テストレポート
ASUS「ROG Zephyrus M16」テストレポート。アスペクト比16:10のディスプレイはゲームで強みを発揮できるのか
4GamerではZephyrus M16の発売に先立ち,試用機を入手できたので,写真を中心に紹介したい。
デザインに注力した新シリーズ Zephyrus M16
製品の紹介に入る前に,Zephyrus M16の立ち位置と製品ラインナップを紹介したい。「ROG Zephyrus」は,ROGブランドのノートPCにおいて,薄型軽量ボディを特徴とする製品シリーズだ。最近は,製品名に「M」や「S」,「G」といったアルファベットが付いているのだが,ASUSによると,それぞれ以下のような特徴を示しているという。
- M:Premium design(プレミアムなデザインを採用した製品)
- S:Superior with AAS plus cooling(AAS Plusなどの冷却に優れた製品)
- G:Maintream/Fashion style in Zephyrus series(幅広いゲーマーや,ファッションとしてゲーマー向けPCを使いたい人向けの製品)
つまり,Zephyrus M16は,ASUS製ゲーマー向けノートPCの中でもとくにデザインに力を入れた製品というわけだ。
Zephyrus M16は,搭載するGPUが異なる3機種があり,さらに,液晶パネルの解像度やリフレッシュレート,内蔵ストレージ容量が異なる計5モデル展開となる。それぞれのスペックは表のとおり。
機種名 | GU603HR | GU603HM | GU603HE | ||
---|---|---|---|---|---|
型番 | GU603HR-I7R3070EC | GU603HM-I7R3060EC | GU603HM-I7R3060U144 | GU603HE-I7G3050TEC | GU603HE-I7R3050TU144 |
CPU | Core i7- |
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メインメモリ | DDR4 3200MHz 16GB | ||||
GPU | GeForce (グラフィックスメモリ容量 8GB) |
GeForce (グラフィックスメモリ容量 6GB) |
GeForce (グラフィックスメモリ容量 4GB) |
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ストレージ | SSD 容量1TB(M.2/PCIe接続)×1 | SSD 容量512GB(M.2/PCIe接続)×1 | SSD 容量1TB(M.2/PCIe接続)×1 | SSD 容量512GB(M.2/PCIe接続)×1 | |
ディスプレイ | 16インチ液晶, |
16インチ液晶, |
16インチ液晶, |
16インチ液晶, |
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無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11 ax) | ||||
有線LAN | 1000BASE-T | ||||
公称本体サイズ | 355(W)×243.5(D)×19.9〜22.3(H)mm | ||||
公称本体重量 | 約2kg | ||||
OS | 64bit版Windows 10 Home | ||||
価格(税込) | 26万9800円 | 23万9800円 | 24万9800円 | 21万9800円 | 22万9800円 |
発売日 | 2021年秋発売予定 | 7月15日発売 | 7月15日発売 | 7月15日発売 | 2021年秋発売予定 |
今回は,最上位モデルである「GU603HR-I7R3070EC」で検証を行った。液晶パネルに解像度2560×1600ドット,垂直最大リフレッシュレート165Hz表示対応の液晶パネルを採用し,GPUに「GeForce RTX 3070」を搭載している。
15級の筐体に16インチサイズのディスプレイを搭載
Zephyrus M16の本体サイズは,実測で356(W)×244(D)×20〜22.3(H)mmと,一般的な15インチ級ノートPCとそれほど大きく変わらない。ASUSによると,幅4.6mmの狭額縁ベゼルを採用することで,15インチ級の筐体に16インチサイズの液晶パネルを搭載できたという。
天板には,細かい孔が並ぶドット模様が描かれている。見た目は「Zephyrus G14」が採用している「AniMe Matrix ディスプレイ」に似ているが,同シリーズのようなLEDは内蔵しておらず,孔が光で反射してドットが光る仕組みだ。ROG製品では,17.3インチサイズのゲーマー向けノートPC「ROG Strix Scar 17」や,ゲーマー向けスマートフォン「ROG Phone 5」なども筐体デザインにドット柄を採用しており,これらと共通するデザインアイデンティティとなっている。
