「こんな時間に働くことってないですよね(笑)」と同意を求めつつ始めた浜村氏
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CEDEC 2006では,連日1コマずつ,9:30から基調講演が組まれている。2日めとなる2006年8月31日は,
「未来に向けて広がるゲームビジネスの可能性〜プロデューサー時代到来〜」と題して行われ,エンターブレイン代表取締役社長である
浜村弘一氏が登壇した。
氏はまず,2004〜2005年にかけての,ゲーム機とゲーム機用タイトルの販売状況を示し,市場は成長しているとした。このあたりは,初日に行われた基調講演とかなり重複した話なのだが,それほどまでに,ゲーム機中心の開発者達は市場の冷え込みを感じていて,明るい材料を求めているのだとすれば,なかなか興味深い。
浜村氏の示した,2004〜2005年の市場動向。全体としては約9%の伸びを示しており,「2006年は,プレイステーション3の延期がありながら,すでにミリオンセラーが3本出ています。年末に次世代機が登場すれば,この数年で最高の結果になる可能性があります」とのことだ
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据え置き機と携帯機の市場比率(ハードとソフトの合計)
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さて浜村氏は“Lite”と合わせてすでに1000万台が販売されている「ニンテンドーDS」が市場を牽引したとし,ゲーム機の主役は据え置き機という常識が覆されたとも述べる。これまでは「任天堂のゲームしか売れない」という課題があったが,それは最近発売された「ファイナルファンタジーIII」が,初週で50万本を売り上げたことで,この状況は変わるのではないかという見通しも示した。
続いて氏は,いわゆる次世代ゲーム機についての予測を以下のとおり行っている。
「Wii」は「2006年末の大本命で,間違いなく売れる。ただし,コントローラが特殊なので,今までのゲームの文法が染みついている人には違和感があるかもしれない」とのこと。発売時の価格は2万円を切ると見ているそうで,「ゲームボーイアドバンスと同じような売れ方をしていくのではないか」だそうだ
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プレイステーション3に関しては「ブランドイメージは非常に高く,映画のような最高級のグラフィックスを楽しみたい人は多い。だが,いささか高すぎるのと,Blu-rayは高解像度テレビが前提ということもあって,プレイステーション2のときのDVD-ROMドライブのようにはハードを牽引しない。2007年末ごろに真価を発揮し出すのではないか」とした
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Xbox 360については「北米と英国での成功で,完全敗北はなくなったが,日本やドイツなどで売れていないと“市場のムラ”克服が課題。Microsoftの目標は,iTunes Music Storeのような独自のサイトで,音楽やゲームをダウンロードさせるディストリビューションビジネスにあると見る。その意味で,Windows Vistaとの連携が始まり,リビング(Xbox 360)と書斎(PC)を取りに行く,プレイ環境への勝負に持って行くだろう」という
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■「オンラインゲームは次世代ゲーム機に匹敵」
オンラインゲームを入れると,国内のゲーム市場は右肩上がりで成長しているとするスライド
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とまあ,4Gamer的にはあまり深く言及できない「ふむふむ」という話が続いたわけだが,ここで浜村氏は,オンラインという市場がもう一つの柱になるとして,「最近注目しているのはソフトバンクのGプラネット構想」と続けた。「ロビーがあって,そこにたくさんのゲームがぶら下がっていくようになっていて,『ゴルフだいすき!』のキャメロットをはじめとして,コンシューマで有名なクリエイターが参加しているんですよ。Yahoo! BBの会員数とボーダフォンの利用者まで考えると,これはもう,次世代機に匹敵するインフラといっていいんじゃないかと」(浜村氏)。
ネットワークにつながっていることが前提のPCや携帯電話は,課金システムや,プラットフォームの垣根を越えたアクセスなど,ビジネススタイルが自由である点を武器に,大きく成長していくと説明した。
では,PCや携帯電話の台頭によって今後どうなるのか。浜村氏は,経済産業省の主導でゲーム開発者へのアンケートを行った結果とするグラフをいくつか示してみせた。それが下のグラフだが,注目すべきは一番左だろう。
どういった“クリエイター”にアンケートを取った結果なのか不明なので,「ある程度責任ある回答」なのか「現場レベルの希望」なのかは分からないが,PCでゲームを作ってみたいと考えている開発者が,全体の50%以上いるのは,正直驚きである。先日のテクモによる大々的な発表などを見るに付け,国内メーカーもPCゲーム――多くの場合は“オンライン”という枕詞が付くものの――を無視できなくなってきているように感じるが,この50%強の何割かでも,本腰を入れてくれるなら,国内PCゲーム業界は間違いなく活気づくはずだ。
左から「どのプラットフォームでゲームを作りたいか」「誰に向けてゲームを作りたいか」「開発に関して,不足しているのはどのような人材か」を示したスライド。いわゆるゲーマー層以外も見据えている開発者の姿が見える中央,そして「どこの業界でもまとめ役は不足しているのね」と思わせる右のグラフも,それはそれで面白い
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以上を踏まえ,浜村氏は「もはやプラットフォーマー(プラットフォームを握るメーカー)にビジネスを縛られる時代は終わった」と宣言する。「これまでは,プラットフォームを選択し,依存していくやり方が主流でしたが,今後はすべてのプラットフォームに可能性があるのです」という。企業に属しているか,個人かは関係なく,適切にアイデアとリソースを割り振ることができれば,誰にでもミリオンセラーになれるチャンスがあるとのことだ。
厳しいことを書かせてもらえば,全体として,どこかで聞いたような話の寄せ集めという印象はぬぐえない。オンラインゲームビジネスの注目例として,ネットワークインフラと携帯電話を持つ企業という,極めて特殊なものを挙げたことが,どれだけの意味を持つのかも,正直疑問が残る。とはいえ,
初日の基調講演を引き受ける形で,改めて日本の開発者に,ゲーム機以外の存在を意識させたこと,それ自体は相応に価値があるのではなかろうか。(佐々山薫郁)