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[SIGGRAPH]CGとインタラクティブ技術の学会&祭典「SIGGRAPH 2012」が開催に。初日に行われた「Game Worlds」の模様をレポート
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印刷2012/08/07 16:58

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[SIGGRAPH]CGとインタラクティブ技術の学会&祭典「SIGGRAPH 2012」が開催に。初日に行われた「Game Worlds」の模様をレポート

SIGGRAPH 2012の会場は,E3と同じ「Los Angeles Convention Center」だ。さすがに建物への飾り付けはE3と比べると地味で華やかさに欠けるが,開催規模は通常の学会と比べて桁違いにでかい
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 今年もSIGGRAPHの季節がやってきた。北米時間の2012年8月5〜9日の期間で開催される「SIGGRAPH 2012」は,今年で39回目の開催となる。
 もともとは,「コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議と展示会」をテーマに学会としてスタートしたSIGGRAPHは,今もその学会としての役割が続いているのだが,1990年代以降,開催規模が大きくなってきており,今や商業イベント的な側面も帯び始めているのだ。
 学会といいながら,今年の使用会場はE3(Electronic Entertainment Expo)と同じ「Los Angeles Convention Center」(ロサンゼルス・コンベンションセンター)なのだから,その規模の大きさも,なんとなくイメージできるのではないだろうか。

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「SIGGRAPH 2013」の開催はアナハイムとアナウンスされている。ちなみに,昨年,カナダ バンクーバーでの開催が好評だったことから,「SIGGRAPH 2014」の会場はバンクーバーに決定しているとのことだ
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カンファレンスの開催から2日遅れて展示会場が開幕するため,カンファレンス開催初日は,展示会場のブースをまだ設営している状況だった
 ここ数年,4GamerでもSIGGRAPHのレポートを行っているが,それはなぜかというと,SIGGRAPHで発表されるさまざまな展示内容や最新技術が,ゲームと非常に関連深くなってきているためである。

 例えば,8月2日にNVIDIAが日本で説明会を行った,Epic Gamesの「Unreal Engine 4」に採用されているリアルタイム大局照明(グローバルイルミネーション,Global Illumination)技術は,昨年の「SIGGRAPH 2011」で発表された「Interactive Indirect Illumination Using Voxel Cone Tracing: An Insight」(ボクセルコーントレーシングを用いたインタラクティブインダイレクトイルミネーション)の内容を,ほぼそのまま実装したものだ。
 また,「Direct3D」(DirectX)と双璧をなす,オープンなグラフィックスAPIである「OpenGL」も,毎年,SIGGRAPHで最新版が披露される。
 さらには,「Wii」「Kinect」「PlayStation Move」などに代表されるジェスチャー入力システムや,「ニンテンドー3DS」「PlayStation Vita」などに応用されている拡張現実(AR)といったものも,SIGGRAPHでは10年近く前から定番の発表テーマであるなど,ゲームに採用されているありとあらゆる技術のプロトタイプが発表されているのだ。

 その開催初日には,ゲーム開発技術のショートセッションを3つ集めた「Game Worlds」が行われているので,その模様をレポートしてみたい。

会場の様子。日本のメディアは,専門機関誌や業界誌の関係者が中心で,あまり多くない。しかし,一般参加者として,日本の大学や日本のゲームスタジオからの参加者が多いので,そこかしこから日本語が聞こえてくるほどだ
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「Just Cause 2」の広大なオープンワールド形成に生じた問題とは


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Emil Persson氏(Senior Graphics Programmer, Avalanche Studios)
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Just Cause 2と過去の著名なゲームとで,ゲームワールドの大きさを比較したスライド。左上の一番小さいのが「グランド・セフト・オートIV」で,一番大きいのがJust Cause 2だ
 最初のセッション「Creating Vast Game Worlds」に登壇したのは,Avalanche StudiosのEmil Persson氏。発表テーマは「Just Cause 2」の開発秘話である。日本ではスクウェア・エニックスから発売されているJust Cause 2は,オープンワールド型の三人称視点アクションゲームだ。

 近年のゲームとして最大級のゲームワールドを構築したJust Cause 2は,ゲームワールドの大きさは,32km×32kmにも及ぶ。この広さは,面積比で「Far Cry2」(9km×9km)の約13倍に相当するのだ。

 Persson氏によれば,Just Cause 2では,遠方の描画境界が5kmに設定されており,遙か遠方まで見渡せることがウリになっているという。そのため,通常の描画手法では,負荷がかなり大きくなってしまうだけでなく,想定外のエラー(アーティファクト)が生じるようになってしまった。
 視界は遠方に行けば行くほど広がり,多くの物が見えることになる。それがたとえ小さく密集して描かれているとしても,そういった高密度なビジュアルこそがパノラマビューの美しさに直結するため,手が抜けないとのこと。

