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  • 発表日:2009/01/08
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3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
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印刷2010/12/07 14:01

レビュー

動作クロックが従来比100MHz上がった6&2コアの新モデルを検証する

Phenom II X6 1100T Black Edition/3.3GHz
Phenom II X2 565 Black Edition/3.4GHz

Text by 米田 聡


 2010年12月7日14:01,AMDはPhenom IIの新製品として,6コアおよび2コアで史上最高クロックをそれぞれ100MHz更新する「Phenom II X6 1100T Black Edition/3.3GHz」(以下,X6 1100T BE)および「Phenom II X2 565 Black Edition/3.4GHz」(以下,X2 565 BE)を発表した。

画像集#002のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
Phenom II X6 1100T Black Edition。OPNは「HDE00ZFBK6DGR」
画像集#003のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
Phenom II X2 565 Black Edition。OPNは「HDZ565WFK2DGM」

パッケージはもちろん,938ピンのAM3
画像集#007のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
 従来の最上位モデル「Phenom II X6 1090T Black Edition/3.2GHz」「Phenom II X2 565 Black Edition/3.3GHz」(以下順に,X6 1090T BE,X2 560 BE)とCPUアーキテクチャや基本スペックに違いはなく,「TDP(Thermal Design Power)の枠内で,より動作クロックの高いモデルが登場してきただけ」ということになる(表1)。
 ただ,より高いクロックの個体が取れるようになったということは,オーバークロック耐性が上がっている可能性もある。今回はそのあたりも込みで,新製品の可能性を探ってみたい。

※X6 1100T BEとX2 565 BEの価格は,AMDの日本法人・日本AMDによる想定売価。残る2製品の価格は4Gamer調べの実勢価格(※2010年12月7日現在)となる
画像集#008のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた


コア電圧は従来製品より高く

それがOCのしやすさに影響か


 さて,いきなりだが,表1に示したAMDの公式スペックにない部分で,今回の新製品2モデルと,従来の最上位クロック製品との間には違いがあった。それは,CPUコア電圧だ。具体的な値は以下のとおり。

  • X6 1100T BE:1.325V
  • X6 1090T BE:1.275V
  • X2 565 BE:1.400V
  • X2 560 BE:1.325V

 つまり,6コアモデルでは0.050V,2コアモデルでは0.075Vの違いがあるわけだ。100MHz高いクロックで動作する個体を安定的に確保するためには,標準のコア電圧を上げる必要があった,ということなのだろう。

AMD OverDrive実行結果。左がX6 1100T BE,右がX2 565 BEで,「CPU VID」は順に1.325V,1.4000Vとなっていた
画像集#018のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた 画像集#019のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
「CPU-Z」(Version 1.56)実行結果。CPU-Zの「Core Voltage」表示は多少揺らぐが,それでも,BIOSの標準設定に近い値になっていることは分かる
画像集#004のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた 画像集#005のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 いずれも,公称のTDPは従来製品と変わらない一方,規定のコア電圧は上がっているわけで,オーバークロック耐性の向上は望み薄かなという予感はするのだが,結論から言ってしまうと,その予感どおりだった。

忍者 参を取り付けたテスト環境
画像集#017のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
 オーバークロックのテストにあたっては,後述するテスト環境で,サイズ製の大型CPUクーラー「忍者 参」(NINJA 3,型番:SCNJ-3000)を利用。「BIOSから動作倍率とコア電圧を変えながら,4Gamerベンチマークレギュレーション10.2で採用するアプリケーションのうち,「3DMark06」(Build 1.2.0),「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)「Just Cause 2」「バイオハザード5」がいずれも完走したことをもって,「安定動作した」と認定することにしている。

 その結果だが,まずX6 1100T BEは,コア電圧1.475Vで倍率21倍(4.2GHz)を目指したところ,残念ながらWindowsが起動せず。コア電圧を1.500V以上に設定するとPOSTに失敗してしまった。いろいろ試したところ,コア電圧1.45V,倍率20倍が空冷における安定動作の上限値だった。
 X2 565 BEも,1.45V,20倍設定が安定動作の上限。これ以上のコア電圧や倍率設定を行うと,CMOSのクリアを行わない限り起動しなくなってしまった。

