レビュー
「MX518の後継機」は,MX518とどこまで同じで,何が違うのか
Optical Gaming Mouse G400
(Logicool Performance Optical Mouse G400)
MX518は,2005年に世界市場で発売となった初期型がそもそも国内販売されなかったり,発売されたときには国内だけ「G3 Optical Mouse」という製品名になったり,2007年に国内だけ販売終了となったり,世界市場で販売され続けていたMX518が国内で“復活”したときには「一般ユーザー向け」扱いになって,国内版だけ「Logicool MX518 Performance Optical Mouse」という製品名になったりと,なかなか波乱に満ちた歴史を歩んできている。
今回のG400も,海外ではG-Seriesの新モデルと位置づけられる一方,国内では「Performance Optical Mouse G400」と名付けられ,“一般PCユーザー向けマウス”たるMX518の後継として登場してきた。波乱の歴史は今なお継続中といったところだ。
まあそんな歴史認識はさておき,定評あるMX518の後継として,PCゲーマーはG400に何をどれだけ期待できるのか。今回は,そのあたりをチェックしてみたい。
本体形状はMX518と99%一致
軽く細くなったケーブルが一番の変更点か
だが,G400に関していうと,少なくとも形状に関する心配はまったくない。ロジクールいわく「G400の金型はMX518と同じ」で,実際に見比べてみても,ぱっと見ただけだと,本体色以外に違いは分からないほどだからである。
一方,重量はケーブル込みで実測133g,ケーブルを重量計からどかした参考値で同106〜109gといったところ。決して軽いとは言わないが,重すぎるわけではない,なんとも微妙な重さだ。MX518の場合,ケーブル込みで144g,ケーブルを重量計からどかした参考値で110g前後だったので,MX518と比べると,ケーブルはかなり,本体は若干の軽量化をそれぞれ果たしている計算になる。
実のところ,G400の外観でMX518から最も変化があったのはケーブルで,見るからに細くなっている。重量の違いも加味するに,より細く,軽いケーブルへ変更されたとまとめてよさそうだ。
本体左サイドに設けられた窪みには親指がすっぽり収まり,右サイドは右サイドで本体前後中央付近が最も凹んだ形になっていて,薬指と小指で押さえやすい。サイズの割に「つまみ持ち」はしやすく,「かぶせ持ち」で深く握ろうとしたときには,大きめの筐体が手のひらにすっぽり収まり,安定感をもたらしてくれる。もちろん「つかみ持ち」も問題なしで,むしろつかみ持ちなら,上位モデルである「Gaming Mouse G500」(以下,G500)よりも持ちやすいくらいだ。エルゴノミクスデザインの採用が謳われているわけではないのだが,どのような握り方でもフィット感は上々といっていい。
握ったとき,親指や小指の真上に屋根のような出っ張りが来る関係で,マウスを持ち上げやすいのもプラス材料。握ったとき,指の触れる部分が見事に窪んだりしているため,実際に持ったとき,実測重量ほどの重量感を受けないのも好印象である。
ただ,かぶせ持ちで深く握ったときに限っては,右サイドに薬指の収まるスペースがなくなってしまい,右ボタン外側のフレーム部に乗せるほかない。これだけは,好みが分かれるかもしれない点として,指摘しておく必要も感じられた。
左サイドと同じくラバーコートが施される右サイドにも指を引っ掛けるための出っ張りがある。凹みは本体前後中央付近が最も大きいので,つまみ持ち時はここをつまむと自然な持ち方になるはずだ |
右サイドの奥は,出っ張りが底面近くまでかなり下がってくるため,深めに握ると,小指を収めるのが精一杯な高さしかない。その場合,薬指は出っ張りの上に乗せるという,やや苦しい対策が必要になる |
本体底面。前後左右中央部に光学センサーを配し,大型のソール2枚が前後両端をからセンサーを挟むように貼られ,さらに本体右サイドに小型のソールが貼られるデザインもMX518と同じだ |
G400のボタン配置 |
■ボタンの作りもほぼ同じ
というわけで,外観はMX518からまったくといっていいほど変わっていないG400だが,ボタン類の操作感も「そのまま」と言っていいデキになっている。
まず,本体の天板と一体化した左右メインボタンは,マイクロスイッチの軽快なクリック感が良好。マウスの手前側(≒後方側)から見て奥側の再度ボタンと,スクロールホイールの手前に置かれたボタンを結んだあたりからクリックはかなり重くなり,反応も悪くなるが,逆にいえば,それよりも奥側(≒前方側)は実用的に押せる範囲となる。
いまその名が上がったサイドボタンは,握ったとき親指から離れていないため,一見すると押しやすそうなのだが,前述した「屋根のような出っ張り」のさらに上部へ配置されている都合上,押そうとすると親指を上方へ動かす必要があり,いきおい,本体のホールド力に影響が出てしまう。
スクロールホイールを回転させたときの感触には若干安っぽさがあるものの,刻みと刻みの間で止まるようなことはない。ホイールがわずかに小さくなって,クリック時のストロークが浅くなった――というか,押すとホイールが本体にめりこむような印象を受ける――ような気もするが,個体差と言われればそれまでといった程度の違いである。
本体左サイドに2つ並んでいるサイドボタン。クリック感自体は悪くないのだが,押そうとするとどうしてもマウス本体から指を離す必要があるのが玉にキズ |
4GamerではG400を2個入手しているが,いずれもホイールの出っ張りが少なく,MX518や,ほかのLogitech製マウスと比べて,ホイールが本体にめり込んでいるような印象を受けた |
SetPointではなく「ゲームソフトウェア8.0」を採用
設定の変更範囲が広がったのは嬉しい
G400というハードウェアを概観し,「結局のところMX518とほぼ同じ」と結論づけて問題ないことが分かったと思うが,実のところ,“中身”はかなりの違いが生じている。おそらく最も重要なのは,MX518で125Hz固定だったレポートレート(ポーリングレート)が,125/250/500/1000Hzから選択できるようになったことだろう。
