,ストラテジーゲーマーにこそマルチプレイFPSの適性があった,という驚くべき事実をぜひ確認しよう。
あきらめるのは,まだ早い
しかし,そこはFPS。「やっぱり苦手」「シングルプレイはそれなりに遊ぶけど,マルチプレイになると,若い子にはとてもかなわない」といった声を,とくに筆者の周りの,それなりの年齢層の人々から聞くことが多い。また,現役プレイヤーの中にも「いつまでマルチプレイFPSについていけるか分からないですね」という不安を持っている人は,意外に多いようだ。
マルチプレイFPSにおいて,若さと才能は絶対にどう考えても有利に働く。5年前には出会い頭の撃ち合いで負けなかったはずなのに,今では5分5分以下などという話は珍しくなく,まして30歳を過ぎてFPS初体験ともなれば,生きのいい若者に勝てる可能性は果てしなく低い。
これはやはり,「老兵はただ,消え去るのみ」なのだろうか? いや,それは必ずしも真実ではない,と筆者は主張する。そりゃ,プロゲーマーと呼ばれる人々が戦うような超ハイレベルの戦闘は無理だが,実はマルチプレイFPSは「腕前の錆びつき」の影響を受けにくいゲームジャンルの1つなのである。
というわけで今回は,「30歳からのマルチプレイFPS入門」と題し,反射神経や動体視力に頼らない戦い方を真面目に考察したい。「激しいゲームはちょっと……」と遊ぶ前から尻込みしているストラテジーゲーマー諸氏は,もしかすると意外にもマルチプレイFPSに適性があるかもしれない,というお話だ。
まあ,語呂がいいので“30歳からの”としているが,当然ながら30歳未満でFPSのマルチプレイで全然勝てないという人のお役にも立つだろうし,50代だがバリバリの現役マルチプレイFPSプレイヤー……しかし最近衰えを感じているという人にとっても何かの参考になるはずだ。では,始めてみよう。
そもそもストラテジーとは,どんなゲーム?
ストラテジーゲームは,プレイヤーの立場に応じて,おおむね3種類に分かれる。
1つめが戦略級で,プレイヤーは国家の最高指導者として,戦争遂行の一切合財を決定する。代表的なのは「ハーツ・オブ・アイアン」シリーズや,「ヨーロッパ・ユニバーサリス」シリーズなどだろう。
2つめは作戦級だ。プレイヤーは,大きな戦争の一方面(または一局面)で戦う部隊の指揮官となって勝利を目指すわけだが,戦略級と違って「そんな戦争は始めない」「もっと戦車を投入すべきだ」といった判断はできない。一般に戦場は戦略級よりも緻密に再現され,マルチプレイの場合,それぞれのプレイヤーは互いに異なる目的を追求する(例えば,攻撃側は突破,防御側は防衛など)ことが多い。
MS-DOS時代はそれなりに発売されていたが,それ以降は戦略級あるいは,以下に述べる戦術級に吸収されてしまって,現在はあまりタイトルが存在しないカテゴリーである。
3つめは戦術級で,プレイヤーは村や丘などの局地的な戦場で,小/中規模の部隊を指揮する下級指揮官になる。戦闘は非常に緻密に再現され,戦車1両,重機関銃1丁のレベルでシミュレートされる作品が多い。例を挙げると,「Theatre of War」「Company of Heroes」などだ。
「Theatre of War」 |
「Company of Heroes」 |
さて,本稿で扱うFPSとは,戦術級のさらにサブジャンルである「戦闘級」のストラテジーゲームである,というのが筆者の主張だ。戦闘級ストラテジーは,基本的に兵士1人=1ユニットで,戦術級よりもさらに細かく戦闘が管理される。そしてこれをリアルタイムで処理し,かつユニットの主観視点でプレイするのがFPSなのだ。ただ,ちょっとばかり反射神経の要素が強いのだが。
FPSは射撃するゲーム。それは果たして事実か
などというと,反論したくなる人も多いはず。つまり,シングルにせよマルチにせよ,FPSに必要な反射神経は「ちょっとばかり」などではなく,「ものすごく」だ! ということだ。だが,本当にそうだろうか?
