レビュー
戦略モードとイージーモードで上下に対象を広げた,全部入り大戦略
大戦略パーフェクト3.0
» ストラテジーゲームというよりミリタリーモチーフ全般に詳しく,大戦略シリーズ歴代作品はほとんどプレイしてきた田村眞治氏が,新機軸満載の「大戦略パーフェクト3.0」をレビューする。ルールのほとんどについて有効/無効を設定できる作品だけに,なかなか「こうだ」とは決めづらいが,新規要素の意義を中心に語ってもらおう。
現在最も大戦略らしいシリーズの最新作
「パーフェクト」は基本的に,従来製品のルール/システムを引き継ぎつつ新機軸を盛り込んでいき,プレイヤーの好みでルールを選べるという,いわば“全部入り”の系譜だ。その意味で,常に新システムを切り拓いていく“ナンバー大戦略”よりむしろ大戦略らしい。
そんな系譜の最新作たる「大戦略パーフェクト3.0」は,必然的に歴代最多の登場兵器数を誇り,その数なんと1400種類以上。収録されている兵器には,試作で終わったものや,まだ完成していない最新型,そして従来兵器の派生型など,実にさまざまなものが含まれる。
種類が多いのは兵器ばかりではない。生産タイプに関しても,日本/アメリカ/ロシアなどの定番はもちろんのこと,新生イラクやサウジアラビア,アルゼンチン,ブラジルといった国々まで設定されていて,総計で45か国になる。これでまだ満足できなければ,兵器エディタや生産タイプ編集機能を使って,独自の兵器や生産タイプも作成/設定できるようになっている。
そうしたコンストラクション要素として,今作の新機軸は「地形エディタ」だ。これを使って各種兵器にとっての移動コストや戦闘への影響,生産能力や補給能力といったパラメータを設定すれば,独自の地形を作成できる。マップエディタと併用すれば,既存の地形だけでは片付かない戦場をデザインできる。
マップのグラフィックスに関しても,標準のものに加えて宇宙戦争風,ファンタジー風,戦国時代風の三つが用意されており,いかにも各種エディタを活用して,オリジナルのシナリオを作ってくださいという雰囲気である。
標準の地形グラフィックスでは,見慣れた,大戦略らしい地形グラフィックスでプレイできる |
「ファンタジー風」では,基地が魔法陣になったり,都市が平屋建てばかりになったりする |
こちらは「戦国風」。基地が城になり,山地や丘陵,森なども雰囲気が変わっている |
異色なのが「宇宙風」。ここまでくると,どこが陸地でどこが海やら,かなり分からない |
物資と補給線の概念で,
兵站を考慮した作戦立案が必要に
こうした要素は,シリーズ従来作品では再現されていなかった。都市や工場,空港などを占領すれば,次のターンから自動的に補給や補充,生産などが可能になっていたのだ。
これに対して,今作には物資と補給線の概念を含む「戦略モード」が追加された。戦略モードでは,物資を生産できる地形(建物)から自軍のほかの建物まで,道路などのルートが確保されることで,初めて「補給線」が確保され,物資が輸送されることになる。物資は都市などに備蓄可能で,物資があるところでしか補給はできない。
したがって,例えば相手陣営の近くで都市をぽつんと一つだけ確保した状態では,ルートが確保されていないので物資が届かず,補給はできないことになる。従来のようにただ「点」としての都市を占領するだけでなく,それらをつなぐ「線」をイメージしなければならない。
補給線の能力は道路の整備状況で変わる。従来,道路は1種類しかなかったが,このルールに合わせて3段階の区別が導入され,細い道路は「整備」によって太くできる。もちろん,太くすればそれだけ輸送量が多くなり,前線に送れる物資の量が増える。
ある都市で物資が足りない場合,近くの都市からの分配も可能だ。前線近くの都市の,物資備蓄状況をこまめに確認し,足りなくなりそうなら,早めに分配を受けるよう指示をする必要がある。都市に物資の備蓄が十分にあれば,その都市までの補給線が一時的に途切れたとしても,補給は行える。
