インタビュー
DetonatioN FocusMeのEvi選手とKazuコーチにインタビュー。「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「Worlds」グループステージ前半戦を終えて
DFMが属するのは,Fakerを擁する韓国の名門T1,アメリカの強豪100 Thieves,そしてDFMが2018年のプレイインステージで敗れた中国のEDward GamingのいるグループB。現在は前半戦の各チームとの1試合めを終えたところだが,3敗という苦しい戦いが続いている。
レイキャビクの歓喜。DetonatioN FocusMeが「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会の予選を突破するまでの7年間
アイスランドのレイキャビクで開催されている「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「World Championship 2021」に日本代表としてDetonatioN FocusMeが参戦している。これまで予選を突破できなかった日本代表だが,ついにDFMがその壁を粉砕した。今回はそんな彼らの足跡を振り返る。
また,3戦3敗とはいえ,その試合内容は大きく異なっており,試合ごとに成長している様子が見て取れる。とくに10月14日2:00から行われた,EDward Gamingとの対戦では,序盤に巧みなゲームプレイでアドバンテージを取っており,試合を見ていた人は「勝てるのではないか」と思ったことだろう。残念ながら中盤から後半にかけて攻めきれず,EDward Gamingの強さを思い知らされた形になったが,それでも可能性を感じる1戦だった。
さて,今回はそんな前半戦を終えたDFMのEvi選手と,Kazuコーチにインタビューする機会を得た。プレイイン突破の感想やグループステージでの苦戦の要因,後半戦への意気込み,そして応援しているファンへのメッセージを聞いてきたので,ぜひ目を通してほしい。
まずはプレイイン(予選)突破,おめでとうございます。あの瞬間の感想を聞かせてください。
Evi選手:
そうですね,僕のプロ人生の夢が叶った,本当に人生で最高の瞬間でした。
4Gamer:
プレイインを突破できた理由は何だと思いますか。
Evi選手:
自分たち選手,コーチ陣,スタッフ,そしてオーナーが一丸となって,ただ日本で優勝するだけでなく,国際大会で勝つことを何よりの目標として,ここまでずっと妥協しない練習をしてきたからだと思います。
4Gamer:
世界3度の優勝経験のあるT1を筆頭に,強豪揃いのグループステージでは苦戦を強いられていますが,最も大きな要因は何だと思われていますか。
Evi選手:
選手の実力,レベルが違うのももちろんありますが,何よりメタ(主流となる戦略)が全く違ったことが大きな差でした。グループステージのBO1(1試合で勝敗を決める)であればチーム同士の実力差以上に,どこまでメタに理解が及んでいるかという点で差が開きやすいんです。
4Gamer:
メタの違いですか。具体的には?
Evi選手:
例えばアムムサポートなど,プレイインで登場したチャンピオンがほとんど選ばれず,プレイインでは見向きもされなかったようなグレイブスやユーミのようなチャンピオンが主流となっています。グループステージから参加するチームはその主流となるチャンピオンをしっかり練習しているので,その点で大きな差が出てしまったように思います。
4Gamer:
なるほど,メタのギャップで初日のT1相手に苦しい戦いを強いられたと思いますが,3日目のEDG戦では序盤に有利を握るなど,五分に近い戦いができていたと思います。この短期間でどのように対応されたのでしょうか。
Evi選手:
まず自分たちが知らなかったメタについてしっかり分析し,その分析をもとにチームで相談を重ねました。そのうえで,ユーミを使ってもいいし,あるいはBAN(双方が1試合につき5体までチャンピオンを制限できるルール)することで自分たちの土俵で戦うことを考えました。そうした戦略が功を奏したのだと思います。
4Gamer:
EDG戦でラストピックしたポッピーは,これまでほとんど選ばなかったチャンピオンでしたが,序盤はEDG側3名のタワーダイブを回避するなど大きな活躍を見せていました。これも準備されたものでしたか?
