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2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
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印刷2008/01/28 14:01

レビュー

“シングルカード”最速なるか? ATI Radeon HD 3870×2搭載製品

PowerColor HD 3870 X2

Text by 宮崎真一

»  開発コードネーム「R680」こと,ATI Radeon HD 3000シリーズ最上位の「ATI Radeon HD 3870 X2」が登場した。CrossFireテクノロジーをベースに,2基のGPUを1枚のカード上に実装した製品は,競合の最上位を打ち負かすことができるだろうか?


PowerColor HD 3870 X2
メーカー:Tul
問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected]
予想実売価格:6万円台中盤(2008年1月28日現在)
画像集#002のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
 別記事でお伝えしているように,AMDはATI Radeon HD 3800シリーズのハイエンドモデル「ATI Radeon HD 3870 X2」(以下,HD 3870 X2)を発表した。HD 3870 X2は,ミドルレンジ(ミドルハイクラス)のGPU,「ATI Radeon HD 3870」(以下,HD 3870)GPUを一つのPCBに実装する“1枚のグラフィックスカード”だが,果たしてパフォーマンス指向のゲーマーにとって福音となるのだろうか。今回は,販売代理店であるアスクの協力でTul製品「PowerColor HD 3870 X2」(型番:AS-HD3870X2-1GDDR3-PCIE)を入手したので,そのパフォーマンスに迫ってみたい。


総重量1kgを超えるグラフィックスカード

“CrossFireだがCrossFireでない”仕様


HD 3870リファレンスカード(手前)と並べてみた
画像集#003のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
 入手したPowerColor HD 3870 X2は,AMDのリファレンスデザインを採用する製品だ。そのカード長は267mm(※突起部除く)で,HD 3870リファレンスカードの同228mmと比べると40mmほど長い。一般的なATXマザーボードから“突き出る”サイズで,PCケースによってはHDDベイとの干渉が懸念されるが,一方でこのサイズは「GeForce 8800 GTX/Ultra」と同程度でもあるので,これらを利用できるケースなら,「HD 3870 X2カードを搭載できない」という問題が起こることはまずないだろう。

 むしろ驚いたのは,その重量である。編集部実測値でHD 3870リファレンスカードが655gなのに対し,PowerColor HD 3870 X2は1020gと,1kgを超えている。B5サイズのモバイルノートPCと同じくらいといえば,その重さが伝わるだろうか。
 この重量になった最大の理由は,カードを上下から挟んで歪みを防ぐ補強板×2。これがとにかく重いのだが,裏を返せばそれだけの強度があるわけで,(マザーボードやケースはさておき)カードが自重で歪むことはまずない。

カードを別の角度から見ると補強板のゴツさがよく分かる。ちなみにカード裏面の補強板はメモリチップの放熱版も兼ねている
画像集#004のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載 画像集#005のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 さて,そんな補強板を含む,2スロット仕様で“吐き出しタイプ”のGPUクーラーだが,ユニークなのは二つのGPUでヒートシンクが異なる点だ。AMDによれば,これが別記事にある「Hybrid Cooling Technology」の正体。冷却ファンからの相対距離と総重量とのバランスを考慮してのものと思われる。

画像集#006のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
GPUクーラーのカバーを外したところ。銅とアルミのフィン,それぞれの“下”にGPUがある
画像集#007のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
こちらはAMDによるリファレンスカード(カバーデザインが異なる)のカバーを分解したところ

画像集#008のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
 GPUクーラーを取り外すと,GPU 2基とスイッチチップ1基が姿を見せる。GPU自体は(当たり前だが)HD 3870そのものであり,HD 3870 X2のキモはこのスイッチチップだ。これはPLX Technology製のPCI Express 1.1 x16ブリッジチップで,簡単にいえば,PCI Express 1.1 x16リンクを2基のGPUに対して適切に振り分ける機能を持つ。……というか,このチップはInfo-Tek(GECUBE)製のデュアル「ATI Radeon HD 2600 XT」搭載グラフィックスカード「GC-D26XT2-F5」(Gemini 3)で採用されていたのとまったく同じもの。実際,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.1.5)で確認すると,PCI Express 1.1対応である旨を確認できる。もっとも,「ATI Catalyst Control Center」(以下,CCC)の「インフォメーションセンター」ではPCI Express 2.0と表示される。しかし,PCI Express 1.1までの対応となるIntel P35 Express搭載マザーボードに本カードを装着してもPCI Express 2.0と表示されるので,これはGPUのみのインターフェースについて表示しているものと思われる。

