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ライセンス供与主体から,海外での直接運営へ。韓国mGame CEO Yi-Hyung Kweon氏に聞くmGameの今後
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印刷2006/12/22 22:05

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ライセンス供与主体から,海外での直接運営へ。韓国mGame CEO Yi-Hyung Kweon氏に聞くmGameの今後

 G★2006(2006年11月9日〜12日)直後の11月16日,韓国mGameのCEO,Yi-Hyung Kweon氏にインタビューする機会を得た。Kweon氏はこの8月に,弱冠36歳にして,「熱血江湖オンライン」など数々のMMORPGヒット作を擁する会社のトップに就任した。
 そのKweon氏が捉える,韓国オンラインゲーム業界の現在,そして,海外展開を主軸としたmGameの今後について聞いてみたので,余すところなくお届けしたい。北米や中国,日本といった国のパブリッシャに自社作品のライセンスを供与するのみならず,支社や開発スタジオを設置して直接サービスを狙うという,実に現在の韓国オンラインゲームパブリッシャらしい課題が,話の中心だ。

■「MMORPG離れ」は,いまに始まった話ではない

mGame CEO Yi-Hyung Kweon氏
4Gamer:
 はじめまして。本日はよろしくお願いします。G★における各社の出展内容や業界動向を前提にすると,いささかネガティヴな話題から切り出すことになって恐縮なのですが,韓国では現在,「MMORPG離れ」が進んでいると聞きます。MMORPGを主力ラインナップに据えるmGameとして,これをどう捉えていますか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 こちらこそ,よろしくお願いします。確かによく「MMORPG離れ」と言われるのですが,実はいまに始まったことではないのです。ゲームの開発には時間がかかりますし,ジャンルごとの流行の周期がありますので,MMORPGの人気が落ちてきて,だんだんとカジュアルゲームのほうに人気が移るという現象はあったのですけれど,現在は両ジャンルとも小康状態にあります。

4Gamer:
 カジュアルゲーム人気も一段落といったところですか。

Yi-Hyung Kweon氏:
 ええ。また,以前は定額制の課金が主流でしたので,オープンβテストだけをプレイして,俗に「β族」と呼ばれる方も大勢いましたが,現在は部分課金(※アイテム課金などを指す)が増えてきましたので,これがカジュアルゲームでない,大作ゲームの成功につながっています。

4Gamer:
 韓国と日本の市場の違いを,大まかにどう捉えていますか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 なかなか難しい質問ですね(笑)。私が知っている限りで答えさせていただきます。韓国では現在,大作ゲームがあまり出ていない状況です。なぜかというと,プレイヤー数の増加度合いを超えて,ゲームタイトルの供給が過剰になっているからです。韓国の市場は,いわば飽和状態にあります。
 最近の状況をより詳しく述べると,プレイヤーからの要求レベルが高まっていることが指摘できます。グラフィックスや運営サービスといった,クオリティに対する要求ですね。だから,“そこそこ”のゲームでは成功できない。それが現状です。

4Gamer:
 なかなか動きづらそうな状況というわけですね。

Yi-Hyung Kweon氏:
 そうです。そうした,韓国市場の成長限界ゆえに,韓国のゲーム会社は最近,グローバル化,世界へ,ということを叫んでいるわけです。具体的には日本や中国,アメリカなどに進出する企業が増えています。

4Gamer:
 確かに今回のソウル取材では,そうした話題をよく耳にしました。

Yi-Hyung Kweon氏:
 そして日本市場は,韓国市場に比べてプレイヤー一人当たりの単価が高いと分析しています。そして,そのいわゆる客単価の高さに比べると,運営費用などは相対的に低くなっています。ですから,中国市場などとともに有望な市場と見ているのです。
 とりあえず日本にも,たくさんのオンラインゲームが進出していますが,日本のプレイヤー達がどういったものを求めているのか,まだよく分かっていないという印象があります。

4Gamer:
 率直な意見ですね。少々驚きました。

Yi-Hyung Kweon氏:
 例えば韓国であまり興行成績の良くなかったものが,日本で人気が出たりとか。そういった現象がありますので,これからも研究が必要だと思っています。
 全体的に見ますと,韓国というのはコンテンツの消費サイクルが短く,パッと人気が出て,サッと退く印象があります。それに比べると日本では,時間をかけてジワジワと人気が出てきて,ジワジワ冷めていく。そういった傾向があると分析しています。

mGameの現在の海外展開タイトル一覧(左)と,2007年の展開タイトルについて(右)。アイテム課金の普及などにより大作が復権するという,氏の意見と連動したものか