Evi選手:
はい,ポッピーはずっと練習していましたし,相手の構成にもしっかり対応できるチャンピオンだと判断して使いました。特に今の主流になっているツイステッド・フェイト(任意にテレポートできるスキルで挟撃を仕掛けられるチャンピオン)にはウルトで対策できるので,生き残れるチャンピオンですね。
4Gamer:
連敗が重なるとメンタル的にも苦しいものがあると思われますが,チームでどう対策していましたか。
Evi選手:
よく聞いてくれました! 正直,自分たちも2日で2連敗という結果で精神的にも苦しく,チーム内の雰囲気もあまり良くなかったんですが,そこでGaengが「ちょっとこのままじゃ良くないと思うから,皆で話し合おう」と言ってくれたんです。それで,お互い思っていることを吐き出して,気持ちをポジティブに立ち直せました。本当に頼もしいチームです。
4Gamer:
まだ3試合残っていますが,これから挑戦される気持ちをお教えください。
Evi選手:
初日の試合はただ踏み潰されるだけの試合でしたが,試合の内容は着実に改善しているので,次こそはただ踏み潰されるだけではないチームだということを見せたいです。
4Gamer:
最後に応援するファンに向けてメッセージをお願いします
Evi選手:
皆さんの応援のおかげで本当に勇気づけられています。本当にありがとうございます。ただ,試合は日本の深夜ですし,寝不足になられている方もいらっしゃるようなので,本当に無理をしない範囲で。録画を見て応援してもらえるだけでもすごくありがたいので,無理せず,できる範囲で応援していただけると嬉しいです。
4Gamer:
プレイイン突破,本当におめでとうございます。まずは念願のプレイイン突破を果たした気持ちを聞かせてください。
Kazuコーチ:
自分がプロゲーマーとして活動を始めた2014年から,夢を諦めず7年,頑張ってきてよかったなと思います。
4Gamer:
ここまで到達できた理由は何だと思いますか。
Kazuコーチ:
一つはDFMがCEO(梅崎氏)を含め,チーム全員で国際大会でのプレイイン突破という同じ目標を共有できていたこと。そして新たな選手,コーチ,スタッフの加入や,ずっとDFMのメンバーであるYutapon,3年以上も一緒に組んだEviやStealといった同じメンバーで戦い続けてきたことで培われた絆も相まって,今回のプレイイン突破につながったのだと思います。
4Gamer:
グループステージでは苦戦を強いられていますが,プレイインと比べて何が変化したのでしょうか。
Kazuコーチ:
プレイインとグループステージでは,プレイヤーの実力差ももちろんありますが,何よりスクリムの環境があまりに違ったことを,痛感しました。ユーミ,ナミのようなヒールサポート,またトップレーンではグレイブスやジェイスなど,プレイインではあまり見なかったレーニング段階から有利を作り出していくチャンピオンが効果的に活用されている点が大きな違いですね。
4Gamer:
そのようなメタの変化,そしてスクリムの環境はどのように関係していると思われますか?
Kazuコーチ:
自分たちを含め,プレイインに参加するチームの目標の大部分は「グループステージに出場する」ことです。そのため,自分たちの地域に最適化された戦略を全面的に出す傾向が強いのですが,グループステージになると全チームの目標は優勝になるため,徹底してチャンピオンの性能を重視する傾向にあり,さらにその裏を欠いた戦略も持っています。
例えばグレイブスはグループ上位陣のチームが既にスクリムで試していて,そこにジャックスをカウンターで当てるなどの奇抜な戦略が取られています。僕たちはそもそも上位陣とのスクリムの経験がなく,メタで遅れを感じてしまうのが率直なところです。
4Gamer:
3日目のEDG戦では序盤から有利を掴むなど,着実に試合内容がよくなっていると思いますが,僅かな期間でどう修正したのでしょうか。
Kazuコーチ:
グループステージ進出が確定してから,実際に試合が始まるまで3日しかありませんでした。その間,できる限り情報を集めながら,選手たちとスクリムに挑んだのですが,それでも初戦のT1はやはり戦略面での違いを見せつけられました。
2日目終了時には16試合の結果が出ていたので,それらの試合を分析し,選手たちと話しあう中で,メタに適応することができました。そのため3日目ではサイラス,ジンなど積極的にゲームを動かせるチャンピオンを選ぶことができ,敗北してしまいましたが序盤のリードを作ることができたと思っています。
4Gamer:
Kazuコーチ,そしてYangコーチやCeros選手を含めたチームとして,どのような相談があったのでしょうか。
Kazuコーチ:
コーチ陣の3人も大切なんですが,選手を含めた8人全員で自分たちで狙うべきマッチアップ,戦略を定めました。EDG戦であれば,EDG側が選んだ強力なリー・シンに対して,タロンとレオナを当てていくことなどが,チームでの判断でした。その結果,序盤のヘラルド前で有利が取れたと思います。
対戦相手が強いチームだからこそ,強いチャンピオンをしっかりと選んでくる傾向にあるので,自分たちが奇抜な作戦で強行突破していくことで,良い試合ができるようになっているのかと思います。
4Gamer:
Kazuコーチのお話をうかがった上で,大きく改善しているのは「分析力」にあると思うのですが,2019年に加入したGismoアナリストはチームにどんな貢献をされていますか。
Kazuコーチ:
各チームのチャンピオン傾向など,自分たちが必要とする様々なデータをGismoが一人で集めてくれているので,DFMになくてはならない存在です。グループステージはもちろん,特にプレイインでのBYG(台湾)戦,GS(トルコ)戦でボットからゲームを作り,勝利した戦略はすべてGismoアナリストが集めてくれた的確な情報に拠るところが大きかったと思います。
4Gamer:
最後にファンの方にメッセージをお願いします
Kazuコーチ:
現状,DFMは3連敗を喫し,グループステージの突破は非常に困難な状況です。そんな中,ファンの方からいただく応援は非常に勇気づけられています。3日後,練習と話し合いを経て,最高のDFMを見せられるよう努力するので,引き続き応援よろしくお願いいたします。
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