FPSは,ある程度リアルなシミュレータでもある。そして,どんなFPSでもきちんとシミュレートされているのが「人間は,前後を同時に見られない」という現実だ。
つまり,FPSでは相手がどんなに上手でどんなにピチピチの若者であっても,背後から撃てば普通は撃ち勝てる。実際のプレイに即してみると,厳密に背後でなくても構わず,側面から攻撃するだけでも高確率で撃ち勝てる。
FPSは銃で射撃するゲームなのだから,素早くマウスを操作して正確に狙って撃てたほうが,敵を倒すチャンスが増えるように思える。しかし,実は本当に必要なのは,狙って撃つことではなく,敵からこちらが見えない場所に「位置する」ことのほうだ。うまいプレイヤーは常に背後の確認も怠らないとはいえ,確認し続けることはできない。多少不適切な狙いであっても,背後から撃てば射撃の腕前の差は帳消しになる。
つまり,FPS――とくにマルチプレイFPSは射撃するゲームではなく,適切な移動をするゲームであり,うまいプレイヤーは何よりも移動の精度が高いのだ。頭に弾が当たれば即死というルールが一般的なので,ベタ足で正面きっての撃ち合いは,あまり望ましい状況ではない。腕の差はあるだろうが,それは運試しでしかないからだ。確実に敵の側面や背後を取って,最小限の弾数で敵を倒す。それが理想だ。
戦闘ではなく,移動が重要という力の配分は,ストラテジーゲームの基本中の基本でもある。「両陣営がガップリ四つに組んでの激しい戦い」などは,単純に人的資源が多いほうが勝つだけだ。人的資源に勝る側が消耗戦に持ち込むのは立派な戦略だが,そういう状況に持ち込めたなら,基本的に戦闘はそこで終わっている。
自分の目標を達成し,かつ敵の目標を妨害するために,どのような移動を行うか。これこそが,多くのストラテジーゲームにおける大きな課題になる。発生する戦闘そのものは,やや刺激的なデザートといえるだろう。
射撃が最も重要となるFPSもある
理由はさまざまだが,以下のような特徴を持ったゲーム(あるいはマップ)は,射撃が重要なファクターになる。
■スナイパーライフルの威力が高い
狙撃銃が圧倒的な火力を持っていると,それだけで射撃のほうが重要になりがちだ
■開けた地形が多い
長射程の攻撃に対して,命中しないように祈ることしかできないマップでは,射撃のほうが重要になる
■相手を倒すことに大きな意味がある
バトルロワイヤル方式の個人戦であるとか,4人対4人で先に敵チームを全滅させたほうが勝ちとか,あるいは単純に1人対1人の決闘とかになると,射撃の腕前は非常に重要だ
また,特殊なケースだが,高火力だが射撃のサイクルが遅い(1回撃ってから,次に撃てるまでが長い)武器を使う場合も,必然的に射撃の腕前が要求される。このような武器を使う場合,たとえ背後をとっても,1発で相手を倒せなかったら,振り返った相手に撃ち返されることは明らかだ。
だが,射撃より移動が重要! 多くのFPSではそれが真実
もちろん,射撃ではなく移動の重要性が強調されるマルチプレイFPSも数多く存在し,そうしたタイトルは,移動が重要である理由として「背後から撃ったほうが有利」以上のものを持っている。
例えば,「マップ上のあちこちに武器やアイテムが出現する」場合を考えてみよう。弾薬を補給したり,攻撃によって減った体力を回復したりといったアイテムがマップの所定の場所に出現するタイプのゲームでは,とにかく動いてアイテムを拾わないことには戦力差が付きすぎて話にならない。
「Enemy Territory: Quake Wars」 |
「Red Orchestra: Ostfront 41-45」 |
