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えっ? そんな運営のしかたってアリ? プレイヤーとGMとが一緒に企画を考えるという独特すぎる運営スタイル。「WYD: EPISODE II」運営インタビュー
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印刷2011/05/21 00:00

インタビュー

えっ? そんな運営のしかたってアリ? プレイヤーとGMとが一緒に企画を考えるという独特すぎる運営スタイル。「WYD: EPISODE II」運営インタビュー

画像集#034のサムネイル/えっ? そんな運営のしかたってアリ? プレイヤーとGMとが一緒に企画を考えるという独特すぎる運営スタイル。「WYD: EPISODE II」運営インタビュー
 「WYD: EPISODE II」(ウィド:エピソード II)は,ハンビットユビキタスエンターテインメントがサービス中のMMORPGだ。先日(2011年4月26日),このWYDにおいて,「With Your Desituny II」から「WYD: EPISODE II」へのタイトルリニューアルを含む,3年ぶりの大規模アップデート(関連記事)が行われた。

 今回は,そんなWYDに現在深く関わっている,タイトルディレクターの長谷川達也氏と,企画/運営スタッフの田幡昌幸氏から,本作の近年の動きや,今回のアップデートの狙い,そして現在の運営スタイルについて,詳しい話を聞くことができた。
 どうやら現在のWYDでは,小規模なタイトルであるがゆえのフットワークの軽さを生かした,ユニークな運営が行われているらしい。本稿ではインタビューで聞けた内容をまとめていくので,WYDを知らない人もぜひ一読してみてほしい。なお,本作のタイトルプロデューサーである中尾圭吾氏は,韓国出張中で今回は同席が叶わなかったことをここに付記しておく。

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長谷川達也氏
2010年初頭からGM“ロウル”として運営に携わり,現在はWYDのタイトルディレクターを務める
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田幡昌幸氏
2010年春に新卒で入社。現在WYDの企画/運営スタッフに。GM“サイ”としてプレイヤーにはお馴染み
GM“ロウル”とGM“サイ”
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「WYD: EPISODE II」公式サイト


 そもそもWYDがどんなゲームかご存じない人のために,その特徴を簡単に説明しておこう。
 WYDは韓国JayImpactで開発されたMMORPGだ。昨年スタートした台湾を含め,現在は世界8か国でサービスが行われている。日本でサービスを開始したのは2006年2月であり,現在までに5年以上サービスが続けられている息の長いタイトルとなっている。戦闘は敵をクリックすることで行っていくオーソドックスなタイプ。ゲーム内にはMMORPGとしての基本的な要素が備わっているが,中でもプレイヤーに人気が高いのは各種PvPコンテンツだ。

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 3Dグラフィックスを使用したMMORPGでありながら,動作させるのに必要なスペックがかなり低いことも,本作の特長の一つ。古いPCやネットブックなどでも動作し,クライアントソフトのダウンロードサイズも166MBと非常に小さなものとなっている。



サービス低迷,問題が山積みという状態から,プレイヤーとGMが密接に交流する,独自の運営スタイルを確立するまで


 5年以上も運営が続けられており,現在でも熱心なプレイヤーに支持されているWYDだが,そのサービスの歴史は決して順風満帆ではなかったという。2009年頃には不正ツールの氾濫,サポートの回答の遅延,プレイヤーの望むイベントが提供できない,などといったさまざまな問題が重なり,サービスが低迷してしまったそうだ。

 そんな事態に際して,新たなプロデューサーとなった中尾氏の号令のもとで実行されたのが“GMのインゲーム常駐サポート”だ(関連記事)。運営スタッフが出社中,常にゲーム内にログインし続けることで,プレイヤーからの質問や報告事項に随時対応できる体制を用意したのである。

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 そのときから実際にGMとして業務を行ってきたのが,今回話を聞いた長谷川氏と田幡氏だ。
 このころはまだ長谷川氏も田幡氏も,GMに就任してからの日が浅く,さらに引き継ぎの期間も少なかったので,WYDのゲーム内容についてあまり詳しくなかったのだそうだ。
 問題は頻発,サービスは低迷,さらにゲームに関する知識もない……まさに逆境である。

 そんな逆境の中,WYDチームは“いい意味で”開き直った。とにかく状況を打開するために,既存プレイヤーの力を借りることにしたのである。

 不正ツールについてはプレイヤーからその知識を教えてもらうことにした。ゲームの細かい仕様が分からなかったら,これもベテランプレイヤーに教えてもらった。どんなイベントをやれば喜ばれるか分からなかったので,プレイヤーに一緒に考えてもらうことにした。難しい不具合が出たときは,プレイヤーにお願いして検証を手伝ってもらった。

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 当時のことを長谷川氏は「最初は本当に大変でした」と振り返る。「ですが,それを続けたことによって,現在ではWYDの長所となっている“プレイヤーと運営との二人三脚による運営スタイル”を作り上げることができたんです」

