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その名は「Catalyst Omega」。AMD,Catalystの大規模アップデートを発表
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印刷2014/12/09 14:01

テストレポート

その名は「Catalyst Omega」。AMD,Catalystの大規模アップデートを発表

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 日本時間2014年12月9日,AMDは,同社のドライバスイート「Catalyst」の大規模なアップデートを「Catalyst Omega」(カタリストオメガ)として発表した。長い間,「年.月」で表記されてきたCatalystにとっては,筆者の記憶にある限り,初めての特別名称版となるが,果たしてこれは何なのか。今回は,Catalyst Omega解説のために来日したAMDのAdam Kozak(アダム・コザック)氏とTerry Makedon(テリー・マケドン)氏による会見の内容とその後の取材,そして,入手したCatalyst Omegaを用いての検証結果をまとめてお伝えしたいと思う。

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Adam Kozak氏(Senior Product Marketing Manager, Client Desktop, AMD)
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Terry Makedon氏(Senior Manager, Software Strategy, Software Engineering, AMD)


事実上の“Catalyst 14.12”は

PCゲーマーなら見逃せない新機能が多数追加に


Catalyst Omegaの概要
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 さて,まずはその名称の由来からだが,Catalyst Omegaというのは,20以上もの新要素が導入された今回の大規模アップデートに対して,従来と規模感を区別するため,特別に与えられたものだそうだ。「CatalystMaker」の二つ名で知られるMakedon氏いわく「数字で言うなら,Catalyst 14.12だ。来月以降は,また『年.月』表記に戻る」とのことである。
 つまり,今回をもってドライバスイートの名称がCatalyst Omegaに統一されるとか,ましてやギリシア文字の「Ω」が象徴するようにCatalystの名称がこれで使われなくなるとかいうことはなく,「特別版として,いくつかの選択肢から,語呂のいいものを選択した結果」「自分がギリシア人なので,それも選んだ理由の1つ」(同氏)だそうだ。この点は押さえておいてほしい。

Catalyst Omegaには,20以上もの新要素が導入された
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 今回はその中から,注目度の高い順に見ていこう。


●Virtual Super Resolution

 まずは「Virtual Super Resolution」(以下,VSR)だ。これは,負荷の低い3Dゲームを前にしたとき,GPU性能の余裕があるなら,ディスプレイ解像度を超える解像度でレンダリングを行い,高精細な出力を行おうという機能である。

 グラフィックス品質を重視するゲームタイトルの中には,内部的にディスプレイ解像度をはるかに超える高解像度でレンダリングを行っておき,表示する時点で縮小することによって映像の高画質化を図るSuper Sampling(スーパーサンプリング)技術を採用したものがある。たとえば,これをアンチエイリアシングに応用するSuper Sampled Anti-Aliasing(スーパーサンプルアンチエイリアシング,SSAA)が代表的なものだ。VSRは,それと同じことをドライバ側でやってしまおうという大胆な試みであり,付け加えるなら,NVIDIAが先行して実装した「Dynamic Super Resolution」(DSR)に対抗するものでもある。

ドライバ側でディスプレイ解像度を超える解像度でレンダリングを行い3Dゲームの高画質化を実現するというのが,VSRのコンセプトだ
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「GPUダウンスケーリングを許可する」にチェックを入れると,VSRが有効になる
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 対応GPUは,Radeon R9 290シリーズと「Radeon R9 285」。高解像度のレンダリングを行うという,負荷の高い処理だけに,いまのところ対応GPUは上位モデルのみに限定される。また,有効化にあたっては,「Catalyst Control Center」(以下,CCC)の「マイデジタルフラットパネル」−「プロパティ(デジタルフラットパネル)」から「GPUダウンスケーリングを許可する」のチェックボックスを有効化する必要があるのだが,対応ディスプレイの解像度は1920×1080ドットと1920×1200ドット,2560×1440ドットに制限されるので,この点は注意してほしい。対応GPUと対応解像度を持つディスプレイの組み合わせのときだけ,「GPUダウンスケーリングを許可する」のチェックボックスが表示される仕様だ。

