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印刷2008/03/24 20:16

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剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第78回:ホビット(Hobbit)
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 剣と魔法の世界に登場するモンスターや亜人種の大半は,神話/民間伝承を由来とするものが多いが,近年では著作物を出身としたものの活躍も目立ってきている。その代表ともいえる存在がホビット(Hobbit)だ。
 ホビットは,J.R.Rトールキンによるオリジナルの種族。彼の構築したミドルアース(中つ国)の住人とされ,同世界を舞台にした「ホビットの冒険」や「指輪物語」では主人公を演じたことで知られている。また彼の著作だけではなく,ゲームにも登場することから,ホビットの知名度は非常に高い
 ホビットの身長は60cmから120cmくらいで,髪の毛はクシャクシャの巻き毛が多い。丘などに穴を掘って住居を作り,人間のように洋服は着ているものの,靴は好まず裸足で生活している。ちなみにすねから下は毛深く,足の裏にも毛が生えていることも手伝って,隠密行動が得意だという特徴がある。一日に6回は食事を取り,パイプ草(タバコ)が好きである。基本的に平穏な種族なので,好奇心に駆られて冒険に出るホビットは少数派だとされている。
 ゲームではこうした要素を受けてか,器用で機敏な隠密行動を主とする盗賊などのクラスに向いているとされている。また「ホビットの冒険」や「指輪物語」の中で,数奇な運命に翻弄されながらも,結局は勝利を手にしたり,窮地を脱出していることからか,「運」というパラメータがあるRPGでは,ホビットのそれは高めに設定されている。こうした設定を知っていれば,ホビットの盗賊が宝箱に仕掛けられた罠を解除しようとして失敗するが,偶然罠が作動しなかったというシチュエーションにも,より深い楽しみを見いだせるかもしれない。

 

 ミドルアースに生息するホビットについて,少し掘り下げて紹介していこう。トールキンによればホビットは,彼らが自分達を指して使うクドゥク(Kuduk)という語を英訳したものだという。ほかにもローハンの言葉では,穴掘り(Hole Builder)という意味でホルビトラ(Holbytla)と呼ばれており,実にホビットの特性を捕らえたネーミングだといえる。
 種族は三つあり,もっとも多いハーフット(Harfoot),好奇心旺盛なファロハイド(Fallohide),ほかのホビットと異なり水を恐れないストゥア(Stoor)の3種族がいるとされている。誕生日にはみなにプレゼントするという習慣を持っており,「指輪物語」の冒頭でもそれがうまく表現されている。
 ホビットがどうして生まれたのか,どこから来たのかはよく分かっていない。資料をアレコレ調べても,ミドルアースの第一紀に目覚めたという記述しかなく,最初は谷に住んでいたが,やがて悪の勢力の台頭に伴い,シャイア(ホビット庄)に移り住んだことになっている。以後は,「ホビットの冒険」をはじめとした物語で語られるとおりだ。
 これは余談だが,TRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」などには,ホビットとよく似た存在としてハーフリングという種族がいる(トールキンの著作の中で,ハーフリングはホビットの別名としても使われているが)。またTRPG「ソードワールドRPG」にも,ホビットに相当するようなオリジナル種族,グラスランナーが登場する。ホビットとそれらの違いを比べてみるのも面白いだろう。

 なお,ホビットという名称の語源については明らかになっていないが,丘などに穴を掘って生活すること,臆病なこと,ホビットというネーミングの語感から,ウサギ(Rabbit)からきたのでは? とする説もあるようだ。真偽のほどは定かではないが,なかなかに面白い説といえるだろう。  もっとも,一杯のおいしいスープがあった場合,その製法や材料についてアレコレ言及するのではなく,単においしいことを味わうのがホビットの流儀。あまり語源がどうこうと論議していると,ホビット達から野暮だと言われてしまうかもしれない。

 

次回予告:スレイプニル

 

■■Murayama(ライター)■■
毎年毎年,大規模な花見の幹事を担当しているMurayama。今年も花見シーズンが近づいてきて,「今年はどうするの?」「早く予定を決めてくれ」と,友人達からオファーが殺到しているそうだ。最近,近年まれに見る多忙っぷりに苦戦しているMurayamaだが,そんな中でそれらのオファーをどう処理しようかと,日々頭を悩ませているという。
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