左はGPU-Z,右はCCCのスクリーンショット(※クリックすると別ウインドウで全体を表示します)。GPU-Zでは,PCI Express 2.0対応カードをPCI Express 1.1対応のマザーボードに装着しても「Bus Interface」が「PCI-E 2.0 x16@x16」と表示されるのに対して,HD 3870 X2は「PCI-E x16@x16」になっている
画像集#009のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載 画像集#010のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 試用した個体が搭載するグラフィックスメモリチップはSamsung Electronics製のGDDR3「K4J52324QE-BJ1A」(1.0ns)。512Mbitチップを1GPU当たり8枚搭載し,容量512MB(※2基なので計1GB)を実現している。ちなみに動作クロックをCCCから確認するとコア825MHz,メモリ1802MHz(実クロック901MHz)で,リファレンスどおり。ATI Radeon HD 3870が搭載する省電力機能「ATI PowerPlay」により,グラフィックス描画負荷のかからない状態ではコアクロックが300MHzにまで低下する。

試用した個体が搭載するメモリチップ(左)と,PLX Technology製のPCI Express 1.1 x16ブリッジチップ(右)
画像集#011のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載 画像集#012のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 そのほか気をつけておく点としては,HD 3870 X2が8ピン+6ピンのPCI Express用補助電源コネクタを持つことが挙げられる。定格クロックで動作させるだけなら6ピン×2でも問題なかったが,その場合,CCC標準のオーバークロック設定項目「ATI OverDrive」が表示されない。

電源コネクタは8ピン+6ピンで,「ATI Radeon HD 2900 XT」リファレンスカードと同じ仕様。両コネクタへ適切に電力ケーブルを接続したときのみ,CCCのメニューに「ATI OverDrive」が表示される
画像集#013のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載 画像集#014のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 また,興味深いところでは,CCCにCrossFire関連項目が表れない点を挙げられよう。HD 3870 X2はCrossFireテクノロジーを利用して性能向上を果たしているのだが,ユーザーはHD 3870 X2がCrossFire動作していることを意識せずに利用できる。
一応試してみたが,やはりCrossFire Xは動作しなかった
画像集#015のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
 一方,GPUカスタマイズツールである「ATI Tray Tools」を利用すると,HD 3870 X2のCrossFireを無効化して,(リファレンスよりコアクロックが高く,メモリクロックの低い)HD 3870カードとして利用できる。もし何かのゲームにおいてCrossFireが原因と思われる問題に直面したとき,ATI Tray Toolsを利用すれば対処できることは,憶えておいて損はないだろう。

 もう一つ。2008年1月17日の記事でお伝えしているとおり,最大4基のGPUによるCrossFire環境「CrossFire X」は利用できない。対応ドライバ待ちとなるのでご注意を。


Intel X38/P35環境で

HD 3870 CrossFire&GeForce 8800と比較


 前置きが長くなったが,テストのセットアップに入ろう。環境はのとおりだ。テストに当たっては,「ATI Catalyst 8.1」をベースにHD 3870 X2への対応が行われたものとしてAMDからレビュワー向けに配布された「8.451.2-080116a-057934E-ATI」グラフィックスドライバを用いる。なお,テスト開始後(機密保持期間である2008年1月25日早朝に)「8.451.2-080123a-058514E-ATI」という,少々新しくなったバージョンも配布されたが,こちらは一部ゲームで起動しないなどといった不具合を修正したバグフィックス版。後述するゲームタイトルで試した限り,スコアに違いはなく,また筆者が試した限り起動しないといった問題も起こらなかったので,今回は古いほうのドライバで統一した次第だ。

画像集#021のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

ELSA GLADIAC 988 GT 512MB
Crysis推奨のGeForce 8800 GT搭載カード
メーカー&問い合わせ先:エルザジャパン 03-5765-7615
実勢価格:3万8000円前後(2008年1月28日現在)
画像集#017のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
 比較対象はもちろんHD 3870。シングルカードとCrossFire構成,両方のスコアを取得し,さらに競合の最上位モデル「GeForce 8800 Ultra」(以下,8800 Ultra),そしてHD 3870のライバル「GeForce 8800 GT」(以下,8800 GT)も用意した。
 マザーボードは,基本的にはIntel P35 Express(以下,P35)チップセット搭載製品「P5K Premium WiFi-AP」を用いる。ただし,P35ではCrossFire構成時にx16+x4という変則仕様になるため,Intel X38 Express(以下,X38)搭載でx16+x16仕様になる「Maximus Formula Special Edition」も用意した。HD 3870 X2と,HD 3870 CrossFireの違いを多角的にチェックしてみようというわけだ(※以下,「@X38」という表記で「X38環境上で動作」を示す)。
 このほか,8800 GTに関しては,nForce 780i SLIマザーボード「Striker II Formula」を用意してNVIDIA SLI(以下,SLI)パフォーマンスも計測する。

