レビュー
55nmプロセス版GeForce GTX 260の消費電力周りを中心に検証する
ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)
» 55nmプロセス版GeForce GTX 260が,65nm版の同GPUと比べて,どういった進化を遂げているのか。消費電力の違いを中心に宮崎真一氏がチェックした結果をお届けしたい。
エルザジャパンからリリースされた搭載製品で,今回取り上げる「ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)」も,その一つである。
搭載するクーラーは“GTX 285風”
GPUコアはリビジョンB2へ
65nm版GeForce GTX 260を搭載した「ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB」と並べてみると分かるのだが,約267mm(※突起物除く)というカード長はまったく同じ。「GPUクーラーの,外部インタフェース近くが丸みを帯びているかいないか」くらいしか,ぱっと見た違いはない。
一方,グラフィックスメモリチップを搭載する関係で,ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MBだとカード裏面に放熱板を兼ねたカバーが取り付けられているのに対して,ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)ではこれが廃されている。
最近,同じような説明をしたので,憶えている人も少なくないだろう。ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)が搭載するGPUクーラーの基本デザインは,「GeForce GTX 285」搭載グラフィックスカードと同一だ。
GPUクーラーを取り外したところ |
GPU-Z実行結果。リビジョンは正しくないようだが,製造プロセスの表示は55nmになった(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します) |
搭載するメモリチップはSamsung Electronics製の「K4J52324QH-HJ1A」(1.0ns品)。TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.3.2)で確認すると,ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)のメモリクロックは2GHz相当なので,定格どおりのスペックで動作していることになる。
GPUは,従来のGeForce GTX 200シリーズと同様,コアがヒートスプレッダで覆われた仕様になっているが,そのパッケージ表面の刻印は「G200-103-B2」。65nm版GPUを搭載したELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MBをチェックすると「G200-103-A2」だったので,B2リビジョンであることが,55nmプロセス版であることの証明になっていると考えてよさそうだ。
前出のGPU-Zで動作クロックを確認すると,コアクロック576MHz,シェーダクロック1242MHzで,これはGeForce GTX 260のリファレンスどおりだった。
……といったところを踏まえ,テストに入っていこう。
テスト環境は表のとおりで,ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)とELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MBは,以下,文中,グラフ中とも順にGTX 260[55nm],GTX 260[65nm]と表記する。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション6.0準拠となるが,スケジュールの都合により,「Crysis Warhead」と「デビル メイ クライ4」,それに「Unreal Tournament 3」を省略した点は,あらかじめお断りしておきたい。
消費電力は10W弱の低下
GPUクーラーの静かさも若干向上?
プロセスルールの微細化によって,消費電力の低減が期待できることから,まずはその検証から行ってみよう。ログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時としている。
その結果はグラフ1のとおりだ。アプリケーションによって多少のバラツキはあるものの,GTX 260[55nm]は,GTX 260[65nm]と比べて,消費電力が10W弱下がっているといっていい。エルザジャパンは,GTX 260[55nm]が,「従来製品よりアイドル時5W、ピーク時8W前後の省電力化を実現しました」(※リリースより原文ママ)と述べているが,果たしてテストでは,それを実証する結果が得られたことになる。
ではなぜ,製造プロセスの微細化に伴って,消費電力は低減できたのか。xtremetheme製ののBIOS編集ツール「NiBiTor」(Version 4.8)で電圧設定を見てみると,GTX 260[65nm]は「3D」が1.12V,「2D」が1.11Vであるのに対して,GTX 260[55nm]は「3D」「2D」ともに1.05V。この,GPUコアの動作電圧引き下げが,10W弱という違いを生んだものと考えられそうである。
続いて,「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)を30分間連続実行した時点を「高負荷時」とし,GPUの温度を測定した結果をまとめたのがグラフ2となる。これは室温19℃の環境で,PCケースに組み込んでいない,いわゆるバラック環境において計測した結果だが,ご覧のとおり,GTX 260[55nm]のほうがわずかに高い。
前述のとおり,GPUクーラーのデザインはほとんど変わっていないので,解せないと思うかもしれないが,カラクリはファンの回転数にある。GPU-Zで確認すると,高負荷時のファン回転数はGTX 260[65nm]が1500rpmほどであるのに対し,GTX 260[55nm]は1300rpm程度。筆者の主観になるが,ぱっと聞いてすぐ分かるほど,高負荷時の動作音は下がっている印象だ。
つまり,55nmプロセス技術を採用することによって発熱量が下がったため,GPUクーラーの回転数を落として,静音性を重視する方向へと舵(かじ)を切った結果が,上で示したグラフだった,というわけである。換言するなら,GTX 260[55nm]で,発熱量は確実に下がっている。
「Call of Duty 4: Modern Warfare」「Company of Heroes」「Race Driver: GRID」といったゲームタイトルでテストした結果はグラフ5〜10に示したが,これも3DMark06と同様。動作クロックなどの仕様を考えると,パフォーマンスが変わらないのは,至極当たり前の結果であるといえよう。
コストパフォーマンスは旧モデルに軍配も
消費電力が確実に下がっている点は歓迎できる
エルザジャパン製品で2009年2月28日現在の実勢価格を比べると,GTX 260[65nm]は3万円を切る例が見られるのに対して,GTX 260[55nm]だと最安値でも3万2000円前後。流通在庫のみの在庫処分価格になっている可能性も考えられるGTX 260[65nm]と比較するのはアンフェアかもしれないが,価格対性能比という観点において,GTX 260[65nm]のほうがより優れる点は,否定できそうにない。
長期に亘(わた)って使う前提で,これからGeForce GTX 260搭載カードを購入するのであれば,本製品は有力な候補となるはずだ。
- 関連タイトル:
GeForce GTX 200
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