VSRが有効になると,ゲーム側の解像度設定に,ディスプレイの実解像度を超えた選択肢が並ぶようになる
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 VSRが有効な状態でゲームを起動すると,ゲーム側で,ディスプレイの標準解像度を超えた解像度を選べるようになり,それらを選択すると,VSRが自動的に有効となる。
 面白い(?)のは,GPUによって選択できるVSR解像度に若干の違いがあることで,1920×1080ドットの解像度のディスプレイに接続したとき,3840×2160ドットを設定できるのは,Radeon R9 285だけだということだ。Radeon R9 290シリーズの場合,選択できるVSR解像度の最大値は3200×1800ドットだった。

 なお,下に示したのは,「Radeon R9 290X」搭載システムを解像度1920×1080ドットのディスプレイにつないだうえで,「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」(以下,新生FFXIV)を実行したところ。左は標準の1920×1080ドット解像度表示で,右は解像度3200×1800ドットの元画像を1920×1080ドットへスーパーサンプリングした結果だが,端的に述べて,違いは一目瞭然と述べていいだろう。

VSR無効時(左)と有効時(右)の比較(※画像をクリックすると,左は解像度1920×1080ドット,右は解像度3200×1800ドットの元画像を1920×1080ドットへスーパーサンプリングした画像を表示します)。髪の毛や杖のディテールに注目してほしい。けっこう強めにシャープネスがかかっているようだ。なお,VSR有効時には一部の影が消えて見えるが,確認したところ,GeForceでも同じ症状があったので,これはテストに用いた新生FFXIVのバージョンによるものと思われる
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●Frame Pacingの改善

 次は「Frame Pacing」(フレームペーシング)の改善だが,Frame Pacingについては,少し解説を加えておく必要があるかもしれない。
 2〜4基のRadeon GPUを用いたCrossFire構成,もしくはAPUと対応GPUを組み合わせたDual Graphics構成においては,ゲームのフレーム(≒映像)が正しく描画されないことがあった。具体的には,ある1フレームが描画されずにその分が“飛んで”しまったり,フレームの描画が壊れていたりといった感じだ。実のところ,この問題はNVIDIAのSLIにもあったのだが,気づいたNVIDIAが先に対処を行い,「競合と違ってマルチGPU構成時の問題は起こらない」と,アピールポイントにしていたという経緯がある。

 もちろん,AMDもすぐに対策を立てた。それがFrame Pacingで,Catalyst Omegaでは,Frame Pacingの改善対象となるゲームタイトルの数が,大幅に増えるとのことだ。

Catalyst Omegaでは,Frame Pacingが有効に機能するタイトルの数が一気に増える
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 4Gamerでは,この「マルチGPUで正常に描画されない問題」が明るみになったとき,少しクドめの検証を行っており,その結果から「CatalystにおけるFrame Pacingは,どうやら個別対応のようだ」と結論付けていた(関連記事)。

 となると,Catalyst Omegaでも,上のスライドに挙がっているタイトル以外では,Frame Pacingが正常に機能しないのでは? という疑念が出てくるのだが,その点についてはKozak氏から説明があった。
 氏によると,Frame Pacingにあたっては,ゲームタイトルの個別対応だけでなく,汎用アルゴリズムによる対応もなされているとのこと。そして,Catalyst Omegaでは前者だけでなく,後者にも改良が入っているため,幅広いゲームタイトルで,Frame Pacingの効果が得られるようになっているはずだという。「ただし,ゲームエンジンによってはマルチGPU構成がうまく扱えないことがあり,そのようなゲームエンジンに対しては,今後も個別に対応していく」(Kozak氏)。
 今回は時間の都合でFrame Pacingの検証は行えていないが,Kozak氏の言うとおりの効果が期待できるのであれば,大いに歓迎できそうだ。