こうした,作戦の立て方や読み合いが重視されるゲームでは,反射神経の差がチームの勝敗に直結するとは限らない。「相手を倒す」という点に限って言えばまるでかなわないとしても,戦術的な移動の優劣は,必ずしも年齢に依存しない。また「自分が死ぬ」ことが勝負に決定的な影響を与えることも少ないため,射撃精度その他の差で撃ち負けても痛くない(参加人数が多ければなおよい)はずだ。
この,「敵を倒すこと以外にも勝利条件がある」というケースは,ゲーム固有のデザインというよりも,PvPのルールとして,さまざまなFPSに存在している――一般に「オブジェクティブ」と呼ばれる。
オブジェクティブ要素の強いFPSとしては「Enemy Territory: Quake Wars」「Red Orchestra: Ostfront 41-45」などが挙げられるが,Call of Duty: Modern Warfareシリーズのように規模の大きなタイトルなら,「Domination」など,移動が重視されるモードをマルチプレイのルールの中に確実に持っている。
いよいよ実戦に突入! 最初に覚えるべきはマップだ
さて,以上の理屈によって理論武装していただいたところで,これから実際にどうしたらマルチプレイFPSでロートルが若者と張り合えるのか,あるいは初心者ロートルが,熟練の若者と戦えるのかについて具体的に見ていきたい。前置きが長かったが,ここからが本題だ。
最低限,自分が行きたい場所に最短距離で行けるようになること,これはもう必須だ。そもそも移動が勝負を分けるのだから,迷子になっていては戦争にならない。
それから,とにかく死にまくること。そして,やられた場所と理由を可能な限り覚えておくこと。これは「マップを覚える」うえで非常に重要だ。繰り返し倒されているうちに「よほどの理由がない限り,通ってはいけない場所」「敵が隠れて待ち伏せしている確率が高いスペース」といったものが分かってくる。自分が死んだところをリプレイしてくれるようなゲームであれば,必ずそのリプレイを見るようにしたい。
マップの構造と,マップ特有の「キルゾーン」が把握できたところがスタートラインだ。以下のことを心がけてプレイしてみよう。
(1)常に迂回路を考える
目標に対する最短ルートではなく,迂回できるルートを考え,試してみる。最短ルートは,当然ながら敵の抵抗も大きい。迂回ルートは遠回りになるぶん,敵がまるでいなかったり,うまくするとスコープを熱心に覗き込んでいる敵スナイパーがゴロゴロしていたりする。
ちなみに,この手の迂回路には超人的な腕前を持ったプレイヤーが潜んでいることがある(勝負の要諦になることがある以上,勝ち負けにこだわるプレイヤーが重視するのは当然のことだ)。そのときは素直に別のルートを考えよう。蛇の道に蛇がいたからといって,怒ってはいけない。
(2)足を止めない
とくに射撃した直後は,なるべくポジションを変えたい。銃声やHUDの表示などから,敵チーム全体に対してこちらの居場所が明らかになっていることが多いので,同じ場所で射撃を続けるのは自殺行為だ。しかし,ほんの少しでも移動し,遮蔽の取り方を変えるだけで,銃声を聞きつけて走ってきた敵兵が眼前を通過して背中を見せてくれることも結構多くなる。
(3)ゲームのアナウンスに耳を澄ます
「拠点が占領されそうです」といったアナウンス(あるいは表示)を逃さず,よほど遠いか,自分がほかの拠点を占領しているのでない限り,そこへ向かう。たとえ奪回できなくても,拠点に近づいてグレネードを投げるだけでチームの勝率がまったく変わる。
何度も戦っているうちに,現在地から拠点までの距離感がつかめてくるはずだ。ちなみに,敵が短時間で拠点を占領できたら,敵の数が多いということ。敵が集団で動いている可能性が高いので,一旦やりすごすもよし,ありったけのグレネードを拠点に放り込むもよしだ。
