連載
インディーズゲームの小部屋:Room#538「WILL -素晴らしき世界-」
思わず明け方にW杯を見てしまって寝不足気味の筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第538回は,WMY Studioが開発した「WILL -素晴らしき世界-」を紹介する。本作は,記憶喪失の神様となり,人々から届けられる願いが書かれた手紙の文章を組み替えて,その運命を変えていくというアドベンチャーゲームだ。熱戦の末に日本代表が負けてしまって残念……。
見知らぬ部屋で目覚めた一人の少女。すっかり記憶を失っていた彼女の前に,イシという名のしゃべる犬(?)が現われる。イシの話によると,少女はユアンという名前で,助けを求める人々からの手紙を受け取り,その人間の運命を変える役目を担う神様なのだという。そしてユアンはイシに促されるまま,人々を幸福に導くために働くことに……。
ユアンのもとには,何か悩みごとを抱えていたり,絶体絶命の危機に陥ったりしている,さまざまな立場の人間(と猫)からの手紙が届く。本作で特徴的なのは,そうした人々の運命を,手紙の文章の一部を入れ替えることで変化させるというゲームシステムだ。これによって,そのあとに起こる不幸な出来事を回避できるのだ。
届いた手紙の文章は,自動的にいくつかのブロックに分割され,前後を入れ替えるなどで因果関係を変化させられる。同時に2通の手紙が届くことも多く,その場合はそれぞれの中身を入れ替えることも可能だ。ユアンは神様なので,同一の手紙内で矛盾が起きない限り超常的な現象を起こすこともでき,銃を持っていた相手の手に,いきなり銃ではなく“くさや”を握らせたりもできる。これで勝つる!
それぞれの手紙のエピソードには,組み替えた文章の内容に応じて,最高のSランクからBADエンドまで,いくつかの結末が用意されており,基本的にはSランクを獲得することでストーリーを進めていく。一見すると万能なユアンの能力だが,ブロックの入れ替えには一定のルールがあり,自由自在というわけにはいかない。中には特殊な条件が付けられたブロックもあり,ちょっとしたパズルのようで面白い。
ユアンはすべての人をハッピーエンドに導きたいと願っているが,誰かの運命を変えることが見知らぬ別の誰かの運命に影響し,目の前の危機を乗り越えたはずが,また新しい不幸に直面する結果になることもある。それぞれの登場人物の運命が複雑に絡み合う,先が読めないストーリーは本作の大きな魅力で,丁寧な日本語ローカライズと相まってぐいぐい引きつけられる。良質なアドベンチャーゲームを探している人にオススメしたい作品だ。
そんな本作は,SteamとPLAYISMで1480円で発売中。Steamで探すときは,英題の「WILL: A Wonderful World」で検索しよう。ユアンと一緒に人々を幸せにしたい人は,ぜひ。
■「WILL -素晴らしき世界-」公式サイト
http://wmy-studio.com/ja/will-a-wonderful-world/- 関連タイトル:
Will -素晴らしき世界-
- この記事のURL:
(C)WMY Studio.Licensed to and published by Active Gaming Media,Inc.