 こうして,前代未聞の手段で再起に乗り出したWYDの運営は,再びに軌道に乗り,ゲーム内で定期的に“オンライン座談会”が催されるという,風通しの良い運営体制を整えることに成功したのだ。

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町の中の様子。銀色の鎧を着ているのがGMキャラクター
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アップデートによりゲーム内容は進化した。レベルは“自動狩り”で上げ,夜には激しく楽しく大規模PvP。それが現在のWYDのスタイル


 先ほども少し触れたが,本作において人気が高いコンテンツはプレイヤー同士で戦い合うPvPだ。月曜日から金曜日の夜にはチャンネル間の戦争である“前哨戦”,土曜日には“王国戦”,日曜日の夜にはそれらの結果を受けた“攻城戦”“ギルド戦”と,毎晩必ず大規模なPvPが行われており,これに多くのプレイヤーが参加しているのだ。
 近年のMMORPGには少なくなったが,ゲーム内のかなり広い範囲でプレイヤーキル(PK)が可能となっているところも本作の特徴的な部分の一つ(PKが不可能なチャンネルも用意されている)。対立勢力のプレイヤーを倒すと“名声値”というポイントが得られるため,規模の大小を問わず,対人戦が盛り上がっているというわけだ。

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 以前のアップデートで実装された“CCモード”も,現在のWYDを特徴付けているフィーチャーの一つだ。これは簡単な指示をセットしておけば,自動的に戦闘を行って,一定範囲内の敵を狩り続けてくれるというもの。いわゆる“BOT”を想起させる機能だが,「“放置狩り”ではアイテムのインベントリがすぐに一杯になってしまうので,基本的には経験値を稼ぐことしかできません(長谷川氏)」とのことで,これによってゲーム内に大きな問題が発生したりということはないようだ。

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 もちろん難易度の高いマップやレイドボス,PvPなどに挑む際には,プレイヤーがキャラクターを直接操作する必要がある。
 なので現在のWYDでは,日中はクライアントを起動したまま“放置”して経験値を稼ぎ,夜は直接操作してレイドや対人戦などに挑戦する――といったプレイが,標準的なスタイルとして確立している。キャラクターのレベル上げは“CCモード”で行えるため,多忙な社会人でも無理なくプレイを続けていけるのだ。

 時間がなくても楽しめて,プレイの中身はハードなPvPがメイン。現在のWYDが「社会人向けのハードボイルドMMORPG」を謳う理由は,つまりこういうことなのである。



3年ぶりとなる大規模アップデートは,プレイヤーとGMが一緒になって作り上げたもの


 地道な努力を重ね,運営体勢を刷新することに成功したWYDチームが,次に取りかかったのは,結果的に3年ぶりとなった“大規模アップデート”を実施することだった。

 今回,ゲームタイトルの変更を含めた大型アップデートを行うために,長谷川氏は,座談会などでプレイヤーからもらっていた要望と,運営チームの希望を組み合わせてプランを作成。そしてそれを持って今年(2011年)の初頭に韓国へ飛び,WYDの開発チームへと直接届けてきた。

 「プレイヤーから伝わってきていた本作に対する要望の中で多かったのが,“レベルの上がりが遅く,転職のハードルが高すぎる”という意見でした(長谷川氏)」。なので4月26日に行われた今回のアップデートではまず,初心者&中級者のためのコンテンツの改善にこだわったそうだ。初心者向けのクエストはリニューアルして,獲得可能な経験値やゴールドの量を約8倍に増加させた。さらに上位職に転職するための条件も緩和したので,現在のWYDは,まだキャラクターを育成中のプレイヤーや,育てかけのキャラクターを持っている復帰プレイヤーにとって,より遊びやすいものになっているのだという。

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 また,このアップデートでは,新しいキャラクターを作成すると,GMの管理する“初心者ギルド”へと自動的に加入する機能も追加されている。これは「開発元に無理を言って作ってもらった(長谷川氏)」機能だという。先述のようにWYDではGMが常駐しているので,この機能を使えば初心者プレイヤーはすぐにGMにコンタクトがとれて,ゲームに関するアドバイスをリアルタイムで受けることができるのだ。

 「GMとしてゲームにログインしていても,席を離れている場合など対応できないときは“○○中”とタグを表示しています。もちろん,その間にプレイヤーさんから何かメッセージが来ていた場合は,少し遅れてでも“どういったことでお困りですか?”と対応させていただいています(田幡氏)」とのことなので,何か不明な点があれば遠慮なくGMに聞いてみるといいだろう。

 もちろん今回のアップデートには,既存のプレイヤーが満足できるような要素も含まれている。その中でも大きなものが「王国戦」だ。新たなPvPコンテンツである王国戦は,ギルドの垣根を越えてプレイヤーが2チームに分かれて戦うという,これまでにない規模を誇るものとなっている。