(4)デス数を嘆かない
チーム戦においては,キル/デスレシオの低さを嘆かないことだ。チームが勝つか負けるかが問題であって,チームが勝ったなら個人成績は関係ない。相手チームにいる活きのいい若者が100キル以上を叩き出そうとも,あなたのチームが勝ったなら,それはあなた(達)がその若者(達)に勝ったということだ。そう思おう。
とはいえ,戦術上それが必要に思えたとしても,なんの支援もなしに分隊支援機関銃の弾幕に突っ込むとか,狙撃手の群れがこもった建物に広い道路を渡って接近するとかいう無駄な行動は避けるべきだ。この場合,必要なのは死を厭わない覚悟ではなく,迂回路を考えることだ。
(5)いま何が最も有効かを考える
自分を殺した相手に復讐しようと夢中になったり,人里離れた場所で伏せている敵スナイパーの排除に躍起になったりするのは,時間の無駄でしかない。重要な場所の制圧,あるいは奪還を主眼とし,個々の戦闘の結果に拘泥しないことが重要だ。
以上のような戦術に慣れてきたら,さらに,自分のチームが優勢なのか劣勢なのかを考えて行動しよう。自分のチームが現状のままで勝てるのなら,無理に攻めるより待ち伏せ重視のほうがいいはずだ。
そして,このままでは勝てないときなら,拠点を守っている敵兵の側面を取れるような機動を考えたり,守りの弱い(しかし奪還もされやすい)拠点に陽動を仕掛けてみたりといった柔軟性が発揮できれば,ゲームは俄然楽しくなる。
負けない装備は,これだ
威力はあるが,持っていると移動速度が落ちる武器は,できるだけ避けよう。極論を言えば,このプレイ指針におけるあなたの価値は,何回拠点に向かって特攻できるかにかかっている。移動速度が遅くなれば,拠点にチャレンジできる回数も少なくなるのは当然だ。
武器を持つなら,射撃サイクルが速いものがいい。一発の威力や射程より,射撃サイクルの速さを優先すると,苦手な射撃をカバーしてくれる場合が多い。1マガジン撃ちきれば,多少狙いが悪くても相手を倒せるはずだ。どうせ遠くの目標には命中しないのだから,射程は問題にならない。なお,ゲームによって射撃サイクルと弾丸の威力のバランスが違うので,自分が一番しっくりくる武器を見つけよう。
そして,忘れてはならないのが煙幕(スモーク)だ。煙幕は占領時に有効な遮蔽になってくれる……というか,練達の狙撃手でもない限り,スモークを持たずに占領戦に来るなど,普通に考えてあり得ないと思おう。
狙撃兵がにらみを効かせている道路を横断するときなどにも,スモークは大変有効であり,通常では不可能な迂回路が作れる(一時的にキルゾーンを無効化できる)ので,積極的に活用したい。
最後はもちろん「なるべくたくさんの手榴弾」だ。適当に投げて敵を倒せる唯一の武器である手榴弾は,射撃が苦手なプレイヤーにとって最良の友になってくれるだろう。
慣れてきたらこんなことも頑張りたい
さて,ある程度までゲームに慣れてくると,ユーザーインタフェースに不満が出てくることもあるはずだ。マルチプラットフォーム展開が普通になった最近のFPSは,ゲームパッドでプレイすることが前提であるものも多く,キーボードだけではどうしても押しにくい/とっさに押せないキーが出てくる。
通常はここでキーボードのキーアサインを変更するという方法がとられるのだが,これについては多少,考えるべきことがある。
実際のところ,キー配置が効率的か否かで戦闘の結果に差が出る,あるいはキーを一回押し損なったことでゲーム全体の勝敗が変わるようなことは,とくにオブジェクティブなゲームにおいては滅多にない。
