レビュー
“フルスペック版G92”の実力を検証する
ZOTAC 8800GTS 512MB PCIE
XFX PV-T88G-YDD
» NVIDIAが新たに発表した「GeForce 8800 GTS」は,“あの”「GeForce 8800 GT」と同じG92コアを採用した上位モデルだ。GeForce 8800 GTにプラス1万円強という,悩ましい価格帯で登場することになる新製品には,果たしてどれだけの価値があるだろうか?
今回4Gamerでは,PC PartnerのZOTACブランド(以下,ZOTAC)製となるリファレンスクロック採用モデル「ZOTAC 8800GTS 512MB PCIE」と,PINE TechnologyのXFXブランド(以下,XFX)に属するクロックアップモデル「PV-T88G-YDD」を,それぞれ販売代理店のアスクとシネックスから入手したので,さっそくその実力に迫ってみたい。
ZOTAC 8800GTS 512MB PCIE PC Partner(ZOTAC) 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected] 予想実売価格:4万円台後半(2007年12月11日現在) |
PV-T88G-YDD メーカー:PINE Technology(XFX) 問い合わせ先:シネックス(販売代理店) [email protected] 予想実売価格:5万2000円前後(2007年12月11日現在) |
ストリーミングプロセッサは従来比33%増の128基
コア&シェーダクロックも歴代最高
さらに,GeForce 8800 GTS 640/320と比べると動作クロックも大幅に引き上げられており,とくにコアクロックとシェーダクロックはGeForce 8800 Ultraをも上回る,歴代最高の水準にまで引き上げられている。逆にいうと,メモリ周りが弱点となる可能性を抱えているわけだが,このあたりの“バランス調整”が,実際のゲームにおいてどういう結果を生むかが,本稿の焦点となるだろう。
下に示したのは,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」で,ZOTAC 8800GTS 512MB PCIE(左)とPV-T88G-YDD(右)をチェックしたところだ。貸し出しスケジュールの都合で,前者はVersion 0.1.1,後者は0.1.3での確認となったため,前者に一部表示されていない部分があるのはご容赦いただきたい。前者はリファレンスどおりのクロック,後者はコア678MHz,メモリ1972MHz相当,シェーダクロック1700MHzにクロックアップされているのが分かる。
ベンチマーク方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.0準拠。とくに断りがない限り,以下はカードの製品名でなく,GPU名で表記するので注意してほしい。また,グラフ中はスペースの都合で「GeForce 8800」の表記を省略する。
Inno3D Geforce 8800 GT 2スロット仕様の静音モデル メーカー:InnoVISION Multimedia 問い合わせ先:興隆商事(販売代理店) [email protected] 実勢価格:3万6000円前後(2007年12月11日現在) |
EN8800GT/G/HTDP/512M リファレンスデザインの8800 GTカード メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) [email protected] 実勢価格:3万8000円前後(2007年12月11日現在) |
8800GTS メモリ640MB版の貴重な選択肢 メーカー:Albatron Technology 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected] 実勢価格:5万1000円前後(2007年12月11日現在) |
多くの場面でGeForce 8800 GTXに肉薄
ゲームタイトルによっては大きく上回る場合も
ベンチマーク結果の考察に入ろう。グラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)の総合スコアをまとめたものだ。まず確実にいえるのは,GeForce 8800 GTS 512とGeForce 8800 GTS 640では,まったく勝負になっていないということである。
「標準設定」の結果だと,GeForce 8800 GTS 512はGeForce 8800 GT比で確実なスコアの向上が見られ,そのスコアはリファレンスクロックでもGeForce 8800 Ultraに迫るほど高い。一方「高負荷設定」になると,メモリのバス幅や搭載容量のハンデが響いて,GeForce 8800 GTXに離されていく。これがGeForce 8800 GTS 512の限界であり,メモリパフォーマンスがモノを言うタイトルでは,不利な局面が出てきそうだ。なお,クロックアップモデル(以下,GeForce 8800 GTS OC)も傾向は同じ。高負荷設定時にGeForce 8800 GTXレベルで踏みとどまっているあたりは,クロックアップの効果と見て取れるだろう。
では,実際のゲームタイトルだとどうなのか。グラフ3,4はCrysisのGPUテスト(Benchmark_GPU.bat)実行結果だが,標準設定でGeForce 8800 GTS 512がGeForce 8800 GTXを上回っている点に注目したい。純粋なGPUの処理能力勝負では,やはりGeForce 8800 GTSの高い動作クロックがモノを言うようだ。一方,高負荷設定時は,メモリバス幅の制約が大きく影響してしまう。1920×1200ドットではGeForce 8800 GTS 640にも歯が立たないほどだ。ただ,高負荷設定で1024×768ドット設定時に40fpsを超えている点は,大いに評価していいとも思われる。
参考までにCPUテスト(Benchmark_CPU.bat)の結果も示しておきたい(グラフ5,6)。おおむねGPUテストの結果を踏襲しているといえる。
同じくFPSから,「Unreal Tournament 3」(Version 1.1β1以下,UT3)の結果をグラフ7にまとめた。低解像度ではCPUがボトルネックとなり,GPUの性能差が現れにくいが,いずれにせよ今回用意したGPUなら,すべて快適にUT3をプレイできるだろう。
スコアを分析すべく1600×1200ドット以上に目を向けると,GeForce 8800 GTS 512のパフォーマンスはGeForce 8800 GTXに一歩届かないといったところだ。
