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沖縄というと,日本の領土としての認識を前提に,第二次世界大戦における激戦地とか,ベトナム戦争時の空軍基地とか,そういった近現代史と絡めて考えてしまいがちだ。しかし沖縄――琉球王国は,15世紀にはすでにその形を成しており,明治に入って日本に吸収されるまでの間,中国と日本(薩摩藩)の双方に朝貢しながらも,一応は独立国としてその存在を維持する,歴史を持った国家であった。
琉球が南洋貿易で大いに活躍したという史料や論考は多く,なかには周辺海域に巨大な影響力を及ぼす一大交易国家であったとする説(ウォーラーステインがその代表だが)もある。それがどれほど真実であるかはともかく,いくばくかでも真実の一端を含んでいるならば,EU3というツールでそれを追求することは可能だろう。
というわけで,今回は琉球王国を使って東アジア交易国家の顛末を見てみたい。いやまあ,このゲームでプレイヤー国として琉球が選べるだけでも,かなり驚愕なんだけど。
EU3において,交易は驚くほど高い効率を誇る収益手段である。だがその果実を得るには,それなりのノウハウおよび立地条件が必要となる。
最初に,EU3の財政システムをもう一度確認しておこう。EU3において,国家の月々の収支は原則として赤字であり,ルール上年頭(1月1日)に入ってくる税収で,その赤字をカバーする形になる。
この月々の赤字は,収入の一部を貨幣の鋳造に回すことで黒字に転換させられるが,これをやるとインフレが進行してしまう。インフレは政府のあらゆる活動(兵士の雇用,建築物の建造などなど)の費用を高騰させるだけでなく,恐ろしいことに技術の発展に必要なコストまでも引き上げる。こと技術開発にコストがかかる(2万ダカットとか……)アジア圏では,たった1%のインフレが,大きなディスアドバンテージにつながることも多い。
したがって,貨幣の鋳造はできる限り避けたいのだが,これをしないと大規模な資金を蓄積するための時間が厖大になってしまう。
また,ここが非常に重要なポイントなのだが,交易や植民によって大きな収入を得ているからといって,それがそのまま税収の大規模な拡大につながるわけではない。技術開発に回せる資金こそ増えるが,年々の税収はそこまで大きくならないため,むしろ影響領域の拡大と,その維持にかかるコストに圧迫されることすらある。
となると,「インフレ傾向を甘受する」という方向性もアリだ。1年当たり+0.02%程度のインフレ進行であるならば,1%のインフレが発生するまでに50年かかることになる。ゲームはだいたい350年だから,ゲーム終了時には+7%の計算だ。7%ともなると非常に痛いが,普通にプレイしていれば遅くとも200年目くらいで,何らかのインフレ対策が講じられるだろう。
方法論は人それぞれだと思うが,個人的にはインフレをある程度まで甘受する方向でプレイしている。健全な財政状態というのは,必ずしも国際的に健全な国家状況とイコールではない。必要とあらば借金のうえに大インフレを重ねてでも,押すべきものを押し通さなくては,「財政的に健全な国家」が墓碑銘となることもままあると,新自由主義経済を支持する方々には,とくに強く述べておこう(笑)。EU3はあくまでもパラドゲーであり,正しさが,正しい結果につながるとは限らないのだ。
さてそのうえで,今度は交易のシステムを見てみよう。交易で利益を上げるためには,商業の中心地(CoT)に商人を派遣し,そこで商人が市場を確保し続けなくてはならない。
問題は,この「商人」にまつわる部分にある。商人を派遣するに当たっては,当然ながらそのCoTが既知の土地になくてはならない。また派遣先のCoTを支配する国が,こちらに対して市場を開放していなければならない。この時代,「鎖国」をしていた国は意外と多く,また重商主義の芽生えとともに,国益のために市場の封鎖が行われることはよくあった。
これらの条件を満たしたうえで,商人を派遣するにはさらに,お金も必要になる。必要な金額はおおむね距離に比例しており,遠いCoTに商人を派遣すればするほどお金がかかる。商人の派遣に必要な金額は,近場で3〜5ダカット前後,地球の裏側で10ダカット以上という感じで,これが意外とバカにならない金額である――何しろ小さな国家だと,年間の収支が+3ダカット程度という例がゴロゴロしているのだから。
