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[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート
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印刷2008/02/19 19:15

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[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート

 ブロードバンドの一般家庭への普及,モバイルゲームの台頭,そして新世代ゲーム機のネットワーク化などによって,ゲーム業界の中で最も注目を集めているセグメントが“カジュアルゲーム”である。
 これまで,ゲーム雑誌などではコアゲーム(カジュアルゲームの対極にある一般ゲームを便宜的にこう呼ぶ)の陰に隠れる形になっていたカジュアルゲームだが,Xbox Live!やPlayStation Networkなどの統計から,ようやく輪郭を見せるようになってきたのだ。Business Week誌によると,2005年度には3億5000万ドルだったカジュアルゲームの市場規模が,今年中には10億ドルに達するだろうと試算されているほどの勢いで成長を続けているらしい。
 ただ,一口にカジュアルゲームと言っても,そこには幅の広いさまざまなゲームジャンルが存在し,コアゲームとの明確な区分は難しい。そもそも,当初はゲームシステムもグラフィックスも非常にシンプルであったはずの電子ゲームの歴史において,いったいカジュアルゲームとは何なのか,どの時点で「カジュアルゲーム」というものが成立したのかについて振り返ったのが,GDC08で行われているカジュアルゲーム・サミットのオープニング講演「Introduction to Casual Games」(カジュアルゲーム入門)である。

スティーヴ・メレッツキー(Steve Meretzky)氏
画像集#001のサムネイル/[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート
 この講演は2部に分けられ,2時間にわたって行われたが,その中でも注目したいのが現Blue Fang Games所属のスティーヴ・メレッツキー(Steve Meretzky)氏。彼は,1980年代前半にInfocomに入社して,「Planetfall」(1983年)や「The Hitchhiker's Guide to the Galaxy」(1984年)で,同社の黄金時代を支えた人物。その後はさまざまなゲーム会社を転々としたあと,「Zoo Tycoon」シリーズで知られるBlue Fang Gamesにシニア・デザイナーとして迎えられたという,現役バリバリの開発者である。
 メレッツキー氏は,カジュアルゲームを特定のジャンルに分類することは難しいとしながらも,コアゲームとの違いとして「カジュアルゲームは,興味の主眼がゲームにない層をターゲットにしたゲーム」と定義する。そのうえで,カジュアルゲームには以下のような特性があるとしている。

・始めるにあたってハードルが低い(ダウンロードが短い/不要,インストールが簡単など)
・取り返しのつかないミスを起こしにくい(ほとんどペナルティもなく再挑戦できる)
・短いプレイ時間(5分以下でも十分に満足できる程度)
・リプレイアブル(プレイ時間の短さを補うために,何度プレイしても飽きない作り)
・ゲームの深さが少しずつ分かる(新しい要素は,ゆっくりと注意深く紹介されていくべき)
・非暴力的なテーマ(撃ち合いや殴り合い,あからさまな競争はなく,ゾンビや世紀末など特定の世界観に縛られていないこと)
・安価(面白くなくてもさほど損をしたと感じさせない価格に抑えられていること)


「Zoo Tycoon 2: Marine Mania」
画像集#002のサムネイル/[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート
 さらにメレッツキー氏は,「Pong」や「Breakout」といったゲームが登場して以来,ゲームは技術の進化と比例するように複雑化したため,多くの潜在的プレイヤーを失うことになったのだと説明。しかし1990年代初期,MicrosoftがOSに「ソリティア」や「マインスイーパ」を付けたことによって,忘れられていたカジュアルゲームというモデルが再びゲーム業界に知れ渡ったのだと語った。
 2000年頃までは,コアゲームとカジュアルゲームは,大きな溝で分け隔たれていたが,コアゲームサイドから「シムピープル」が,そしてカジュアルサイドから「Bejeweled」が登場するに至って,その溝も急激に狭まっているとメレッツキー氏は言う。「カジュアルゲームは,もはやメインストリーム化する一歩手前まで来ていると言う人もいれば,もう完全にメインストリーム化していると断言する人もいる。でもそれも,近いうちに明らかになるだろう」と締めくくった。

ジョン・ウェルチ(John Welch)氏
画像集#003のサムネイル/[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート
 また,このあと「The Promise of Casual Games」(カジュアルゲームの有望性)と題した基調講演で登場したのが,PlayFirst社長ジョン・ウェルチ(John Welch)氏だ。
 ウェルチ氏が設立したPlayFirstは,2004年起業という比較的新しい会社であるが,馴染みの店のウェイトレスからヒントを得た「DinerDash」シリーズでブレイクし,カジュアルゲーム界でも一目置かれる存在に成長したメーカーである。
 この基調講演で彼は,それまで2時間にわたって説明されてきた「カジュアルゲームとは何か」という話題を受ける形で,「しかし,カジュアルゲームの定義というのは,我々にとってそれほど重要ではない。我々開発者が願うのは,その“有望性”だけだ」と大きく出た。
 彼にとっての有望性というのは,すべての人々が本を読み,テレビを鑑賞して,音楽を聴くように,いずれはすべての人がゲームに親しむようになるように,「ゲームを,誰もが楽しめる第一層級の娯楽(First-Tier Entertainment)にまで押し上げること」であるという。

「DinerDash 3」
画像集#004のサムネイル/[GDC2008#03]カジュアルゲーム・サミットの1日目レポート
 Web版だけで1億5000万ダウンロードを記録しているというDinerDashの開発元だけに,その野望も大きいようだ。確かに,最近ではElectronic ArtsやUbisoftなど,これまでコアゲーマーをターゲットにしていた欧米のゲーム企業もカジュアルゲームに参入しているし,ぽっと出のカジュアル系メーカーにベンチャーキャピタルからの巨額融資があったというニュースもよく聞かれる話題である。
 近いうちに,コアゲームをカジュアルゲームが飲み込んでしまうことだってあり得るのかも知れないということは,このカジュアルゲーム・サミットで意気揚々とした開発者達の様子から感じられた。
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