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インタビュー
[TGS 2014]なぜLogicool Gはオムロンとキースイッチを新規開発したのか。完全新作キーボード「G910」に隠された“科学”を聞いた
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高速化のためにオムロンと協業
「実測値で」25%高速に打鍵できるRomer-Gスイッチ
G910における最大の特徴となるのが,新開発のメカニカルキースイッチであるというのは論を俟たないだろう。
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それに対してRomer-Gは,Logitechが,日本のオムロンスイッチアンドデバイス(以下,オムロン)と共同開発した,ゲーマーのためのまったく新しいキースイッチである。オムロンはマイクロスイッチやタクトスイッチにおける大手の一社だが,マウスボタンのスイッチはともかく,ゲーマー向けと明確に位置づけられるキースイッチでオムロンの名前が出てきたのは,今回が初めてではないかと思う。
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もちろん,ラバードームを採用したメンブレンスイッチと比べるとしっかりした打鍵感はあるのだが,Cherry MXスイッチとは明らかに感触が異なる。
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そこで,Cherry MXだと約2mm押し込んだところでスイッチが反応するのに対して,Romer-Gでは1.5mmのところで反応するようにLogitech/ロジクールは設定した。あえて短くしてあるわけだ。
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一方の押下圧も,主にプロゲーマーのフィードバックによって決定したそうだ。Barry氏は,「押下圧の異なる複数のスイッチをプロゲーマーやエンジニアに試してもらい,その結果を踏まえ,Cherry MXブランドのキースイッチと同じ(公称45gの)押下圧に設定した」と述べていた。具体的にどの軸を想定したものかまでは教えてくれなかったが,触った感覚で語るなら,おそらくは“Cherry青軸”こと「Cherry MX Blue」だろう。
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キートップだけじゃない。キーの配置や角度も徹底した調査に基づく独自仕様に
TGS 2014の初日にG910が発表されたとき,ロジクールは,キーによってキートップの凹ませ方を変えるFacet Keycap仕様も強くアピールしていた。
一般的なキーボードのキートップは,[Space]キーなど,親指の横っ腹で打鍵するようなキーがかまぼこ形になっているのを除くと,左右にエッジが立ち,中央が丸く凹んだ形状になっている。それに対してFacet Keycapでは,
- メインキーのうち,左手の指で操作することになるキーとカーソルキーは,中央よりも少し奥のところに向かって四辺から切れ込んだ形
- メインキーの左端にある[Tab]や左[Shift],左[Ctrl]といったキーは,左側だけ盛り上がる形
- そのほかのキーは,一般的なキーボードのキートップにある左右のエッジを際立たせた形
が採用されているのだ。
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Barry氏は,G910で,キーボードの左半分をキーパッド的に使うことも想定していると述べていた。実際,[F1]〜[F4]キーのすぐ上に,追加の[G6]〜[G9]キーがあるのは,まさにそういったキーパッド的な用途に向けたものだそうだ。カーソルキーは例外として,キーパッド的に使うとき,左手の指が届く範囲のキートップを大きく弄ってきたという理解でいいだろう。
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「G910では最良のパフォーマンスを得るために数多くのテストを行った。キーボードを操作している様子をビデオに撮影して検討するといったことはもちろん,プロゲーマーなどのユーザーが,キーボードのどこに手を置いているかといったことも,綿密な調査によって調べ上げた。このような科学的な検討の末に決定されたのが,今回のキートップであり,配置なのだ」(Barry氏)。
言われてみれば,パームレストに手を置いた状態だと,一般的な形状のキーボードでは[Space]キーがやや高めに感じられる。それを意識してG910の斜めに落ちた[Space]キーに手を置いてみると,確かにしっかりくるのだ。ロジクールによると,Logicool GアンバサダーであるStanSmith氏が事前にテストしたときも,この傾斜を高く評価していたという。
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また,G710+では[ESC]キーと[G1]キーが横に並んでいたため,「[G1]キーを押そうとして[ESC]キーを押してしまう」ため,[ESC]キーの左隣にあったG-keyは取り除いたという。これもフィードバックを受けての改善だとBarry氏は述べていた。
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「手のひらをパームレストに置いたときに,この溝とG910のロゴの部分が適切なエアフローを生んで,手のひらが蒸れてしまうことを防いでいる」(Barry氏)。
この手のインタビューでは,意図を聞くと「だって格好いいだろう?」と返ってくることが多いのだが,Barry氏の口から返ってきたのがすべて意図と根拠だったのは,正直驚いた。Logitech G/Logicool Gのタグライン(=キャッチコピー)「Science Wins」(日本語では「勝利の方程式」)に偽りなしというか,とにかくサイエンスが盛りだくさんといった印象だ。
フルカラーのLEDライトアップにも
強いこだわりが
Romer-GとFacet Keycapに並ぶ,G910の大きな特徴の1つが,キーを1つ1つ異なる色で光らせられる機能である。
「約1677万色のフルカラーLEDを組み込んだメカニカルキースイッチ」というと,ZF Electronicsの「Cherry MX RGB」や,Razerの「Chroma」が記憶に新しい。とくにCherry MX RGBのほうは,ZF ElectronicsとCorsairが,相当なこだわりを持って共同開発したスイッチだ(関連記事)。
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Romer-Gでは,スイッチとキートップの間にプランジャーのような機構が用意され,その奥に,光を拡散させるためのレンズユニットが搭載されている。このレンズは,Logitechの本拠・スイスにある光学メーカーとの共同開発だそうで,LEDがキートップの中央を光らせ,かつ,光を広く拡散できる設計になっているとのことだ。
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なお,G910ではもう1つ,ユーザー手持ちのAndroid/iOSスマートフォンおよびタブレットと連携できる「ARX Control」(アークスコントロール)という機能があるのだが,これは現在開発中とのことで,デモなどを確認することはできなかった。
Logitech/ロジクールのゲーマー向けキーボードは,一部のモデルで小型液晶パネル「GamePanel LCD」を搭載し,さらにそのソフトウェア開発キット(以下,SDK)が公開されていたが,表示は1バイト文字しかサポートされておらず,それゆえに,日本ではほとんど活用例も生まれなかった。しかし,今度はAndroidやiOS用のSDKがゲームパブリッシャなどへ提供されるとのことなので,日本でも利用例が増えてくることを期待したい。
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以上,G910の発売はもう少し先になりそうだが,オムロンとの共同開発になるスイッチをはじめとして,相当に面白そうなキーボードということは言えそうだ。キースイッチの正体については「それは技術者に聞いてもらったほうがいいだろう」(Barry氏)ということで,またの機会になったが,ARXコントロールの詳細も含め,続報が入り次第,お届けしたいと思う。
ロジクールのG910製品情報ページ
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- ライター:米田 聡
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