インタフェース類は,左右の側面にまとめられている。左側面に電源コネクタ,HDMI出力,有線LANポート,USB 3.2 Gen 2 Type-A,Thunderbolt 4,USB 3.2 Gen 2 Type-C,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子が並ぶ。ポート類の間隔が狭いので,外装部が大きなコネクタを使うときに注意が必要かもしれない。
一方で,右側面はUSB 3.2 Gen 1 Type-AとmicroSDカードスロットのみのシンプルな構成である。ノートPCでゲームをプレイするときは,本体右側でマウスを操作する人が多いだろう。ゲーマー向けノートPCでは,マウスの動きを妨げないように,右側面にUSBポートなどの端子を配置しない製品がある。Zephyrus M16も,ポート類が少ないので,マウスを操作スペースを確保しやすい。
Zephyrus M16を横から見ると,底面のゴム足がかなり高く,机との間に隙間ができていることが分かる。また,天板を開くと,筐体が持ち上がるヒンジを採用することで,接地面と底面の隙間をより広げることで,エアフローを確保しやすくしているわけだ。
底面にはかなり大きい開口部を設けており,ここから吸気して背面や側面から排気する形だ。
思ったよりも広く見える16:10のディスプレイ
冒頭でも紹介したように,Zephyrus M16における最も大きな特徴は,解像度2560×1600ドット,アスペクト比16:10のディスプレイだ。一般的なゲーマー向けノートPCが搭載するアスペクト比16:9のパネルよりも,縦方向に若干広くなっている。サイズとしては,少ししか違わないのだが,実際に見てみると思った以上に大きく見えるのが不思議だ。
縦方向に広い解像度は,Webブラウザやスプレッドシートを見るときに表示範囲が広がって役立つ。しかし,ゲームにおいては有効な場面とそうでない場面がありそうだ。たとえば,FPSで高所で敵がいるような場合,16:9では画面に表示されないものが表示できて優位に立てることもある。一方で,左右端で表示がカットされるケースもあり,横方向の情報量が必要なゲームでは少し不利になりそうだ。ゲームによっては,16:10に対応しておらず,フルスクリーンで表示すると上下に黒い枠が入る。16:10のメリットを活かせるかどうかはゲーム次第だ。
Zephyrus M16の液晶パネルは,駆動方式を明記していないのだが,斜めから見たときに色の変化が少ないことから,おそらくIPSまたはその互換方式のパネルを採用しているのだろう。
キーボードにも目を向けよう。Zephyrus M16のキーボードは,10キーレスタイプの日本語配列で,いわゆるアイソレーション(飛び石)タイプのキーだ。配列は10キーレスのオーソドックスな日本語配列となっている。[¥]キーと矢印キーが小さかったり,[Space]キーの左右に[無変換/変換キー]が隙間なく隣接したりはしているものの,基本的に無理のない配列だ。キーボードの奥側左には音量調整ボタンとマイクのミュートボタン,ASUS独自の設定用ソフトウェア「Armory Crate」の起動ボタンが並ぶ。奥側右にある電源ボタンは,表面に指紋認証センサーを組み込んだもので,Windows 10の生体認証に利用できる。
Zephyrus M16は,内蔵スピーカーにも特徴があるという。キーボード面の左右にツイーターを搭載するだけでなく,底面の左右手前側に2基ずつウーファーを採用した計6基のスピーカー構成になっており,薄型ノートPCとしては,比較的低音が出力されている印象だ。ただし,リッチなグラフィックスの大作ゲームをプレイすると,空冷ファンの音がかなり目立つ。集中したいときはヘッドフォンを付けたほうがよいという判断になりがちだ。
キーボード面の左右にツイーターを搭載 |
本体手前側の背面。ここにウーファーを搭載する |
Zephyrus M16の性能をベンチマークテストで検証
最後にZephyrus M16の性能をベンチマークテストで検証した。Zephyrus M16は,Armory Crateを利用して,「Windows」「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」という4つのプリセット動作モードと,ユーザーがカスタマイズできる「手動」モードの計5つから動作モードを選択できる。標準設定であるパフォーマンスは,性能と静音性のバランスを取った動作モードだ。Turboは性能重視で空冷ファンを最大回転で駆動する。サイレントは,消費電力や静音性を重視した動作モードで,CPUとGPUの動作クロックを下げたり,ディスプレイのリフレッシュレートを60Hzに固定したりする。