FPS 3タイトルめは「Half-Life 2: Episode Two」(以下HL2EP2)である。HL2EP2でも,低解像度では標準設定,高負荷設定ともCPUボトルネックによる頭打ちが見られる(グラフ8,9)そのため,高解像度に目を向けることになるが,標準設定だとGeForce 8800 GTS 512はGeForce 8800 GTXを超え,高負荷設定では一歩譲る成績となる。もっとも差はわずかであり,GeForce 8800 GTS 512とGeForce 8800 GTXはほぼ互角と見ても間違いではないだろう。
最近の3Dゲームタイトルでは,珍しくフィルレート勝負になりやすく,いきおいメモリパフォーマンスがスコアを大きく左右する「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)の結果をまとめたのがグラフ10,11である。
案の定というかなんというか,GeForce 8800 GTS 512は,標準設定の1024×768ドットにおいてもGeForce 8800 GTXに置いて行かれる。さすがにGPUそのものの性能がまったく違うため,GeForce 8800 GTS 640の後塵を拝するようなことはないが,描画負荷が高くなるにつれて,アドバンテージが少しずつ失われていくのも確かだ。
お次はRTS「Company of Heroes」の結果(グラフ12,13)だ。同タイトルにおけるCompany of HeroesにおけるGeForce 8800 GTSのパフォーマンスは極めて良好で,高負荷設定で解像度設定を引き上げていっても,リファレンスクロック動作のGeForce 8800 GTS 512がGeForce 8800 GTXに対して有意な差を維持している。
同じような傾向は,「RACE 07: Official WTCC Game」でも見て取れる(グラフ14,15)。低解像度だとCPUのボトルネックが見られるが,高解像度でスコアの落ち込みが見られないのは,メモリパフォーマンスに勝る上位モデルではなく,GeForce 8800 GTS 512のほうである。描画負荷が軽く,メモリパフォーマンスも影響しないようなタイトルでは,GeForce 8800 GTS 512の高速なGPUコアが最大限のポテンシャルを発揮するといってよさそうだ。
GeForce 8800 GT比で消費電力は確実に増加
2スロット仕様GPUクーラーの効果は相応にあり
GeForce 8800 GTは,従来のGeForce 8800シリーズと比べて大幅に消費電力が下がった一方,1スロット仕様のリファレンスクーラーが冷却能力に問題を抱えるという点が注目を集めた。それに対してGeForce 8800 GTSは,性能が引き上げられ,GPUクーラーが2スロット仕様になったわけだが,これは使い勝手にどう影響してくるだろうか。それを確かめるべく,システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した。
測定に当たっては,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,3DMark06を30分間実行して最も消費電力が高かった時点を「高負荷時」としている。なお,先に示した表2の注釈で述べたとおり,消費電力測定と後述する温度測定に当たっては,リファレンスデザインを採用するASUSTeK Computer製の「EN8800GT/G/HTDP/512M」を利用している。これは貸し出しスケジュールの都合と,InnoVISION Multimedia製「Inno3D Geforce 8800 GT」がオリジナル仕様のGPUクーラーを搭載していること,二つの理由によるものだ。
各時点の消費電力をスコアとしてまとめた結果がグラフ16だが,ストリーミングプロセッサの数が増え,動作クロックも引き上げられたことで,消費電力はGeForce 8800 GTから大きく引き上げられている。高負荷時の差は実に30Wで,決して無視できるレベルではない。それでも,GeForce 8800 Ultra/GTXより低いのは救いだが,一方でGeForce 8800 GTS 640を上回っていることも憶えておきたい。
続いて,グラフ16時点におけるGPU温度を参考までに計測した結果がグラフ17である。ここでは,室温20℃の環境において,システムをPCケースに組み込まないバラックの状態で,GPUモニタリングツール「ATITool 0.27β2」からスコアを取得した。
2スロット仕様のGPUクーラーを搭載するだけあって,GeForce 8800 GTSのGPU温度はGeForce 8800 GTを下回った。また,筆者の主観になってしまうのをお断りしたうえで続けると,動作音は「電源投入直後の数秒間こそかなりうるさいものの,システムが起動するとかなり静か」という印象だ。なお,クロックアップモデルとなるGeForce 8800 GTS OCのほうがGPU温度が低いのは,最大負荷時に若干耳障りになるほど,ファン回転数が高めに自動設定されたのが影響していると思われる。
5万円の“ウルトラハイエンド”で価格性能比は上々
これから最上位を狙うならアリ
ZOTAC 8800GTS 512MB PCIEの製品ボックス。DVI-I−D-Sub変換コネクタ×1,コンポーネント/Sビデオ出力ケーブルが付属する |
こちらはPV-T88G-YDDの製品ボックス。DVI-I−D-Sub変換コネクタ×1,Sビデオ出力ケーブル,ロスト プラネット製品版が付属する |
クロックアップモデルについていうと,スコアは総じて妥当といえ,あとは予算次第になるだろう。
GeForce 8800 GTX搭載グラフィックスカードが登場して1年以上が経過した2007年12月現在にあって,「これからGeForce 8800 GTXクラスの性能を持つグラフィックスカードを買おうと考える人がどれだけいるのか」という疑問は拭えない。また,コストパフォーマンスだけならGeForce 8800 GTのほうがより魅力的で,その分不利な位置にあるのも否定できないが,“5万円で購入できるウルトラハイエンド”として,GeForce 8800 GTS 512には十二分に価値がある。ウルトラハイエンドにあこがれつつ,コストが理由で踏み出せなかった人にとっては,間違いなく魅力的な製品だ。
- 関連タイトル:
GeForce 8800
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