 ちなみに,同様のテストを手持ちのX6 1090T BEとX2 560 BEで行ってみたところ,いずれもコア電圧1.475V,倍率21倍(4.2GHz)で安定動作した。要するに,今回テストした個体に関して言えば,従来製品のほうが耐性は高かったというわけだ。
 いずせにしても,X6 1100T BEとX2 565 BEでオーバークロック耐性が上がったということはなさそうだ。従来モデルと比べても,“当たり外れ”レベルの違いしかないとまとめてしまって問題ないだろう。

※注意
CPUのオーバークロック動作は,CPUやマザーボードメーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,CPUやメモリモジュール,マザーボードなど構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。


TurboCOREは無効にして比較

動作クロックなりの性能向上を確認


 ベンチマークテスト結果の考察に入ることとしよう。今回のテスト環境は表2のとおりで,冒頭からその名を挙げてきている4製品で性能を比較する。

画像集#009のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション10.2準拠だが,テストスケジュールの都合から,「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」「Colin McRae: DiRT 2」は省略。解像度は1280×1024&1680×1050ドットとし,グラフィックス負荷の低いほうがCPUの性能差が出やすいという理由から,「高負荷設定」は除外,「標準設定」と,それに準ずる「低負荷設定」のみを用いる。

 メモリコントローラの設定は,ゲームアプリケーションでパフォーマンスが出やすい「Ganged」に固定。Phenom II X6シリーズに搭載されている自動クロックアップ機能「Turbo CORE」は,ゲームとの相性が悪いことがX6 1090T BEのレビューおよびテストレポートで明らかになっているため,無効化していることと,オーバークロック設定はCPU名の後ろに「@(動作クロック)」と表記して区別することを,あらかじめお断りしておきたい。

 というわけでグラフ1は3DMark06の総合スコアをまとめたもの。本アプリケーションは,CPUの動作クロックを素直に反映するテストの1つで,結果もそのとおりといった様相を呈している。
 興味深いのは,X2 565 BEやX2 560 BEを4GHz台のクロックにまで引き上げると,6コア製品に迫るスコアが得られる点だ。開発時期的に,マルチスレッド処理への最適化が進んでいないDirectX 9世代のゲームタイトルをプレイするにあたっては,まだ2コアCPUでも戦える印象である。

画像集#010のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 マルチスレッド処理に最適化されたBFBC2だと,6コアと2コアで倍以上という,圧倒的なスコア差が生じた。2コア製品では,オーバークロックによって13〜34%のスコア向上が見られるが,6コア製品では,CPU性能がX6 1090T BEでも十分に足りているため,X6 1100T BEはもちろん,両製品のオーバークロック状態でもまったく上がっていない。

画像集#011のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 DirectX 9世代のCall of Duty 4は3DMark06以上にコア数によるスコアの違いが生じづらく,ゲームの“世代感”がよく出た。6コア製品の高クロック動作ではスコアが頭打ちになっている様子も見て取れる。
 そもそも,最もスコアが低いX2 560 BEの1680×1050ドット設定時ですら240fpsオーバー。古い世代のゲームタイトルをプレイするにあたって,もはやCPU性能にこだわる必要はないということなのだろう。

画像集#012のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 Just Cause 2は,コア数がフレームレートをある程度規定するが,動作クロックも十分に影響するといったところ。X6 1100T BEとX2 565 BEで,同一クロックの6コアと2コアを比較すると,スコアの差は42〜45%に及び,動作クロックによる違いに注目した場合は,X6 1100T BE@4.0GHzとX6 1100T BEでは3〜5%,X2 565 BE@4.0GHzとX2 565 BEでは11〜12%のフレームレート向上が見られた。

画像集#013のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 CPU負荷が高くマルチスレッド化の度合いも高いバイオハザード5だと,100MHz程度のクロック差は誤差範囲に収まってしまうようだ(グラフ5)。X6 1100T BEとX2 565 BEのスコアはいずれも,比較対象とほぼ横並びである。
 一方,6コアと2コアの差は,BFBC2と同様に大きい。マルチスレッド処理に最適化されたタイトルをプレイする場合においては,6コアに大きな意味があるわけだ。