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王国戦の様子
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 オンラインゲームにおいて,大がかりなアップデートを行う際には,不具合などがないかどうかテストを行う必要がある。今回WYDでは,オープンなテストサーバーを用意して,そこに現役プレイヤーにログインしてもらって,最終調整を行ったそうだ。「本当に,プレイヤーさんと運営チームで一緒に作ったアップデートなんです(長谷川氏)」
 そのようにして作り上げたアップデートのさらに細かい情報は,こちらのページにまとまっているので,興味がある人は見てほしい。

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アップデートで追加された新規コスチュームの数々。世界観に即した正統派のものや,和風のもの,さらにはデザインの奇抜なものもある
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乗用動物の見た目は,アイテムを使うことで変更できる。「ファニーな見た目なのに,実は中身はドラゴン」なんてことも可能
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今回のアップデートと直接の関係はないが,長く運営を続ける中でグラフィックスやUIは進化を遂げている(左の画像が過去のUI,右の画像が現在のUI)。しばらくWYDをプレイしていない人ならば,その進化っぷりに驚くことだろう
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小規模タイトルならではのアットホームな雰囲気を実際に体験しにきてほしい


 最後に,まだWYDをプレイしたことのない人や,プレイを休止している人に対して,長谷川氏と田幡氏からメッセージをいただいたので掲載しよう。

「WYDはプレイヤーの皆さんと運営の距離が非常に近く,一緒になってゲームを作り上げているタイトルです。時間がなくても楽しめる内容になっていますので,社会人の皆さんにも,もっともっとプレイしてほしいと思っています。運営体制の立て直しを始めてからこれまで,プレイヤーの皆さんにたくさんのことを教えてもらって,やっとここまでたどり着くことができました。現在のWYDは,GMが常にゲーム内に存在する,アットホームな雰囲気がウリのゲームです。気軽にオンラインゲームを楽しみたい方がいましたら,ぜひ遊びに来てください。お待ちしています。(長谷川氏)」

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「私自身がそうだったのですが,“PvP”や“対人戦”と聞くと,いろいろとキツいことを連想してしまって「何となくヤダな……」と思ってしまうことがあると思います。ですがWYDのPvPは違うんです。飛び込んでみて分かったのですが,WYDのゲーム内には,たとえギルドが違っても「WYDで遊んでるやつはみんな仲間だ!」という雰囲気があって,プレイヤー間の横の繋がりがとても強いんです。そのため,PvPも殺伐とした空気にならず,スポーツのような感覚で楽しめるんですね。この雰囲気と面白さを,多くの人に知ってほしいと思っています。ぜひプレイしてみてください。ゲーム内でお待ちしています。(田幡氏)」


 この5月,WYDでは毎週土曜日 21:00から,GMとプレイヤーが一緒に狩りにいくイベント「土曜はGMと狩らないか?」が行われている(関連記事)。これは初心者から上級者まで,誰でも参加可能な企画であり,「狩りに出る前,最初の1時間は“どこに行きたい?”とか“何をやりたい?”という感じで,皆さんと相談をしています(長谷川氏)」という,和気あいあいとしたイベントだそうだ。

イベントの様子
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 田幡氏によれば,このイベントはそもそも初心者限定のツアー企画だったのだという。しかし,それを見たベテランプレイヤーから「初心者だけじゃなくて,おれらとも一緒に遊んでよ! 呼んでくれれば,いつでも付き合うよ!」という声が届き,それじゃあみんなで一緒に遊ぶイベントにしようということになり,いま行われている形にまとまったのだという。プレイヤーと運営スタッフとの距離の近さが窺えるエピソードだ。

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 WYDという作品は以上のように,小規模タイトルとしてのフットワークの軽さを活かした,極めて独特なスタイルで運営が行われているタイトルだ。運営チームとしては,今後ゲームの規模が拡大していったとしても,この持ち味は維持したいと考えているそうだ。

 オンラインゲーム,とくにMMORPGともなると,腰を据えて長時間プレイする必要のあるタイトルが多く,なかなか遊ぶ時間が取れずにプレイを断念している社会人プレイヤーもいることだろう。その点,WYDであれば,時間を取られすぎることなく,ハードボイルドなPvPが楽しめる。社会人にとっては極めて手を出しやすいタイトルだと言えるだろう。

 プレイヤーと運営スタッフとの距離も近くなり,最近のゲーム内の雰囲気は,以前にも増してなごやかなものになってきているという。「以前にはプレイしていたが,今はやっていない」という人は,試しに再開してみてはどうだろう。スクリーンショットからは見えない部分で,ゲーム自体の楽しさが大きく変わっているはずだ。

「WYD: EPISODE II」公式サイト


  • 関連タイトル:

    WYD: EPISODE II

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