このように,常に物資の流れを意識して,どこの都市を占領すれば補給線が確保できるかを考えながら作戦を立てるのが戦略モードでのプレイだ。また逆に,敵陣営の補給線を遮断することで,戦況を好転させることも可能だ。より戦略性の強いプレイが実現したといえよう。
仮設基地や施設破壊の影響など,さまざまな新要素
まず,工作部隊を用いて平地や丘陵などに仮設基地を建設できるようになった。従来の大戦略パーフェクトシリーズではトーチカを設営し,戦域防衛に利用できたが,仮設基地はトーチカより堅固であると同時に,ユニットの修理や補給が可能な施設だ。前線に仮設基地を建設することで,使い勝手の良い攻撃策源地が持てるわけだ。
また油田や原発など特殊な地形は,破壊すると周辺に影響を及ぼすようになった。油田であれば炎上し,隣接したヘックスの建物にダメージを与える。一方原発を破壊すると,ターン開始時にその周辺5ヘックス以内の部隊にダメージが及ぶ。
さらに,建物を破壊する能力を併せ持った兵器で,建物に篭もった敵部隊を攻撃した場合,その部隊だけでなく建物に対してもダメージを与えるようになったので,都市や原発,油田などにいる部隊を攻撃する際には,建物の耐久度なども考慮に入れる必要がある。
このように,戦略モードによる物資概念だけでなく,さまざまな要素が加わっており,兵站要素以外でもより高度な作戦立案が楽しめる。
初心者にも優しいルール設定が可能
シンプルモードでは,「同じような兵器がたくさんあってどれを生産すればよいのか分からない」という,初心者にありがちな悩みを解決するため,兵器の種別ごとにユニットを1種類に絞ってある。ルールに関してはベーシックなものに限定,それによって使用しなくなった操作パネルを省いて,見やすくしてある。さらにシナリオも,専用のチュートリアルやアドバイス付きのものを用意することで,操作方法や作戦立案の基本から,分かりやすく学んでいけるのだ。
シンプルモード各フェイズの開始時には,そのフェイズで何をするかなどの解説が入るという,初心者に優しい設計がなされている |
シンプルモードで利用する生産タイプは,兵器の種別ごとに1種類ずつのユニットが決め打たれているので,悩まずに済む |
シンプルモードから通常モード,さらに戦略モードとステップアップしていくことで,より高度なプレイを無理なく楽しめるようになる。それが,大戦略パーフェクト3.0の狙いである。指定した陣営の命中率と回避率を一律で上げられるチューン機能で,大きく難度を調整することすら可能だ。
ルールの採用/不採用は最初に細かく設定できる。例えば「生産カウント」をなしにすれば,ユニットは無慮次ターンに完成する |
ゲーム開始時のマップ設定で陣営の「チューン」を指定すれば,命中率と回避率を一律で調整可能。ハンディキャップ設定などに利用できる |
ゲーム全体の進行タイプとしては,「Win III」と同じく単体のマップをプレイする「ノーマル」,同一の部隊を率い,複数のマップを続けて攻略していく「キャンペーン」,そして「現代大戦略200x」シリーズのように,マップの状況や作戦指示書,勝利条件などが特別に設定された「シナリオ」があり,それぞれに違った楽しさがある。
ノーマルではそのマップをどのような部隊編成と作戦で攻略するか,一から考えて実行する。シナリオでは,その状況においてどのような作戦が最適か考え,キャンペーンでは,マップをクリアしていくことで情勢がどのように展開していくかを見つつ進める。さらに,経験値を積んだ「マイ部隊」をどのように使うかといった,RPG的な楽しみ方もできるのだ。
このように大戦略パーフェクト3.0は,より高度なストラテジー要素を求める上級者はもちろん,初心者や中級者でも楽しめる,幅の広い作品,現時点における大戦略シリーズの集大成とも呼ぶべき1本に仕上がっているといえよう。
「シナリオ」では「現代大戦略200x」シリーズと同じく,マップごとに状況解説と勝利条件などが細かく設定されている |
「キャンペーン」には,通常のもののほか,チュートリアル入りキャンペーンも含まれており,初心者でも安心してプレイできる |
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