■パブリッシングに必要なのは,ゲームポータルの充実

4Gamer:
 先ほど,韓国ではゲームが飽和状態だというお話が出てきました。今後それを打破する作品が出てくるとしたら,それはどんなジャンルでしょうか。また,mGameとしてその飽和状態にどう対処することを考えていますか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 先ほど飽和状態と言ったのは,プレイヤーの増加度合いを作品の供給状況が上回っているという意味です。ですから,あくまでプレイヤー数は増加しているのであって,完全に頭打ちという意味ではありません。
 そうしたなかで,最近はゲームポータルサイトの重要性が指摘されています。いまや,開発会社が独自にサービスを提供して成功するという事例はほとんどありません。
 もちろん,ゲームのクオリティは重要ですけれども,それに加えて運営ノウハウや顧客サービスなどが重要ということです。

4Gamer:
 ポータル,ですか。

Yi-Hyung Kweon氏:
 ですからmGameとしても,ゲームポータルを強化する戦略で臨みます。ゲームに対するポートフォリオを構築し,mGameにいままでなかったジャンルを開発/発掘する。そういった戦略で市場を攻略しようと考えています。

4Gamer:
 なるほど。そのポートフォリオと密接に関わってくるのですが,今後有望なジャンルについてはいかがでしょう?

Yi-Hyung Kweon氏:
 先ほど,作品にはサイクルがあると言いました。現在はカジュアルゲームの人気が高いのですが,それを踏まえると,いまたくさんのRPGが開発されていますので,やがてRPGの大作でヒットが出ると予想しています。

4Gamer:
 同じく先ほどのお話で,日本と並んで有望とのことだった中国市場ですが,mGameの“中国ブランチ”ともいうべきKRG Chinaに,今後期待するミッションは何でしょうか? 中国パブリッシャへのライセンシング事務や開発の拠点に留まるのか,近いうちにそれ以上の動きがあるのか,という論点です。

Yi-Hyung Kweon氏:
 KRG Chinaの任務は,開発とサポートです。しばらくはそれを中心に進めていく予定ですが,その理由は中国で自社サービスを始めるには,規制が多いことです。それは,いろいろ間接的な形で経験しました。
 現在の目標としては,2008年に北京オリンピックがありますので,そのころには規制の緩和が進むのではないかと予想しつつ,2008年に中国でも自社サービスを開始したいと思っています。

4Gamer:
 同様に北米ブランチについて,こちらはパブリッシングとライセンシングの両方を行っていますよね。今回の取材でお話を聞ける新作(「風林火山」「HoLic」「熱血江湖Strikers」)は,mGame自身,つまり北米支社がパブリッシングを行うのでしょうか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 北米支社については,準備がまだ完全に終わってはいない状態です。北米におけるサービスついては,現在良いパートナーを探しているところです。それが見つかれば,そこと組んで事業を進めるのがmGameの方針ですから。
 1年ほどかければ,パートナーも見つかって,北米支社としての事業ノウハウなども蓄積されると思います。それを見据えて,新作についても原則的に自社のゲームは自社でパブリッシングしたいと考えています。

4Gamer:
 mGame作品の,北米での反応はいかがですか? 好調でしょうか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 現在北米支社がパブリッシングしている「ナイトオンライン」は,アメリカ以外で開発されたゲームとして,同時接続者数で1位になっています。サービスそのものは,K2 Networkが提供しています。
 mGameが独自にサービス提供しているのは,「アレスオンライン」と「英雄オンライン」で,「熱血江湖オンライン」は現在準備中です。前二者については2006年からサービスしていますが,ハイペースで収益を上げています。
 既存のラインナップのゲームを続々と投入していけば,アメリカ市場でも大きなシェアを確保できるのではないかと見ています。

4Gamer:
 市場に続いて開発者の話なのですが,最近韓国企業の作品開発に,欧米の開発者が関わる例が増えてきたように思います。北米に進出したところで,そういった方法論に興味はありますか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 アメリカ,日本,中国などに進出していますので,現地で成功するために現地の開発者を迎え入れて開発することは,当然の流れと受け止めています。

4Gamer:
 実例は少ないと思うのですが,欧米の作品を韓国で展開するといった可能性についてはどうでしょうか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 現在も,ヨーロッパ,アメリカ,日本,中国などからゲームが入ってきていますが,韓国市場向けにカスタマイズするためにはコミュニケーションが重要です。
 うまくコミュニケーションの取れるパートナーさえいれば,いつでもそうした事業展開は考えられますし,そうしたいと思います。

4Gamer:
 過日韓国で行われた事業発表でも出たとおり,mGameが「グローバルゲームパブリッシング」を標榜するときに,最も大切にしている精神を教えてください。

Yi-Hyung Kweon氏:
 全世界に,mGameの名前を通して楽しさを提供すること,です。各国にポータルサイトを構築し,そこで各国に合わせたゲームを同時多発的に開発して,それぞれの国に合ったゲームを同時に提供する。そうしたスタンスで進めています。

資料上段:創業から,海外ライセンサー,グローバルパブリッシャへというmGameの進路を示す図版(左)と,ポータルサービスを重視した今後のパブリッシング方針の説明(右)
資料下段:mGameの海外におけるライセンシングタイトル(左)と,直接のパブリッシングタイトル(右)


■開発会社との関係を強化する狙いは?