P5K Premium/WiFi-AP(左),Maximus Formula Special Edition(中央),Striker II Formula(右)
ASUSTeKのハイエンドユーザー向けマザーボード×3
メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected]
実勢価格(左から順に):3万1000円前後,4万1000円前後,4万5000円前後(2008年1月28日現在)
画像集#018のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載 画像集#019のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載 画像集#020のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 なお,テストは4Gamerのベンチマークレギュレーション5.1に準じるが,以前のテストにおいてATI Radeonファミリーとの相性問題が生じた「RACE 07: Official WTCC Game」は,スケジュールの都合もあって今回はテスト対象から外した。また,以下,CrossFireは「CF」と略す場合があることをあらかじめお断りしておきたい。


対応アプリケーションでは抜群のパフォーマンス向上

総じてCrossFire構成よりもスコアが安定


 まずは定番3Dベンチマークソフト「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)から。「標準設定」「高負荷設定」のスコアをグラフ1,2にまとめたが,HD 3870 X2は,8800 Ultraに完勝。“3DMark06のスコア競争,シングルグラフィックスカード構成の部”で,久しぶりにATI Radeonがトップの座を奪い返したことは実に感慨深い。8800 GTのSLI構成とほぼ互角に渡り合っている点も注目だ。
 HD 3870 X2とHD 3870 CFを比較すると,X38環境ならば後者のほうがスコアは高めだが,P35環境では1920×1200ドットでCrossFireが強制的に無効化される不具合が発生し,スコアが大きく下がっている。

画像集#022のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
画像集#023のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 3DMark06のスコア詳細を見てみると,HD 3870 X2はとくにHDR/SM 3.0テストの結果が優秀だ(グラフ3)。スコアは実に,HD 3870シングルカードの約50%増しである。

画像集#024のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 グラフ4,5は,FPS「Crysis」(Version 1.0)の「Benchmark_GPU.bat」(GPUベンチマーク)実行結果だ。CrysisはGeForce最適化済みタイトルということもあり,標準設定の低解像度では8800 Ultraはおろか,8800 GTにも水を開けられるが,高解像度では面目躍如といったところで,8800 Ultraと互角の戦いに持ち込んでいる。
 ただ,高負荷設定時のスコアは今ひとつ。HD 3870 CFの値も芳しくないことを考えると,今後のドライバとCrysis自体のアップデートによる改善を期待したい。

画像集#025のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
画像集#026のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 なお,「Benchmark_CPU.bat」(CPUベンチマーク)の結果は,GPUベンチマーク結果に準じた形になっている(グラフ6,7)。

画像集#027のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
画像集#028のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 次もFPSから,「Unreal Tournament 3」(以下UT3)の結果だ。UT3でも,HD 3870 X2は高解像度で良好なパフォーマンスを示している。HD 3870 CFが1920×1200ドットでスコアを大きく落とすのは3DMark06と同じだ。

画像集#029のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 ATI Radeonファミリーに最適化されているFPS,「Half-Life 2: Episode Two」のテスト結果をグラフ9,10にまとめたが,HD 3870 X2のスコアは全体的にかなり高い。HD 3870 X2とHD 3870 CFで比較すると,X38やP35といった環境を問わずHD 3870 X2のほうが良好な結果を残している。また,x16+x4仕様のP35における標準設定のスコアと比べると,HD 3870 CFのスコアが大きく落ち込んでいくのと比べるとHD 3870 X2の安定感が目を引く。
 一方,高負荷設定時におけるスコアの落ち込みは相対的に大きく,実際,高負荷設定時の高解像度だとHD 3870 X2は8800 Ultraに逆転を許してしまう。

画像集#030のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
画像集#031のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 続いてはTPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下ロスト プラネット)。ロスト プラネットはCrossFireでスコアが上がりにくいタイトルなのだが,案の定,HD 3870 X2のスコアはまったく上がらない(グラフ11,12)。HD 3870のシングルカードにすら劣るスコアで,シングルカード動作しているのではなく,CrossFire動作がむしろ悪い結果を生んでしまっている。
 一方,HD 3870 CrossFire構成時のスコアがX38とP35で大きく異なるのに対し,HD 3870 X2がレーン数の影響の受けないのは救いといえるかもしれない。

画像集#032のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
画像集#033のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 最後はRTS「Company of Heroes」のテスト結果である(グラフ13,14)。Company of HeroesはATI Radeon有利なスコアが出やすいのだが,このHD 3870 X2のスコアもかなり優秀だ。標準設定では安定して8800 Ultraを上回り,不利な高負荷設定でもほぼ互角。3DMark06と似た傾向を示している。
 なお,HD 3870シングルカードが高負荷設定時にスコアを大きく落とすのは,2007年12月28日の記事と同じ。ドライバ,もしくはゲーム側の対応待ちである。