さて,こうした艱難辛苦のすえに派遣された商人だが,必ずしも無事に現地で開業できるとは限らない。商人が現地で開業できる確率は,国家の体制そのほかによって決定される。つまりは一定の確率で失敗する。国家予算に等しい大金をつぎ込んで「そもそもお話になりませんでした」というのは,実に辛い。悲しい。苦しい。
しかも,たとえ開業に成功したからといって,そこで安閑としてはいられない。商売の世界は競争の世界である。CoTにはさまざまな国から商人が送り込まれており,彼らは互いに激しく競争している。そして競争に勝ったほうは生き残り,負けたほうは廃業である。辛い。悲しい。苦しい。
一つのCoTでは,最大で6人まで自国の商人が活動できる。活動する商人の数が多ければ多いほど収益も上がるので,各国はなるべく多くの商人を活動させようと,次々に商人を送り込んでくる。つまり,次々に競争が発生する。負けて消えたくなければ,こちらも次々に商人を送り続けるしかない。血を吐きながら続けるマラソンそのものである。
なおCoTから他国の商人を追い出せるかどうかは,その国の交易技術レベルおよび国家体制に依存する。他国の商人を追い出す力の強い国家は,それだけそのCoTに居座る力も強い。結果的に富める国はより富み,貧しい国はなかなか豊かになれない。悲しいかな,これが現実である。
交易の原則論は以上だが,ここでさらに成功を収めようとなると,もう一段階踏み込んだノウハウが必要となる。
最も重要なのが「国策」である。「統一的交易方針」による交易効率+10%は,これを国策にしていない国は交易レースに参加する資格がないと言っていいくらい影響力が大きい。
交易効率+10%は,交易による収益を税金に変換するパーセンテージが上がるというだけでなく,商人の競争力などを高める効果もある。商人を派遣するというのは,すなわち国家予算を賭けたバクチをするということなのだから,その勝率が大幅に上がるのは非常に大きい。
そのうえで次に大切な国策は「合理的商慣行」の競争力+10%だ。これを持たない国はつまるところ,経済戦争における負け組ということである。「統一的交易方針」に比べると,さすがに真っ先に選択する必要まではないが,プライオリティの高い国策であるのは間違いない。
また,できれば国家の政体スライダーにも手を入れたい。最重要になるのは,これまた個人的見解だが「貴族中心主義/富豪中心主義」のスライダーだ。これを富豪中心主義に偏らせることで,国内の生産効率と引き換えに,交易効率を上げられる。
同様に「陸軍主義/海軍主義」スライダーは,できれば海軍主義に持っていきたい。これには交易効率向上以外に,植民者の増加という効果もある。研究速度全般の向上を目指して「保守主義/革新主義」スライダーを革新主義に寄せていくと植民者の増加ペースが下がるので,これを海軍主義で補おうという考えだ。いやもちろん,植民をしないなら問題ないが。
一方「重商主義/自由経済」スライダーでは,あまり大きな効果が得られない印象がある。というか,どちらに振ってもデメリットがメリットを超越しかねない部分が大きく,実は中間地点にあるほうが融通が利いていいんじゃないかとすら思う。経済規模が拡大してきたら,じわりじわりと自由経済にシフトさせるのがいいだろう。とくに急ぐ必要はない。
商人を重点的に派遣するCoTにどこを選ぶかも大事だ。できるだけ総交易額の大きな,栄えているCoTに商人を送り込んだほうが,最終的な利益も大きければ,途中の競争段階でも収益は大きい。とはいえ自分より圧倒的に技術レベルが上の商人がしのぎを削るCoTに乱入しても,まるで勝負にならないのはもちろんだ。
また,自国が何らかの同盟体制に組み込まれている場合,その同盟が戦争をしそうな相手国にあるCoTを活躍舞台に選ぶのは望ましくない。戦争が始まって取引停止が申し渡されたら,とたんに国家経済が行き詰まるのでは,いったい何をしているのか分からない。