画像集#014のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた


OC時は消費電力が大きく上昇

X6 1100T BEは定格時のCPU温度が高めか


 ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,OSの起動後,30分放置した時点を「アイドル時」,ベンチマーク実行時に最も高い消費電力値を示した時点を,アプリケーションごとの実行時とし,各時点の消費電力値をまとめたものがグラフ6だ。
 アイドル時においては,省電力機能「Cool’n’Quiet」(以下,CnQ)の有効/無効を切り替え,両方でスコアを取得しているが,オーバークロック設定を有効にするとCnQは機能しないため,スコアをN/Aとしている点に注意してほしい。

 さて,アプリケーション実行時で比較してみると,若干のバラつきは見えるものの,スコアはおおむね,動作クロックとCPUコア電圧の設定に比例したものになっていると言っていいだろう。6コアCPUをオーバークロックしたときに見られる消費電力の伸びは顕著で,X6 1100T BE@4.0GHzは30〜57W,X6 1090T BE@4.2GHzは57〜95W,それぞれ定格動作時から消費電力を増している。
 今回のオーバークロックはコア電圧の引き上げも伴っているため,アイドル時の消費電力も相応に高く,X6 1100T BE@4.0GHzとX6 1100T BEの間で19W,X6 1090T BE@4.2GHzとX6 1090T BEの間には29Wもの上昇があった。アイドル時における消費電力の違いは,ほとんどが電圧を上げたことによるリーク電流の増加と考えられるが,単純に推定して順に14A,20A程度の電流が増加したと考えると,かなり強烈だ。

 なお,2コアCPUについていうと,X2 565 BE@4.0GHzの消費電力は意外に伸びなかった。また,定格動作でも,X2 565 BEはX2 560 BEより低めに推移したが,このあたりは個体差の可能性も指摘できそうである。

※そのまま掲載すると大きすぎるため,縮小版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると,別ウインドウで拡大版を表示します
画像集#015のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた

 ストレスツール「OCCT」(Version 3.1.0)を20分連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども「AMD OverDrive」(Version 3.2.3.0457)からCPU温度を取得し,まとめたものがグラフ7だ。序盤で述べたとおり,オーバークロック設定時は忍者 参クーラーを用いているため,ここではX6 1090Tの製品ボックスに付属するリファレンスクーラーを用いた定格設定時のスコアのみを示すので,その点はご了承を。

 さて,室温20℃の環境におけるテスト結果を見てみると,X6 1100T BEの温度が,X6 1090T BEと比べて高いこと。実際,テスト中のCPU(≒CPUクーラー)に手を近づけてみると,X6 1100T BEとX6 1090T BEの間には,はっきり分かる温度の違いが感じられた。
 一方,X2 565 BEの温度はX2 560 BEより低く,消費電力のテスト結果を裏付ける内容となっている。ただ,これも序盤で指摘したとおり,オーバークロック耐性自体は高くなかったわけで,なんとも妙なところだ。個体差が非常に大きいがゆえ,こういった結果になったのではなかろうか。

画像集#016のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた


ゲーマーとして“買い得”なのは

従来製品のほうかも


画像集#006のサムネイル/3.3GHzの6コアと,3.4GHzの2コア。Phenom IIの新モデルをOC込みでテストしてみた
 以上の結果からするに,動作倍率とコア電圧がアンロックされたBlack Edition同士で比較する場合,定格動作時の性能差はほとんどない。一方,オーバークロックを前提とした場合,空冷における安定動作限界である4〜4.2GHzが上限というのは変わらない。そうなると,上位モデルの登場によって平均販売価格の下落が見込めるX6 1090T BEやX2 560 BEのほうがお買い得と述べて差し支えなさそうだ。

 AMDファンにはあらためて紹介するまでもないが,2011年は,AMDにとって久しぶりの新アーキテクチャ投入という大イベントが待ち構えている。高めに設定されているコア電圧からしても,今回の2製品は,それまでの“つなぎ”的な意味合いが非常に強い印象である。

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