一方で,パッド時代になってから新しく増えたキーとして「近接攻撃ボタン」があり,これを使いこなせるか否かでそれなりに結果が変わる。昔は(あるいは今でも一部のFPSは)ナイフなどの近接武器はキーボードショートカットから選択したり,マウスホイールで選んだりしていたので,操作に慣れていく過程で普通に覚えられたが,キーが完全に独立している昨今,テンパるとそのキーの存在さえ忘れてしまいがちだ。
また,ゲームモードを詳しく調べて,もしそのゲームに「HUDなし」「フレンドリーファイア(以下FF)有り」の設定があるようなら,それを適用しているサーバーに積極的に出入りするのもいい選択だ。
HUDは,発砲している敵の位置を表示してくれたり,残弾数を表示してくれたりと非常に便利な機能がてんこ盛りだが,これを常時確認しながらプレイするのは,バックミラーを常時確認しながら車の運転をするようなもので,慣れないうちは苦しい。ということは,参加プレイヤー全員がHUDを確認できないモードでプレイすれば,「HUDを有効活用できない」というハンディは帳消しになるわけだ。
――もちろん,そんなサーバーに出入りするプレイヤーは,そうした環境に慣れ親しんだ猛者である可能性も高いので,普段以上に一方的に蜂の巣にされる可能性は否定できない。それからRed OrchestraのようにFFがあってなんぼというゲームもあるので,そのあたりはゲームごとにしっかりルールなどを把握しておこう。
予算がもし,自由になるのであれば
以上のようなロートル向けのルールで戦えば,年齢差をあまり感じずにFPSを楽しめるという,いささか「大人ってズルい」という話題に続いて,さらに大人ってズルいという話をしよう。
実際のプレイにおいて,最初に重要になるのは「敵がそこに存在するか」をきちんと判別できるか否かである。草むらに潜んだスナイパーや,建物の陰から陰に移動する突撃兵。そういった「人影」を「背景」と区別していちはやく把握する,この「敵を発見する」という能力が低いと,どんなに優れた計画を描いても,待ち伏せしている敵に入れ食いにされてしまうはずだ。
もちろん,PCそのものの能力が低いと,どうしても低解像度でしかまともに動かない。例えば640×400ドット程度の荒い画面では,アサルトライフルで十分に狙える距離にいる敵が,かすんだモザイク模様にしか見えないこともしばしばなので,PCがそれなりの能力を持っていることは大前提だ。
画面解像度は,最低でも1024×768ドットが無理なく表示できる能力が欲しい。これは本当に最低レベルで,解像度は高ければ高いほどいい(画面の動きにカクつきが出てしまっては逆効果だが)。表示解像度をディスプレイの限界まで攻めこんでも悲鳴をあげない,強力なグラフィックスカードがあれば非常に有利だ。
ディスプレイについては,遅延の問題があるので理想はCRTだが,たぶんほとんどのプレイヤーにとってなら,普通の液晶ディスプレイでも問題ないと思われる。
画面表示まわりに比べると,マウスとキーボードは個人差が大きい。ただし,マウスについては,クラシックな光学式のマウスは避けたいところだ。良いマウスパッドを使えばマウス感度上の問題は起こらないとはいえ,レーザー式のマウスに比べると安定度に劣る。マウスポインタがあちこち飛び跳ねるような状況ではそもそもゲームにならない(というか仕事にもならない)ので,最低限の費用は投じたい。
ちなみにFPSやTPSでしばしば問題になる「3D酔い」だが,FPSの場合は視野角の広さによって酔いにくい(あるいは慣れやすい)ことがある。視野角が狭いゲームは一般的に酔いやすく,広いゲームは酔いにくいので,「FPSは何がなんでも3D酔いする」というわけではないことには留意したい。実際,「このゲームでは酔わないが,別のゲームでは酔う」ということも起こるのだ。3D酔いするかどうかはプレイ動画やデモ版などで,ある程度確認できる。