 ここで発生する問題の1つは浮動小数点演算の精度不足である。遙か遠方のジオメトリ情報に対する演算は誤差が生まれやすく,演算の順序によっておかしな動きをしたり,描画自体が崩れたりしてしまう。そのため,Just Cause 2では,通常のゲーム開発よりも演算順序への最適化を重視しているとのこと。
 とはいえ,遠方の描画になればなるほど,描画オブシェクトが増大していき,相対的に取り扱うジオメトリ量も増大していく。Persson氏いわく,Just Cause 2では,頂点情報の圧縮と削減や,描画コールの最適化などを行うことでジオメトリ負荷への対策を講じているそうだ。

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基礎的な話題になるが,浮動小数点演算にはいくつかの落とし穴がある。絶対値が違いすぎるもの同士の加減算や,絶対値が近いもの同士の加減算は,欲する解精度との誤差が大きくなるのだ。浮動小数点演算では,乗除算よりも加減算のほうがシビアなことが多いため,計算順序も重要になってくる
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 そんなJust Cause 2だが,レンダリングの工夫で最も見ために分かりやすく,映像効果としても良い結果をもたらしたのは夜景である。

 昼間のパノラマビューは,太陽光からのライティングが支配的で,遠方における動的光源のライティング効果をカットしてもビジュアル効果への影響が少ない。一方で,夕暮れや夜景などでそれをやってしまうと,遙か遠方の街明かりや車両が放つライトがまったく光らなくなってしまい,真っ暗な遠景になってしまうことになる。

 Just Cause 2でも,遠方においては,光源による実ライティングを行っていないが,光源位置に光源を模したポイントスプライト(パーティクル)を描くことで,街明かりなどを再現している。遙か遠方までを見渡せる美しい夜景は,意外にシンプルな技術で実現されていたのだ。

遠方の街明かりは,ポイントスプライトによるフェイクだが,ポストエフェクトが掛かると本当に光があるように見える
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「SSX」のステージ制作にはプロシージャル技術を導入


Caleb J. Howard氏(CG Supervisor, Electronic Arts Canada)
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 続いて2つめのセッション「Asking the Impossible on SSX」は,「SSX」(PlayStation 3 / Xbox 360)をテーマにしたものとなる。SSXは,スノーボードを題材にしたスポーツアクションゲームだ。こうしたスポーツゲームに限ったことではないが,ゲームメカニクス(ゲーム性)自体がある程度固定化されていて,ステージのバリエーションや敵のバリエーションでゲームプレイのボリューム感を演出するというタイトルは少なくない。SSXのようなゲームの場合は,ロケーションの豊富さ,コースの面白さが重要になってくる。

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最初期のプロトタイプ・コース生成ツール。設定できるパラメータは少なく,調整スライダーが2つだけだったとか
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 SSXは,同ジャンルを代表する人気作だが,開発予算はそれほど多くなく,セッションに登壇したElectronic Arts CanadaのCaleb J. Howard氏によれば,「10コース分の開発予算で300コースを作れ!」という予算感だったそうだ。
 そこで開発チームは,山の起伏を適当なノイズ関数をもとにして算術合成する,ごく基本的なプロシージャル手法によるプロトタイプを初めに作成したという。

 これである程度の手応えを得た開発チームは,地球上の起伏を凹凸化した容量48GBものNASAの衛星地理学データを入手し,それをもとにコースの起伏生成を行う手法へと着手していく。この手法は概ねうまくいったのだが,NASAの地理学データは地表の凹凸情報しか記録されておらず,言い換えれば2D状のデータだったのだ。フライトシミュレータのような,地面に直接インタラクトしないゲームであればこのままでもいいが,SSXは雪面を滑るゲームなので,情景として起伏があるだけでは面白味に欠けると判断したとHoward氏は述べる。