また,Logitech公式blog「Blog.Logitech」において,グローバルプロダクトマーケティングマネージャーのChris Pate(クリス・ペイト)氏が,エンドユーザーの質問に答える形で,「(G400が搭載する光学センサーは)MX518が搭載していたもののアップグレード版で,リフトオフディスタンス,ネガティブアクセル周り。直線補正の仕様は変わっていない」と述べていたことは押さえておきたいところ。付け加えるなら,G400では,トラッキング解像度の選択幅がMX518の400〜1800DPIから400〜3600DPIへと拡張されているのもトピックだが,これについて氏が「ソフトウェア補間ではなく,ネイティブでの3600DPI対応だ」と述べている点も,重要なポイントとして挙げられそうだ。
G400ではバージョン8.0のLogitech Gaming Softwareが採用されており,先ほど述べたレポートレートやDPI設定などは,本ソフトウェアから変更可能だ。
簡単にいうと,G400の上位モデルであるG500や「Wireless Gaming Mouse G700」(Wireless Gaming Mouse G700)に近い機能が実装されたわけだ。
MX518のSetpointにはなかったマクロも設定可能。ボタンを押した時だけ実行するとか,押している間,反復実行するとか,押してから再度押すまでの間反復実行するとかいった動作が選べる |
チャットマクロ的な使い方ができる「テキストブロック」。任意のボタンにテキストブロックを割り当てると,ボタンを押したとき,あらかじめ入力しておいたテキストを打鍵したのと同じように処理される |
なお,Logitech Gaming Software 8.0の設定内容は基本的にソフトウェアベースで制御されるため,DPI設定やプロファイルは,本ドライバソフトウェアが常駐していないと反映されない。ポーリングレートだけは常駐を解除した状態でも保持されたが,だからといって別のマシンに差し直しても維持されるわけではないので,その点はご注意を。
なお,Logitech Gaming Software 8.0をインストールしない場合,レポートレートは500Hz固定となる。DPIの選択肢は400/800/1800/3600DPIの4段階だ。
センサーの追従性はいくらか向上
ネガティブアクセルは確かにあるが実用範囲内
それではセンサーの挙動を見ていきたい。
今回は,表1の環境で,追従性を検証していく。表の下にはテストにあたって行ったG400の設定とテスト方法もまとめたので,合わせて確認してもらえれば幸いだ。
●G400の設定
- トラッキング解像度:3600DPI
- ポーリングレート:500Hz(デフォルト)
- Logicool Gaming Software 8.0側設定「アクセラレーション」:オフ
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速操作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速操作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速操作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.62」。今回のテストにおいては,マウスに厳しい条件となるよう,ゲーム内の「Sensitivity」設定を「180度ターンするのに,マウスを約 30cm移動させる必要がある」0.25に設定し,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
以上の条件でマウスパッドとの相性を確認した結果が表2である。
この表を見るにあたって注意してほしいのは,MX518をレビューした2008年当時と比べて,現在のテストのほうがマウスに厳しいものとなっていること。なので,MX518のレビュー記事と直接比較して「MX518よりセンサー性能が悪くなってるじゃん」と判断するのは早計だ。むしろ,表2に示したマウスパッド上でMX518を使ったときと比べると,“125Hz対500Hz”効果か,G400のほうが追従性は若干ながらよくなったといえる。
とくに,「Icemat Purple 2nd Edition」など,一部のサーフェス上で高速に振ると,MX518ではかなり大きなネガティブアクセルが生じるのだが,G400においては,ほかのマウスパッドで生じるのと同じレベルで済むようになったのは特筆すべきだ。
前出のPate氏は「どんな速度(でマウスを振る場合)においても,センサーの動きとセンサーの動きとの間のギャップは0.5%以下であり,これはMX518と同じだ。目に見えるようなネガティブ/ポジティブアクセルはない」と説明しているが,概ね言い分どおりと述べていいのではなかろうか。少なくとも,「同じ」と言われているのに,実際には若干よくなっているのだから,歓迎すべきだろう。
なお,「MX518と同じレベル」と断言されている直線補正は,けっこう強めにかかっている印象だ。「G-TF Speed Version」上で,500Hz&3600DPI設定にしたG400を用い,Windows付属の「ペイント」から線を引いてみたところ,かなりまっすぐな線が引けている。
これぞMX518の完全なる後継機
G400は定番マウスの1つとして存在し続ける
しかも予想実売価格は3000〜4000円程度(※2011年8月12日現在)と安価。新たな定番マウスとして,G400は今後長い間,低価格市場における有力な存在であり続けるだろう。
……よかれと思った末での仕様変更であっても,定番と呼ばれるほどに定着した仕様を安易に弄って新モデルへ切り替えてしまうと,その従来製品が心底気に入っているユーザーは,壊れたときの買い直しが効かなくなってしまう。その点で,MX518クラスの定番製品は,仮にセンサーユニットなどの部材が製造終了になって次世代モデルへ移行するときでも,原型を留めたままのほうが望ましいのだ。
それを,Logitechほどの大企業が理解してくれたのは,本当にありがたいことである。
この流れはRazer USAが先鞭を付けたと記憶しているが,もっと広がることに期待したい。定番の光学センサー搭載マウスを二度葬った某社にも,この思いが伝わればいいのだが。
ロジクールのG400製品情報ページ
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