●FreeSyncへの対応

 AMD独自のディスプレイ同期技術「FreeSync」への対応が,Catalyst Omegaで新要素として追加された。FreeSyncは,ディスプレイのリフレッシュレートをGPU側の都合で変更する技術であり,従来のディスプレイにあった「Vsyncを有効化するとカク付きから逃れられず,無効化するとテアリングから逃れられない」という問題への対策になるとされている。

Catalyst OmegaはFreeSyncに対応した。ディスプレイが登場すれば,Radeon Rx 200シリーズとKaveri世代のAMD A-Series APU,そしてFireProで利用できるようになる
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2015年にはSamsung Electronicsから,FreeSync(=Adaptive Sync)対応の4Kディスプレイが複数,市場投入される見込み
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 DSRに対するVSRよろしく,NVIDIAの「G-SYNC」に対抗する技術といったところになるのだが,重要なのは,FreeSyncsが,ディスプレイの業界標準化団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)に採用され,「Adaptive Sync」として標準規格化されていること。すでにSamsung Electronicsから4K解像度の製品が登場することが決まっているなど,Adaptive Syncは2015年第1四半期中の立ち上げが予定されているのだが,そこに向けて,ドライバ側の準備は完了したというわけだ。


●5Kディスプレイ対応&最大24ディスプレイ対応

 ディスプレイに関しては,Catalyst Omegaで解像度5120×2880ドット/60Hzの“5K”ディスプレイに対応したことと,Eyefinityにより最大24基のマルチディスプレイに対応したことも,トピックとして挙げられた。いずれもゲーマーからすると少し縁遠い感じになるが,いずれも,映像制作やワークステーショングラフィックスでは重要だというのがKozak氏の説明だ。

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RadeonとFireProのうち,2系統のDisplayPort 1.2接続が可能な製品なら,5120×2880ドット/60Hzを出力できる
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最大24基のマルチディスプレイ出力にも対応。どちらかというとワークステーションやデジタルサイネージ向け


●ALIENWARE Graphics Amplifier対応

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 ゲーマー向けノートPC「ALIENWARE 13」用のオプション品として登場する外付けグラフィックスボックス「ALIENWARE Graphics Amplifier」(関連記事)。PCI Express 2.0 x4接続で,ノートPCの外部GPUとして機能できるこのALIENWARE Graphics Amplifierに正式対応し,性能の最適化が行われたことも,Catalyst Omegaにおけるトピックの1つとなる。
 ALIENWARE Graphics Amplifierには,ATI Radeon HD 5000シリーズとそれ以降のGPUが対応するとのことだ。

ALIENWARE Graphics AmplifierへRadeon R9 290Xを差したときに得られる性能は,ALIENWARE 13に搭載されるGPU「GeForce GTX 860M」比で大きく向上するとのこと。とくに高いグラフィックス設定時でのフレームレートに大きな違いが生じるとされた
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●そのほか

 そのほか,ゲーム用途と直接関係しないところでは,ビデオ周りの改善が真っ先に挙げられそうだ。
 24fpsのビデオを再生するときに中間フレームを生成して60fpsに変換し,滑らかな描画を実現しようとする機能「Fluid Motion Video」では,Catalyst Omegaにおいて,処理の低消費電力化が図られた。

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 また,従来は利用にあたってAMDのAPIを使う必要があり,それが「対応アプリケーションは『PowerDVD』のみ」という状況を生んでいたハードウェア支援型ビデオ再生機能が,Catalyst OmegaではWindows標準APIであるDXVA(DirectX Video Acceleration)から利用できるようになるとも,Kozak氏は話している。つまり,アプリケーション対応の幅が大きく広がることを期待できるようになるわけだ。
 この新しいFluid Motion Videoは,Kaveri世代のAPUと,Radeon R7 260以上のGPUで利用できるという。

 ビデオ関連ではそのほか,圧縮率の高い動画のブロックノイズが原因となって生じたジャギーを低減する「Contour Removal」や,4K解像度の映像ソースを1080pで再生したり,低解像度の動画ソースを1080pで再生したりするときの画質を改善する「1080p Detail Enhancemnet」といった機能が目玉とされている。