きわめてリアルタイムなストラテジーゲームとしてのFPS
ここまで述べてきたように,FPSは,現状で最も成功しているリアルタイムストラテジーだと考えていいと思う。そして,かつてRTSがそうであったように,リアルタイムのスピードに対応できる能力が強く要求されるタイトルもあれば,ストラテジーの手腕が求められるタイトルもある。
以下,改めて「もう反射神経では戦えない」人がマルチプレイFPSを楽しく遊ぶための要点をまとめておこう。
■死んで覚える
どう考えても,FPSは死んで覚えるゲームだ。しかし,やみくもな突撃をくり返すのではなく,自分がなぜやられたかを,マップとの組み合わせで学習する必要がある。
対戦ゲームの常としてこういった基礎技術の修得には一定の時間が必要となるが,いったん体得すれば,目と指の連携が多少不器用でも十分に戦える。
■射撃以外の要素を持つタイトル/ゲームモードを選ぶ
対戦相手を撃つだけのゲームは,どうしても,撃つことの比重が高くなり,引き金を引くコンマ数秒の差や,通信速度の差などによって勝敗が分かれる。また,射撃技術が伴わないままプレイすると,しばしば「相手が射線上に出てくるのを待つ」だけのゲームになり,飽きやすい。
移動という,戦争ストラテジーゲームの中心にある行動が重視されるマルチプレイFPSは,必然的にストラテジーで培った能力を活かしやすくなる。自分に有利な土俵で戦うのが,大人だ。
■参加人数は多ければ多いほど良い
参戦する人数が多ければ多いほど,個人のデス数が持つ意味は小さくなる。少人数同士の戦闘は,どうしても個人の技量に依存する部分が大きいため,プレイ中に無用なプレッシャーを感じることもあるし,同じ敵プレイヤーに殺され続けてイヤな気分になることもしばしばだ。また,敵チームに自分と同じくらい迂闊な動きをしてくれる相手がいる可能性も下がる。こうしたことから1つもキルを取れないといった「イヤな雰囲気」に陥りかねない。
1つ補足しておくと,ほとんどのプレイヤーはゲーム中,忙しすぎて,誰がうまいかはともかく(自分が殺される回数の多いプレイヤーは印象に残る),誰がヘタかなんてことはいちいち覚えていない。
そしてまた,参加人数が1チーム8人もいれば,勝敗を決めるのは「うまいプレイヤーのうまさ」であって,「ヘタなプレイヤーのヘタさ」ではない。「自分がチームの足を引っ張っている」「ほかのみんなは,自分がチームにいることをイヤがっている」などという心象は,大人数が参加するゲームにおいては一点の曇りもなくただの思い込みなので,気にせず倒され続けよう。
■高解像度こそ正義
表題どおりだ。実に即物的だが,高解像度は常に正義なのだ。
マルチプレイFPSが,対戦格闘ゲームのように一定の訓練を要求するゲームであるのは間違いない。だがFPSは,必ずしもキーボードとマウスを巧みに操り,画面上のわずかな動きを素早く捉えることを競うだけのゲームではなく,戦場をいかにコントロールするかという,駆け引きのゲームとしても成立しているのだ。今回述べたようなことを意識して戦えば,FPSの門戸は別方向に開かれ,上達(あるいはゲーム内で自分が満足できる程度に活躍すること)の筋道もつけやすくなるだろう。
非常に個人的な所感を言えば,マルチプレイFPSでは同時に扱うのが1ユニットだけなので,RTSよりも習熟に時間がかからないように思う。「最近,ストラテジーゲームがいま1つピリっとしなくて」とお嘆きのストラテジーゲーマーの方,だまされたと思って,FPSを始めてみてはいかがだろうか。20時間もプレイすれば,結構戦えるようになりますよ。
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