ゲームを開始してしばらくは,商人を派遣する費用もバカにならないので,CoTの距離,規模,競争相手をよく見極めて,なるべく安定した収益を得られるところから攻めていきたい。
と,なんだか攻略記事のようなノリで始まってみたが,これには理由がある。上記のような基本戦略を胸にプレイを始めたくらいでは,琉球王国はぶっちゃけまったくもって立ち行かないのだ。悪くすると20年かからずに破産,良くてもまず100年くらい低迷して,その後も低迷。明の属国扱いとなっているので日本から宣戦されたりすることはない(合理的思考を旨とするAIは,普通朝鮮出兵など選ばない)が,これはただ単に死んでいないというだけで,生きているとはとうてい言いかねる。
ああでも,それって現実の琉球王国も,1600年くらいからこっちはそんな感じでしたっけ……。
いやいや,いやいや,これではいけない。ここでいつものように満足してしまっては,EU3をプレイしている意味がない。何か別の方法を考えねばならない。歴史を覆す何かを。
じっと問題点を考えてみる。まず最初に挙げられるのが,国家財政の規模の小ささと,技術研究の遅さが絶妙のハーモニーを奏でていることだ。財政規模が小さいから研究が遅くなり,そしてそもそもアジア文化圏であることによるペナルティがかかっているので,さらに研究が遅くなる。
これがヨーロッパであれば,そそくさと最初の国策を取って交易レースに打って出,インフレ覚悟で収益を稼ぎつつ交易技術と統治技術を向上させ,第二の国策を取りつつ市場の独占も可能となったら,次は商売の範囲を世界に……と行けるのだが,琉球ではそもその「最初の国策を取って」のあたりでつまずく。つまずくというか,始めさせてもらえない。
明の属国であるという事実も,結構重い。属国は宗主国に対して自動的に朝貢させられるので,ただでさえ厳しい懐具合はいっそう厳しくなる。15世紀の琉球が明との朝貢貿易で栄えましたとはよくいわれる話だが,うんまあ,確かに貿易船は着実に明に向かっている。
最後に,超大国である明との軍事同盟を利用し,明が引き起こした戦争に乗じて漁夫の利を狙うというアイデアが,まったく活かせないという問題がある。なぜか? 人的資源が1000人しかおらず,陸軍の維持最大部隊数は2部隊,つまり2000人まで。仮に完璧なタイミングで漁夫の利を得たとしても,そのあとにそのプロヴィンスで数回は確実に発生するであろう住民反乱に,まるで対応できない。傭兵を雇えばある程度まで対抗できるだろうが,果たして傭兵を雇って維持できるだけの“上がり”が確保できるかは不明だ。
さて,どうしたものか?
まず,戦略自体を抜本的に練り直してみる。幸いと言っていいのか,琉球の周辺は,原住民しか住んでいない未開発地帯(ひどい言い草だが)。国策として「新大陸の探索」を取って,そういった未踏の大海原と島々に植民していくというのは,完全にあり得ない選択肢ではないだろう。
この方針の問題は,植民に必要な資金をどうやって調達するかということ,また,植民地が最終的に黒字を発生させるには相当の時間がかかるが,これをどう計算するのかという点である。
前者については,インフレを辞さずに資金を貯めることにする。植民地競争は,アジアの国々との競争というだけではなく,来たるべきヨーロッパ諸国との競争でもある。遅れれば遅れるだけ,経済価値の大きな土地は残らないだろうし,へたをすると戦争の火種にもなりかねない。
後者の最終的な黒字見通しついては,経済的には確かにそのとおりなのだが,琉球のもう一つの問題点,薄すぎる兵役人口という問題を解決する手段として十分に有益であり,それもやむなしと踏んだ。
積極的に戦争をしたいわけではないが,将来どこかで反乱でも起きた場合,完全に傭兵頼みの鎮圧戦に持っていきたいとも思わない。というか,不幸なイベントが連続して琉球本島での反乱発生確率が0.3%に達したところ,そこで反乱発生→国家終了という素晴らしいコンボを踏んだことがあるので,そういった前世の記憶にも配慮すると,最低限の軍隊を維持できるスペースと人口は,どうしても確保したいのだ。
というわけで,まずは国策として「統一的交易方針」を採用する。「新大陸の探索」じゃなかったのかよ! と言われそうだが,これにも理由がある。琉球本島の経済規模では,そこから得られる税金だけで何かをするのは無理である。そのため,まずは中国本土に商人を派遣,そこで交易利益を稼ぎ,稼いだ税収を貨幣の鋳造に充てて,活動資金を確保しようというわけだ。
