テストレポート
デュアルコアPhenom II最上位「X2 555 Black Edition」パフォーマンス速報
- Phenom II X4 910e/2.6GHz
想定売価1万7800円(税込) - Phenom II X2 555 Black Edition/3.2GHz
倍率ロックフリー,想定売価1万500円(税込) - Athlon II X4 635/2.9GHz
想定売価1万2800円(税込) - Athlon II X3 440/3.0GHz
想定売価8980円(税込) - Athlon II X2 255/3.1GHz
想定売価7980円(税込)
5製品は,省電力版Phenom II X4,デュアルコアPhenom IIなどといった各シリーズにおいて,いずれも歴代最高クロックを更新するもの。主なスペックは表1にまとめたとおりだが,Phenom IIの2モデルがC3ステッピングへ切り替わったことを除くと,大枠で従来製品との違いはないようだ。
表で「価格」として示したのは,日本AMDによる店頭想定売価だが,仮にこのままの価格で店頭に並ぶとすると,従来の最上位モデルと比べて,おおむね1000〜2000円程度高いところで登場することになる。
正直に述べると,筆者の元へX2 555が届いたのは22日のこと。さすがにこの状況では比較対象をきちんと揃えたレビューを行うことができないため,今回は取り急ぎ,速報として,ベンチマークテストを実行できた限りのデータをお届けしたいと思う。
※2010年1月25日20:45追記
表1で示したプロセッサのステッピングは,日本AMDから入手した個体について,CPU-Zを使ってチェックした結果をまとめたものです。実際に店頭で購入できる製品では,異なるステッピングの個体が混在している可能性もありますので,この点は注意してください。
今回はCore i3-530との
比較データのみ掲載
X2 555とi3-530では,動作クロックとL3キャッシュ容量で前者が有利である一方,「Intel Hyper-Threading Technology」により,2コア4スレッド動作が可能な後者のほうがマルチスレッド処理では有利となるので,このあたりのバランスが実際のゲームタイトルでどう反映されるかが,本稿における見どころとなるはずだ。
テスト環境は表2のとおりとなる。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション8.4準拠。ただし,描画負荷が高く,GPU性能によってスコアが頭打ちになりやすくなる「高負荷設定」は省略し,アンチエイリアシングおよびテクスチャフィルタリングを適用しない「標準設定」(※「Crysis Warhead」はよりGPU負荷の低い「エントリー設定」,「バイオハザード5」はゲーム側の仕様により「低負荷設定」)でテストを行うことにする。
また同じ理由で,テスト解像度は1024×768/1280×1024/1680×1050ドットの三つに絞った。
M4A785TD-M EVO SidePort Memory搭載のAMD 785Gマザーボード メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected] 実勢価格:9800〜1万1000円(※2010年1月25日現在) |
P7H55D-M EVO グラフィックス機能のOCが可能なH55マザー メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected] 実勢価格:1万6000〜1万6500円(※2010年1月25日現在) |
ゲームにおける性能はほぼ“価格なり”
消費電力の高さがネックか
さて,グラフ1は,「3DMark06」(Build 1.1.0)の総合スコアをまとめたもの,グラフ2は3DMark06の総合スコアから,同アプリケーションのデフォルト解像度である1280×1024ドットにおけるCPUスコアを抽出したものになる。
総合スコアで,X2 555はi3-530から5%ほど置いて行かれるが,マルチスレッドに最適化された3DMark06で5%程度というあたりからすると,X2 555は健闘しているといっていいかもしれない。
実際のゲームタイトルから,グラフィックス描画負荷の高いCrysis Warheadのスコアをまとめたのがグラフ3だ。先にお断りしたとおり,今回はエントリー設定でテストを実施しているが,それでも,ミドルクラスのGPUと組み合わせると,GPUボトルネックにより,CPUの性能差はほとんど出なくなる。
なお,1024×768ドットでなぜかスコアが上がらない理由は不明。「ATI Catalyst 9.12」が原因ではないかと思われるが,断言はできない。
続いて,描画負荷の比較的低いFPS,「Left 4 Dead」の結果だが,ここではX2 555のほうがi3-530よりわずかにスコアで上回った(グラフ4)。体感できるレベルの違いではないが,動作クロックの高さやL3キャッシュ容量の多さがX2 555優位なスコアを生んだと見るべきだろう。
続いては,マルチスレッド処理への最適化が進んでおり,処理できるスレッド数に応じてスコアの差が生じがちな「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)とバイオハザード5だ。テスト結果はグラフ5,6のとおりだが,Call of Duty 4は,グラフィックス描画負荷が非常に低いこともあって,2コア4スレッド処理の可能なi3-540が,低解像度帯でX2 555を大きく引き離した。一方,バイオハザード5だと,GPU負荷が一定量あるため,ミドルクラスGPUを組み合わせた今回のテストでは,それほどのスコア差が生じていない。
なお,バイオハザード5は,ATI Catalyst 9.12だと,日本語で正常にパフォーマンスが出ない問題を確認できたため,今回は英語版の公式ベンチマークソフトを用いている。そのためスコアは,「バイオハザード5が正常に動作したと想定した場合の参考値」となるので,この点はお断りしておきたい。
グラフ7は「ラスト レムナント」,グラフ8は「Race Driver: GRID」のテスト結果だ。それぞれ順に,Call of Duty 4,バイオハザード5のスコアを踏襲したものになっている。
テストの最後は恒例,消費電力とCPU温度のチェックだ。まずは,OSの起動後,30分放置した状態を「アイドル時」,3DMark06を連続30分実行し,その間で最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」として,ログの取得を行えるワットチェッカー,「Watts up? PRO」から,システム全体の消費電力を計測することにした。
アイドル時については,CPU側に用意された省電力機能の有効時と無効時,両方のスコアを取得することにして,結果をまとめたのがグラフ9だが,やはりというかなんというか,32nmプロセスルールを採用するi3-530のスコアが優秀だ。同じASUSTeK Compute製でmicroATXフォームファクタ採用モデルとはいえ,マザーボードが異なるのは事実であるため,完全に横並びの比較を行えるわけではないが,それでも高負荷時の50W近い差は,無視できるものではない印象を受ける。
PCケースに組み込んでいない,バラック状態のシステムを室温14℃の環境に置き,モニタリングソフト「HWMonitor Pro」(Version 1.06)から,アイドル時と高負荷時のCPU温度を比較した結果がグラフ10になる。
CPUクーラーは,X2 555が,最近のAMD製CPUで共通して採用される純正品,i3-530は製品ボックスに付属する純正品を用いているが,CPU温度自体は無難なところに制御されていると述べてよさそうだ。
消費電力の高さは明らかな弱点だが
総合的な価格対性能比はまずまず
i3-530と比較すると,どうしても消費電力の高さが目に付くX2 555。もともと最新世代のCore 2プロセッサと比べると,Phenom IIやAthlon IIの消費電力は高い傾向にあったが,Intelが32nmプロセス世代のCPUを投入してきたことで,その差はいよいよ看過できないものになってきた印象だ。1万円前後の市場において,この違いは後々響いてきそうな気もする。
ただ,純然たる性能という観点では,さすがに4スレッド動作できないという不利はあるものの,総じて悪くない。マザーボードの価格も含めた,総合的なコストパフォーマンスでは,まだまだ十分戦えるといっていいだろう。
ともあれ,今回はあくまでも速報である。もう少し突っ込んだレビュー記事は,後日あらためて掲載したいと思うので,お楽しみに。