4Gamer:
ところで,mGameは最近,開発会社である韓国KRG Softとの関係を強化したと聞いています。その狙いはどのあたりにあるのでしょうか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 KRG Softとは5,6年にわたって,一緒に仕事をしています。当初は,KRG Softがデベロッパ,mGameがパブリッシャと,いわばクライアント関係で見ていたわけです。というのも,かつてKRG Softはパッケージゲームに強く,mGameはオンラインゲームが強かったからです。
 そうしたわけで共同開発をベースに協力しており,その結果生まれたのが「ドロイヤンオンライン」であり,熱血江湖オンラインというわけですね。

4Gamer:
 ええ。ごく大まかなところは存じています。

Yi-Hyung Kweon氏:
 そうした関係を長らく維持してきたのですが,熱血江湖オンラインをスタートさせたときに,KRG Soft株の52%をmGameが買収しました。
 最近になって,その持ち分比率を69%にまで引き上げています。最終的な目的は何かといいますと,収益の改善です。

4Gamer:
 KRG Softを中心として,mGame作品の開発人員に,最近変動があったというお話を聞きます。それが長期的な開発スケジュールに影響を与えることはありませんか?

Yi-Hyung Kweon氏:
 その「変動」についてですが,今年(2006年)8月末に人員の入れ替わりがありました。mGameの事業は開発力がカギですので,2,3か月中に新しい人材を補充しております。

4Gamer:
 では最後に,mGameが今後日本市場に向けてどういった事業を展開するか,日本のゲーマーにどういった要素を提供するお考えかを聞かせてください。

Yi-Hyung Kweon氏:
 mGameとしては韓国で検証されたゲームを持っていますので,そうした作品を日本でもサービスしていくというのが,もちろん基本になります。
 現在のところ,ゲームポータルとしてはまだ弱い部分があるのですが,2007年の初めくらいには,いろいろな作品が集まっているゲームポータルとしての機能を強化します。それに伴ってコミュニティ機能なども強化していくつもり……なんだよね?(エムゲームジャパン 広報担当のほうを向いて)

4Gamer:
 分かりました。そこから先はエムゲームジャパンマターということで(笑)。本日はありがとうございました。

mGameの新規タイトル,「HoLic」(左)と「風林火山」(右)


ちなみにこちら,Kweon氏の愛犬である「室長」さんと,その執務室。執務室はmGame本社社屋の裏口にあり,室長さんは社員のみんなに親しまれているとか
 開発人員の離脱をめぐる顛末は,韓国内を中心に多くの人の気を揉ませたのだが,12月11日の記事でお伝えしたとおり,続編となる「熱血江湖オンライン2」(仮題)を含め,「熱血江湖」に関する商品化権/販売権のいっさいはmGameの手に収まった。ビジネスとして見た場合,これでほぼ終息したと見るべきだろうか。
 「LOST ONLINE」の日本市場における予想外のヒットなど,日韓のオンラインゲーム市場の嗜好は,ときになかなか興味深い違いを見せる。Kweon氏の,いわば謙虚な市場認識の背景には,そうした事実があるのだろう。
 mGameが,従来のビジネスモデルである海外パブリッシャへのライセンス供与から,自社ブランチを積極展開して自前で運営する「グローバルゲームパブリッシング」へと歩みを進めるとき,直接の顧客サービスであるポータルサイトの充実を目指すのは,ある意味必然といえよう。いまやゲームポータル自体は新規な試みでもなんでもないわけだが,その世界各地での展開が,mGameにとって実際に必要な段階が来たというわけだ。
 そうした,積極的な海外進出でやがて直面するのは,言うまでもなく国ごとの文化や嗜好の違いだ。各国にゲームポータルと開発スタジオを置いて,それぞれの国に合った開発を進めるというKweon氏の発言が,それへの回答である。
 実際,LOST ONLINEのローカライズ作業は,mGame本社に多くを負ったものではあるが,クエスト内容などを含め,かなり積極的なアレンジだと聞いている。KRG Chinaに関してかつて記事にしたとおり,今後は各国に置かれた開発スタジオが,現地向けのアレンジメントを積極的に展開していくのだろう。日本を含め,各国でどのような試みがなされていくのか,ゲームとビジネス両面で興味の尽きないところである。(Guevarista)


  • 関連タイトル:

    Crash Battle

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    Pop Stage

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    熱血江湖SOCCER(旧題 熱血江湖Strikers)

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