当然ながら国家の経済規模が大きければ大きいほど,同じインフレ率であっても国庫に入る金額は大きくなる。例えば税収の合計が一桁だと,インフレ率±0.05%/年で得られる資金は,せいぜい0.1ダカット/月程度だ。これが税収50ダカットともなれば,同じ条件に設定しても,月当たりの収入増分は+3〜4ダカット前後にまで増大する。商人の派遣に必要な金額を合算しても,余裕で国庫は潤い続ける。
こうして稼いだ資金を利用して,台湾に植民を開始する。のっけから明にすごい勢いでケンカを売るようなムーブだが,怒られなかったのでよしとしよう。台湾は陶磁器を生産しており,また人口も多い。右肩上がりで進行するインフレは脅威ではあるが,生産による基本的な税収は大幅に向上し,兵役人口も上向いた。
台湾の植民地化が終わったところで,国策を「新大陸の探索」に切り替える。国策の変更に伴う安定度ペナルティ−3は交易国家には痛い(派遣できる商人の数には,国家の安定度が強く影響する)が,琉球は現状,琉球本島と台湾のみで構成された小国なので,その国家の面積的/人口的規模に比して巨額といってもいい税収を活用すれば,安定度の回復はいたって迅速に達成される。
この「小国ゆえの社会の安定性」は,琉球が持つ数少ないメリットといってよい。政治的な小回りの利きは,政体スライダーと国策に関して,大いなる柔軟性をもたらしてくれるのである。
さて,国策を切り替えたことで商業規模は必然的に縮退する。というか,投資に比して得られる収入が著しく減衰する。そこでインフレ率のさらなる上昇を意に介さず,さらに多くの貨幣鋳造を行うこととする。植民と探索には金がかかるのだ。
幸い海上の探索はあらかた為されているので,海路を使ってフィリピンはルソン島に上陸する。上陸地点の原住民は非常に穏やかな性格で,これはこのまま植民を開始してもよいかと思ったが,いかんせん生産物が穀物。人口もあまり多くはない。交易物件としても,固定税収としても,いま一つ期待できない土地である。
そこで探検隊はルソン島全域を探索。すると,なんとマニラが砂糖を産出することが分かった。砂糖は交易価値が高く,また製糖工場を建設することで収入と研究速度の増大をもたらしてくれる。
マニラの原住民は好戦性こそ高いが,凶暴性は低い。念のために傭兵を雇い,既存の陸軍と併せてマニラに派遣。軍隊の監視下,植民は無事に完遂された。
一方そのころ,マニラの北にアユタヤが植民を開始する。将来的に戦争が起こったときに非常に煩い存在になりそうだったので,その隣のプロヴィンスを押さえておくことにする。アユタヤの扇動による原住民反乱が厳しかったので傭兵の数を増やし,植民開始。何とか無事に植民は完了した。
この一連の植民活動によって,琉球はヨーロッパの小国並みの基本的な経済基盤を手に入れ,兵役人口も倍近くに膨れ上がった(倍といっても2000人だが,それは言わない約束)。独り立ちできる国家として,その基礎が整ったのである。
あー,でも,軍事面は完全に無視してるんで,その,できれば明の庇護は今後ともぜひ。朝貢するからさぁ。
さて,ここから先は目指せ経済発展である。だがその前に払うべきツケを払ってしまわなくてはならない。
国策を「中央銀行」に切り替える。これは1年当たり−0.1%のインフレ率低下をもたらしてくれる国策で,技術開発が遅い地域では非常に重宝する。このとき琉球のインフレは+10.0%以上。まあ,ざっと見て100年くらい我慢すればインフレは解消される。
あるいはここで200年かけてインフレを解消することにして,交易を続けながら(つまり商人の派遣費用を鋳造した貨幣で賄いながら)技術開発の速度を維持するよう試みるという手もあった。というか,一応最初はそれを試みた。
だが+10%のインフレは実に凶悪で,商人の派遣費用で国家財政が簡単にパンクしてしまう。しかも統一的交易方針を失っているため交易の効率は大幅にダウン,まったくもってコストとベネフィットがつりあわない。
というわけで,平和な(プレイヤーにとっては素晴らしく退屈で苦痛な)100年が過ぎた。