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AMDがまとめた新要素の概要。意外にLinux関係が多い
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 また,4Gamerではこれまであまり取り上げてこなかったが,Linux版ドライバの強化も,割と目立つものになっているように思う。とくにLinuxにおける動画アクセラレーションのAPIである「VAAPI」(Video Acceleration API)のサポートが目を引く。

 ゲーマー的には半ば豆知識レベルの話になってしまうが,1社の独断で規格が決まったりしないオープンソースのLinuxでは,動画アクセラレーションAPIの策定が遅れていた。そのためNVIDIAは「VDPAU」(Video Decode and Presentation API for Unix),AMDは「XVBA」(X-Video Bitstream Acceleration)という独自APIをそれぞれ策定して,Linuxにおける動画のアクセラレーションを提供してきた経緯がある。
 その後,オープンソース団体がVAAPIを策定したが,AMDやNVIDIAは独自APIを維持していた。そんな状況がCatalyst OmegaのVAAPIサポートで変わるということだ。組み込み向けAPUではLinuxのサポートが重要になってきているので,そこにも力を入れました,ということなのかもしれない。


性能向上とドライバの品質向上も大きなトピック

最近のドライバとの比較では性能向上は期待薄?


 グラフィックスドライバにとっての重要な要素である性能向上とバグ修正周りは,主にMakedon氏が説明した。

発売時点で入手可能なドライバで実行したときと比べて,A10-7850Kは最大29%,Radeon R9 290Xは最大19%の性能向上があるという。「AMDの製品は購入した後でも性能アップが得られるのだ」とはMakedon氏の弁
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 ただ,とくに4Gamer読者の多くが気になるであろう性能向上周りについては,「実際にどうなるのかはぜひ皆さん自身で確認してほしい」として,取材時点では,具体的な性能向上内容が明らかにされていない。というわけで今回は,に示したテストシステムを使って,簡単にベンチマークを取ってみよう。
 用いるGPUはRadeon R9 290X。比較対象のドライバは,直近の公式最新版だった「Catalyst 14.9」と,直近の公式最新β版だった「Catalyst 14.11.2 Beta」の2つだ。

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 テストに用いたアプリケーションは,4Gamerのベンチマークレギュレーション15.3から,「3DMark」(Version 1.4.780)と「Battlefield 4」(以下,BF4),新生FFXIVの公式ベンチマーク「ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編),そして「GRID 2」の4本。3DMark以外では1920×1080ドットと2560×1600ドット,3840×2160ドットの3解像度でテストを実行する。
 その結果がグラフ1〜5で,端的に述べて,スコアは誤差程度の違いしかない。Radeon R9 290Xが登場したときのドライバである「Catalyst 13.11 Beta V5」(関連記事)と比べれば,また違った結果になるのかもしれないが,少なくともここ数か月の間に登場したドライバと比べて,Catalyst Omegaで劇的な性能向上があるというのは,期待薄ではなかろうか。

※グラフ4は,クリックすると,フレームレートベースのグラフ4’を表示します
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 ドライバ品質の向上に関しては,いくつか面白い情報がもたらされた。
 たとえば,AMD社内におけるQA(Quality Assurance,品質保証)テストでは,「社員が自分の手持ち製品を使ってテストする『Dogfooding』(ドッグフーディング)というアプローチを新たに取り入れた」とMakedon氏は述べている。
 社内で,自分達が開発したものを実用することで“バグ出し”を行うDogfoodingは,ソフトウェア開発の品質向上を目指すにあたってよく採られる手法であり,AMDがこれまでやっていなかったことのほうが逆に不思議なのだが,いずれにせよ,QA工程が厚みを増したことは間違いない。