NASAの地理学データを用いて,コースをプロシージャル生成するアプローチに移行したそうだ
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NASAの地理学データをボクセルデータ化した様子。この画面で約24km四方となる。1ボクセル当たりの一辺は30mほどで,中間データとなるが約280MBの容量とのこと。解像度は7100万ボクセルだ
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 そこで発想を転換し,NASAの地理学データの凹凸情報をポリゴン化して地形メッシュデータを生成するのではなく,山を直方体の集合で表したボクセルデータにして,そこへ「コースを掘る」アプローチにツールを改変した。
 ただし,丸い穴があくドリルで掘ったのでは,人工的な丸いトンネルになってしまう。そうならないように対処するため,開発チームは,デザイナーがデザインした「それっぽい穴モデル」プロファイルで掘るような工夫を盛り込むことにした。穴を掘る場合には,このプロファイル自体も回転変形させるなどして,掘られたコースが表情豊かなものになるようにしているとのこと。
 この場合,山のモデルがとても粗いジオメトリ解像度なのに,掘られたコースが解像度の高いジオメトリ構造となってしまうが,これについては問題ないと捉えたようだ。

 そのほか,生成された地形やコースに対して,よりスリリングなゲーム展開が楽しめるように,カーブ部分にはバンク角を付けたり,崖にはひだ状のエッジを付けたり,平坦面にはランダムノイズの凹凸を付加したりといった,知識ベースの装飾もプロシージャル技術で加えられている。

穴を掘ることで,立体的なコースの生成を実現したとのこと
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ボクセル化した山に対して穴を掘るという発想を採用。ボクセルならば,逆に“盛る”ことも可能だ
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穴を掘るのには,独自開発した穴プロファイルを使用し,“それっぽく”見せるために知識ベースの装飾も付加している

 現在,「リアルタイムによるプロシージャルコンテンツ生成には限界がある」という風潮がまだまだ強いが,Howard氏は,SSXにおいてプロシージャル技術を用いてステージ構築をしたことで,開発効率が劇的に向上した,とポジティブに捉えていた。
 このSSXのように,オフラインベースというか,レベルデザイナーやアーティスト達が,自分の感性を反映できる余地が多い「プロシージャル技術を応用したツール」に対する抵抗は少なくなってきているようだ。


ネットワーク対戦を前提とした「ソウルキャリバー5」のキャラクターカスタマイズ実現技術


谷 史郎氏(バンダイナムコスタジオ 開発スタジオ P&Sディビジョン プログラマー)
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 3つめに紹介するセッション「Character Customization of SOULCALIBUR V In-Depth」では,バンダイナムコスタジオの谷 史郎氏による「ソウルキャリバー5」(PlayStation 3 / Xbox 360)におけるネットワーク対戦を前提としたキャラクターカスタマイズ実現技術の解説が行われた。
 見ためだけの要素にはなるが,3D格闘ゲームで愛用キャラクターのビジュアル面がカスタマイズできるというのは,ホットなフィーチャーの1つだろう。

 ソウルキャリバー5では,「愛用のキャラクターにアクセサリーを付ける」といったカスタマイズ以外に,テクスチャを自在に拡大縮小回転して貼り付けたり,色を変更したりすることも可能となっている。

 しかし,変更後のテクスチャを対戦相手と相互に反映させる必要があり,プレイヤー間でテクスチャをそのままやりとりするのは,ゲーム開始時間までの待ち時間を増加させることになるので得策ではない。
 そこで,ソウルキャリバー5では,対戦相手のテクスチャに対するエディット情報をメタデータ(何をどのようにいじって,どこにどうやって貼り付けたかといった情報)として共有し,実際のテクスチャ適用処理を各自のローカルマシンで行うような仕組みとなっている。

ソウルキャリバー5では,テクスチャレベルでのカスタマイズが可能だ
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 このとき問題になるのが,それぞれのマシンで行うテクスチャデータの再圧縮処理と,テクスチャの不連続エッジがテクスチャ適用時に露呈することだ。
 前者は,CPUではなくGPUを用いることで高速に行えるようになっているだけでなく,独自のDXTテクスチャ圧縮最適化アルゴリズムを採用することで,再圧縮したテクスチャに対する品質維持も実現しているとのこと。
 後者は,テクスチャを貼り付ける場所のUV情報にGPU側のテクスチャフィルタリングが余計な介入をしないよう工夫することで対処したと谷氏は述べていた。

テクスチャデータの再圧縮アルゴリズムは,id SoftwareとNVIDIAとの共同研究による「Real-Time YCoCg-DXT Compression」に基づいている
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テクスチャデータの再圧縮をGPUで行うことにより,CPUで実行した場合よりも10倍近く高速化されたという
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ソウルキャリバー5では,テクスチャマッピング時に起こるフィルタリング処理を目立たなくする工夫を適用している。上の画像で,左が対処前,右が対処後となる
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 というわけで,開催初日に行われたGame Worldsの模様をお届けしたが,今年も4Gamerでは,SIGGRAPH 2012のゲームに関連した展示や技術発表をレポートしていくつもりなので,楽しみにしていてほしい。
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