この頃には統治技術向上の成果が現れていて,二つ目の国策が取れるようになっていたので,迷わず「統一的交易方針」を復活させる。インフレの進行は年当たり+0.1%までは許されるので,その範囲内で国庫を富ませつつ,積極果敢に商人の派遣を行う。
結果,琉球の財政規模は月当たり100ダカット近くにまでふくれ上がった。これがどれくらい大きいかというと,前回のドイツ騎士団がゲーム開始直後に10ダカット程度の経済規模だったことから推測していただきたい。いまや1琉球=10ドイツ騎士団というレートなのである。
軍事的には非常に心もとないところはあるが,明は相変わらず東洋の巨人であり,明の庇護下にある限り侵略される心配はほとんどない。もっとも,「幸運」(ゲーム開始時にシステム上こっそり5か国選ばれる,幸運な国家。いろいろとプラス修正が得られる)を得ていたティムールが西から張り出して来ており,アジアの盟主はゆくゆくティムールの手に収まりそうではあったが,東南アジア付近に限定すれば,明より大きな国は存在しない。
一方,琉球にできることがあまり残されていないのも事実だった。商人を世界中に派遣し,巨額の富を築くことには成功しているが,軍事的基盤の脆弱さと,なによりも「明の属国である」ことによる外交的不自由が,これ以上の拡大を拒んでいた――なにしろ,自発的な宣戦布告ができない。もっとも,明の庇護がないほうが自由に行動できたかと問われれば,なんだかもっと自由のない方向に進んでいた疑いも強いので,こればかりはやむを得ないだろう。
ともあれ,琉球商人は中国はもとより,マラッカをはじめとする東南アジアを席巻し,インド亜大陸および中央アジアにも進出,遠いところでははるかアラバマやザンジバルにまで遠征を果たした。どうやってそこまで行ったんだろうという疑問はさておき。アラバマはネイティブアメリカンの崩壊とともに市場が封鎖されたものの,ザンジバルでは並み居るアフリカ商人をちぎっては投げちぎっては投げ,ライバルはヴェネツィアやカスティーリャという,たいへん国際的な活躍を果たしていた。
その後,琉球は蓄積した富を活かしてマニラに製糖工場を建設。続いて琉球と台湾に大学も設立した。またアユタヤと明が戦争に突入したのに呼応し,琉球もアユタヤに宣戦。フィリピンのアユタヤ領を切り取ってこれを割譲せしめた。その後の統治は困難を極めたが,大量の傭兵を雇用することでこの危機を克服。世の中が金で回っていることをアジア全域に見せつけた。
遅れていた技術も大幅に進展,陸軍は明と変わらぬレベルに達し,また国家の要である交易技術と統治技術は東アジア圏で不動のトップを確保した。まさに,琉球は順風満帆であった。
もっとも,フィリピンをはじめ南洋諸島にはヨーロッパ勢がひしめきあっており,彼らがほんの少しでもその気になれば,琉球の未来は一瞬で消滅するだろう。
また,琉球繁栄の担保となってきた明は,国内が三つに分裂,さらにティムールの後を継いだムガール(!)に黄河流域にまで肉薄されており,いずれにせよ先は長くない。中国を「眠れる獅子」と評価する欧米国家は,さほど多くはなかろう……この世界におけるアジアの覇者はムガールである。イギリス人はいったい,何をしてるんだ?
琉球は,来たるべき運命の日を大幅に先送りすることには成功した。だが,その日がいつか到来することまでは,変えようがなかった。
あるいはそれは,交易国家の宿命といえるかもしれない。平和を以て繁栄の前提とする国家は,暴力こそが政治のエンジンであった時代そのものを,変える力は持ち得ない――ヴェネツィアがイタリアの地方都市へと没落せざるを得なかったように。
それはそうとして,もし筆者が沖縄出身であったなら,今回のプレイはもっともっと楽しめたような気もする。なにしろ19世紀にいたるまで,ポルトガルの武装商人も薩摩藩も琉球を踏み潰すことがなかったのだ。50年後の明治維新を迎えたとき,日本がここに排他的な領有主張を打ち立てている可能性は低そうに思える。台湾海峡とバシー海峡を内海とする琉球王国は,いったいどんな近代と国際関係を迎えるのだろうか?
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