画像集#034のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
画像集#035のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載


シングルグラフィックスカードとしては

8800 Ultra超のモンスター級消費電力


ATI Radeon HD 3870 GPU
画像集#016のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載
 いくら消費電力の低減が進んだATI Radeon HD 3800シリーズのGPUを搭載するといっても,その数は2基である。さらに,補助電源コネクタに8ピン仕様のものが用意されるあたりからも,CrossFire+ブリッジチップ分の消費電力は高いことが懸念される。

 そこで,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,3DMark06を30分間連続実行して,その間で最も消費電力の高い時点を「高負荷時」とし,それぞれの時点におけるシステム全体の消費電力をワットチェッカーにて測定した。その結果をまとめたのがグラフ15である。
 やはり,HD 3870 X2の消費電力は大きい。あの8800 Ultraと比べても,高負荷時に40W以上もの違いがあり,“シングルグラフィックスカード”として見たとき,その消費電力の高さはモンスターの名にふさわしいものだ。HD 3870 CFとの比較では,ブリッジチップの消費電力が案外バカにならないのも見て取れる。
 しかし,ATI PowerPlayに大きな効果があるのも,また確か。アイドル時のスコアは,ハイエンドグラフィックスカード(搭載システムの消費電力)として,不満のないレベルに収まっている。

画像集#036のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 グラフ15時点におけるGPUコア温度を,HD 3870 X2はCCC,それ以外はモニタリングツール「ATI Tool」(Version 0.27β3)で測定した結果がグラフ16となる。HD 3870 X2ではATI Toolから温度を測定できなかったためCCCを利用したのだが,ツールによる測定結果の違いはほとんど出ないことがこれまでの検証から明らかになっているので,問題はないと考えている。システムはケースに入れず,バラックの状態だ。
 搭載するクーラーが異なるので横並び比較はできないが,HD 3870 X2のGPU温度はハイエンドカードとして比較的低め,とはいえる(※アイドル時に高めなのは,ファン回転数を落としているためだろう)。AMDによれば,フルロード時にGPUクーラーの動作音は36dBAだそうだが,確かに高負荷時には風切り音が少々気になる場面もあった。少なくとも,HD 3870リファレンスカードよりはうるさくなってしまっていると理解しておくのが正解である。

画像集#037のサムネイル/2基のGPUを1枚のカードに搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」レビュー掲載

 なお,カードの裏面に搭載されたグラフィックスメモリは,熱伝導シートを介して裏面の補強板に密着している。つまり、この補強板はメモリチップの放熱板としての役割を担っている。AMDによれば「補強板の冷却能力が高いわけではないが,メモリチップの熱を拡散させていることに意味がある」とのことで,チェックしてみると高負荷時に57.2℃。確かに熱いことは熱いものの,不安になるほどの温度ではなかった。ただ,オーバークロックなどを行う場合は,補強版にも風が当たるよう,エアフローに気を配る必要がありそうだ。


バランスこそ欠くものの,価格帯性能比は抜群

最高性能を狙うATI派にとって大いに価値アリ


 4Gamerではこれまで何度も繰り返しているとおり,SLIに比べると,CrossFireがうまく機能する局面はどうしても限られる(※別にSLIも完璧というわけではないが)。そのため,どうしても「CrossFireが理想的に機能するなら」という条件付きになるが,HD 3870 X2のパフォーマンスは優秀だ。また,実勢価格も6万円台中盤で,10万円以上する8800 Ultraと比べると非常にリーズナブル。付け加えるなら,試しに今回テストに用いたnForce 780i SLIマザーボードに差してみたところ,HD 3870 X2は問題なく動作した。つまり,わざわざCrossFire対応マザーボードを用意する必要がないのである。8800 GTのSLIだと実現するのにチップセットを選ぶわけで,この点もシングルカード構成となるHD 3870 X2の強みといえそうだ。

 では,どういった人向けかといえば,「HD 3870 X2に興味を持っている人のうち,x16+x16レーンでCrossFireを利用できるマザーボードとHD 3870カードを使っている人以外のすべて」ということになるだろう。X38マザーボードや,AMD 790FXマザーボードでHD 3870を使っているなら,素直にもう1枚買い足すべき。逆にP35環境など,限定的なCrossFireサポートに留まるマザーボードでは、十分な性能が得られないのはテスト結果から明らかで,最高性能を望むのであれば素直にHD 3870 X2に載せ変えるほうが適切だ。つまり多くの人にとって,シングルカードで最高性能を目指すとき,HD 3870 X2は十分に価値のある存在である。
  • 関連タイトル:

    ATI Radeon HD 3800

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