Scar 17のテストレポートで,サイレントはゲームに適差ないことが分かっているので,今回は動作モードをパフォーマンスとTurboに設定してベンチマークテストを実施した。テストに用いたのは,3Dグラフィックスベンチマークである「3DMark」と,「Fortnite」の2種類で,4Gamerのベンチマークレギュレーション24のとおりに計測した。
まずは3DMarkの結果から見ていこう。DirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたのがグラフ1だ。Turboとパフォーマンスで約7%の差が付いている。
グラフ2は,Fire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアを抜き出したものである。こちらもTurboとパフォーマンスの差は約7%で,総合スコアと変わらない。
CPU性能を測る「Physics test」の結果を抜き出したものがグラフ3である。Turboとパフォーマンスの差は最大で約15%と,総合スコアやGraphics testと比べて大きく開いた。以前に行ったScar 17のテストにおいて,Physics testで,Turboとパフォーマンスの間に生じた差はわずかだった。Zephyrus M16では,動作モードのアルゴリズムになんらかの変更があったのかもしれない。
GPUとCPUの両方に対して負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」の結果をまとめたのがグラフ4だ。傾向はほかのテストと変わらない。
続いては,3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」の結果となる。総合スコアをまとめたのがグラフ5だ。Turboとパフォーマンスで,約8〜10%の差となっている。
また,Time SpyのGPU testの結果をまとめたグラフ6と,CPU testの結果をまとめたグラフ7も見てみよう。
GPU testの傾向は,総合スコアと変わらず,Turboとパフォーマンスで10%前後の差が付いている。一方のCPU testは,Turboのスコアが高いのはほかのテストと変わらない。ただし,Time Spy Extremeでは,約7%あった差が,Time Spyでは約2%に縮まっており,これまでとは少し傾向が変わっている。
グラフ8は,リアルタイムレイトレーシング性能を計測するテスト「Port Royal」の結果だ。Turboとパフォーマンスの差は約8%であり,Fire StrikeやTime Spyの総合スコアと同じ傾向であった。
実ゲームにおける性能をFortniteで検証した。Fortniteは,16:10のアスペクト比に対応していないので,グラフィッククオリティのプリセットを「最高」に設定して,解像度1920×1080ドットと2560×1440ドットでテストしている。
1920×1080ドットの結果をまとめたのがグラフ9だ。平均フレームレートで,Turboとパフォーマンスの間に約21%もの大きな差が生じたのに驚かされたが,理由は判然としない。Time Spyでのスコア差からも推測すると,GPU負荷が相対的に低く,CPU性能が占める割合が高まる低解像度で差が開くということは,Turbo設定ではGPUよりもCPUの動作クロックを高める方向で動作するのかもしれない。
一方,2560×1440ドットの結果をまとめたのがグラフ10だ。Turboとパフォーマンスの両方で,平均フレームレートが60を超えた。差は約10%となっている。
16:10のディスプレイを活かせる用途は限られるが
そつなくまとまったゲーマー向けノートPC
Zephyrus M16は,高品質なデザインと高性能を実現したゲーマー向けノートPCだ。GeForce RTX 3070や「GeForce RTX 3060」を搭載した上位モデルであれば,「4K解像度でゲームをプレイしたい」というのは難しいとしても,性能面で困ることはそれほどないだろう。
特徴であるアスペクト比16:10のディスプレイは,ゲームにおいて活かせる場面がそれほどないのは残念だ。画面は広く見えるが,一般的な16:9のディスプレイを搭載したノートPCと比べて,とくに優れているとまでは言えない。
ただし,前述したようにWebページを見るときや,ちょっとデータが多いスプレッドシートを見るときは便利で,ゲームよりも仕事などで強みを発揮できるのかもしれない。公称本体重量は約2kgなので,持ち運びもできる。デザインも落ち着いているので,外出先で使っても悪目立ちしない。
せっかく高価なゲーマー向けPCを買うからには,ゲームだけでなくそのほかの用途にも使いたいという人にとって,Zephyrus M16は選ぶ価値のある製品ではないだろうか。
ASUS JAPANのZephyrus M16製品情報ページ
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(C)ASUSTeK Computer Inc.