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[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート
これまで,ゲーム雑誌などではコアゲーム(カジュアルゲームの対極にある一般ゲームを便宜的にこう呼ぶ)の陰に隠れる形になっていたカジュアルゲームだが,Xbox Live!やPlayStation Networkなどの統計から,ようやく輪郭を見せるようになってきたのだ。Business Week誌によると,2005年度には3億5000万ドルだったカジュアルゲームの市場規模が,今年中には10億ドルに達するだろうと試算されているほどの勢いで成長を続けているらしい。
ただ,一口にカジュアルゲームと言っても,そこには幅の広いさまざまなゲームジャンルが存在し,コアゲームとの明確な区分は難しい。そもそも,当初はゲームシステムもグラフィックスも非常にシンプルであったはずの電子ゲームの歴史において,いったいカジュアルゲームとは何なのか,どの時点で「カジュアルゲーム」というものが成立したのかについて振り返ったのが,GDC08で行われているカジュアルゲーム・サミットのオープニング講演「Introduction to Casual Games」(カジュアルゲーム入門)である。
メレッツキー氏は,カジュアルゲームを特定のジャンルに分類することは難しいとしながらも,コアゲームとの違いとして「カジュアルゲームは,興味の主眼がゲームにない層をターゲットにしたゲーム」と定義する。そのうえで,カジュアルゲームには以下のような特性があるとしている。
・始めるにあたってハードルが低い(ダウンロードが短い/不要,インストールが簡単など)
・取り返しのつかないミスを起こしにくい(ほとんどペナルティもなく再挑戦できる)
・短いプレイ時間(5分以下でも十分に満足できる程度)
・リプレイアブル(プレイ時間の短さを補うために,何度プレイしても飽きない作り)
・ゲームの深さが少しずつ分かる(新しい要素は,ゆっくりと注意深く紹介されていくべき)
・非暴力的なテーマ(撃ち合いや殴り合い,あからさまな競争はなく,ゾンビや世紀末など特定の世界観に縛られていないこと)
・安価(面白くなくてもさほど損をしたと感じさせない価格に抑えられていること)
2000年頃までは,コアゲームとカジュアルゲームは,大きな溝で分け隔たれていたが,コアゲームサイドから「シムピープル」が,そしてカジュアルサイドから「Bejeweled」が登場するに至って,その溝も急激に狭まっているとメレッツキー氏は言う。「カジュアルゲームは,もはやメインストリーム化する一歩手前まで来ていると言う人もいれば,もう完全にメインストリーム化していると断言する人もいる。でもそれも,近いうちに明らかになるだろう」と締めくくった。
ウェルチ氏が設立したPlayFirstは,2004年起業という比較的新しい会社であるが,馴染みの店のウェイトレスからヒントを得た「DinerDash」シリーズでブレイクし,カジュアルゲーム界でも一目置かれる存在に成長したメーカーである。
この基調講演で彼は,それまで2時間にわたって説明されてきた「カジュアルゲームとは何か」という話題を受ける形で,「しかし,カジュアルゲームの定義というのは,我々にとってそれほど重要ではない。我々開発者が願うのは,その“有望性”だけだ」と大きく出た。
彼にとっての有望性というのは,すべての人々が本を読み,テレビを鑑賞して,音楽を聴くように,いずれはすべての人がゲームに親しむようになるように,「ゲームを,誰もが楽しめる第一層級の娯楽(First-Tier Entertainment)にまで押し上げること」であるという。
近いうちに,コアゲームをカジュアルゲームが飲み込んでしまうことだってあり得るのかも知れないということは,このカジュアルゲーム・サミットで意気揚々とした開発者達の様子から感じられた。
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