Universal ABITブース前の大きなポスター
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古くは「BH6」など,最近ではFatal1tyブランドのゲーマー向けマザーボードなどで知られていたABIT Computer。ここ数年で経営状態が悪化し,結果として2006年1月に,Lenovo製ノートPC「ThinkPad」製造委託先などとして知られる大手OEMメーカーのUniversal Scientific Industrial(以下USI)に買収されたのだが,正直,日本ではこの数年パッとしなかったため,この事実を知らない人のほうが多いかもしれない。
そんなわけで,COMPUTEX TAIPEI 2006は“USI子会社としてのABIT”のお披露目となったのだが,会社名が「Universal abit」に変わったのを期に,同社はコーポレートロゴを,すべて小文字の「abit」に切り替えている。
■来年にはゲーマー向け周辺機器などを投入?
Javon Yeh氏(Marketing Director, Marketing Dept., Universal abit,中央)
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Universal abitのマーケティングディレクター,Javon Yeh(ジェヴォン・ヤー)氏によれば,同社は製品ラインを整理し,すでにマザーボードとマルチメディア製品に集約しているとのこと。以前は,Johnathan“Fatal1ty”Wendel氏がプロデュースするものなど,Radeonシリーズを扱っていた同社だが,すでに撤退しているという。
abit,目下のフォーカス対象
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「ただし,ゲーマー向けマザーボードどとしての,Fatal1tyシリーズは続行します。abitは,オーバークロックファンには『MAX』シリーズ,そしてゲーマーにはFatal1tyと,別々の製品を提供していきます。混同している人も多いですが,同じようにハイエンドのパーツを求めても,オーバークロックファンとゲーマーでは求めるものがまるで違うからです」とはYeh氏。この発言には,うなづいた読者も少なくないのではなかろうか。ちなみに同氏は,一般ユーザー向けの「Guru」マザーボードも続行し,さらには,HDMI出力を標準でサポートする,いわゆるデジタルホーム向けマザーボードなども,積極的に展開していくとしていた。
左:「Fatal1ty FP-A9D」。Intel 975X ExpressベースでCore 2 Duo/Extremeをサポートする。ゲームプレイ時に不安定にならぬよう,とくに電源周りの冷却に配慮され,I/Oインタフェース部に排気ファンを用意する機構「OTES GT」を搭載。さらに,ノイズ対策を行った「AudioMax」ドーターカードによるサウンド入出力が可能だ
右:「Fatal1ty AN9 32X」。nForce 590 SLIを搭載。OTES GTやAudioMaxはこちらでもサポートされる
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Intel 975X Express搭載のCore 2 Duo/Extremeを対応,オーバークロックファン向けマザーボー「AW9D-MAX」。これはガス冷装置とのセットでデモが行われていた。ちなみにキャッチコピーは「武道」だそうで,侍のイラストがイメージキャラクターになるそうだ
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Core Duoに対応し,マザーボード側でHDMI出力が可能なマザーボード「IL-80MV」。ゲーマーにはあまり関係のない製品ではあるが,HDMI出力をマザーボード側でサポートした例は珍しいので特別に紹介したい。ちなみにabitでは,Core 2 Duo対応モデル「IL-90MV」を現在開発中とのこと
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ゲーム関連製品の存在を示唆する,デモの一部
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また,COMPUTEX TAIPEI 2006のabitブースで流れていたデモに「Professional Gaming Peripheral」(プロゲーマー向け周辺機器)とあったので聞いてみると,これは来年以降,プロダクトラインを拡充する予定を示したものと。現時点では,それこそFatal1tyロゴを関するかどうかも決まっていないようだが,ポータブルメディアプレイヤーや情報家電と同じタイミングで,
ゲーマー向けの“何か”をスタートさせるそうだ。
Yeh氏いわく「『ABIT』は,世界で初めて日本メーカー製コンデンサを全面的に採用するなど,品質に定評のあるブランドでした。その地位は一度崩れ落ちていますが,今度はUSIという,とてつもない規模の製造能力と品質基準を持った企業がバックについていますから,万全の品質は確保できる。そのうえで,“楽しさ”(fun)を加えて,ユーザーの皆さんに提供していきたいと考えています」とのこと。
iDome D500。入力は基本的に光角形端子(アナログもあるが,その場合はA/Dコンバートがかかる)で,内蔵するデジタルアンプにおける処理まで,全段デジタル処理が行われる。サブウーファがセットになった2.1chモデルにおいても,入力インタフェースは光角形と,なかなか凝ったスペックといえる。価格は2chで150ドル,2.1chで250ドルになる予定
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あと何手か先までの具体的なビジョンが見えなければ,コメントしがたいというのが正直なところではある。ただし,当初の軸となるマザーボードとマルチメディア製品のうち,後者の第1弾製品となる2ch(あるいは2.1ch)スピーカーシステム「iDome D500」は,入力段から音声出力までの全段フルデジタル伝送という意欲作で,すでに恵安,サードウェーブといった国内代理店も付いているとのこと。そういう意味では,少しずつ国内でもabit復活の声を聞くことになるのかもしれない。
とにもかくにも,復活第1弾が成功しないことには,ゲーマー向けデバイスも画餅に帰する。最後にYeh氏が力強く放った「abit is back」の一言に強く期待して,今後の展開に注目していきたい。(佐々山薫郁)