 さらにMakdon氏は,「自動テストの項目を65%も追加し,さらにマニュアルテストの項目も12%追加した」ともアピールしていた。

Catalyst Omegaにおける品質向上の取り組みを記したスライド。AMDのグローバルな拠点でテストを行うだけでなく,Dogfoodingの採用も行うようにしたとのことだ
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 同時に,エンドユーザーを巻き込んだ品質向上計画もスタートしたという。
 具体的には,英語版のエンドユーザー向けフォーラムで,「Catalystの問題は何ですか?」と尋ねるアンケートを実施し,その回答数トップ10へ,優先的に対応したとのことだ。下のスライドに載っているのが実際のトップ10で,4-way CrossFireに関する項目もあったりして,「(1人が複数回回答できるため)このトップ10が本当に問題のトップ10なのかというと疑問も残るが」とMakedon氏は笑っていたが,当然のことながらトップ10漏れ,トップ40くらいまでの問題には,Catalyst Omegaの時点で,できるだけ対応したそうだ。

エンドユーザー向けのフォーラムで寄せられた問題のトップ10,すべてをCatalyst Omegaでは潰してあるという
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 さらにMakedon氏は,「AMDでは,不具合を報告できるページを用意しているので,ぜひ活用してほしい。寄せられた問題点は,可能な限り対応していく」と,エンドユーザーに利用を呼びかけていた。現時点では,受け付け言語は英語のみと,ややハードルが高いが,気になったことがあれば,遠慮なくレポートしてみてはどうだろうか。

AMDによる不具合レポートページ(英語)


 ちなみに,以上の取り組みと直接の関係があるかどうかは分からないのだが,実は今年5月,AMDのドライバに関してValveのゲーム開発者が投じたBlogポストが,グラフィックス関連の開発者やLinux関係者の間で,ちょっとした話題になった。

 そのBlogポストはLinux版ドライバがメインテーマで,具体的なGPUメーカー名は書かれていないのだが,読む人が読めば「A」「B」「C」のメーカーがどこかは簡単に分かるようになっている。そこに書かれているAMD評は「バグを1つ潰すたびに必ず新しいバグが生じる」とか「ドライバの元のコードを書いた人間はすでに退社していて,コードを把握している者は社内にいない」など,相当に手厳しい。
 あくまでも下衆の勘ぐりであることをお断りしたうえで続けると,Makedon氏が「Catalyst Omegaの開発には6か月もの時間をかけている」と語っていて,時期的に符合するのは興味深いところだ。ひょっとすると,業界の内外で話題となったこのポストが,Catalyst Omega開発の契機となった……のかもしれない。


Radeonユーザーへ広く勧められる

大規模アップデートに


 説明会の最後には,開発者向けの新機能も紹介された。目立つところをピックアップしておくと,「TressFX Hair」の最新版となるバージョン3.0の提供が開発者に向けて始まるというのが第1のトピックとして挙げられるだろう。
 これは,東京ゲームショウ2014のタイミングでAMDのDavid Bennett(デイビッド・ベネット)氏とRitche Corpus(リッチー・コーパス)氏が予告していたものだ(関連記事)。

 TressFX Hair 3.0では,従来の髪の毛だけではなく,ファー(※毛の付いたもの)をレンダリングできるようになる。Kozak氏は,「『Maya』のプラグインも提供し,ゲームで利用できるファイルをエクスポートする機能も提供している」と述べていた。なお,TressFX Hair 3.0を利用する具体的なゲームタイトルについては,「残念ながら現時点では明らかにできない」(同氏)とのことだ。

ファーをレンダリングできるようになるTressFX Hair 3.0が,開発者に対して提供される
画像集#027のサムネイル/その名は「Catalyst Omega」。AMD,Catalystの大規模アップデートを発表

 そのほか,OpenCL 2.0およびHSA(Heterogenous System Architecture)や,かねてより定評があるプロファイラ「AMD CodeXL」,GPUアナライザ「AMD GPU PrefStudio」のアップデートもアナウンスされている。

開発者向けに新APIのサポートや開発ツールのバージョンアップも予告された
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画像集#030のサムネイル/その名は「Catalyst Omega」。AMD,Catalystの大規模アップデートを発表 画像集#031のサムネイル/その名は「Catalyst Omega」。AMD,Catalystの大規模アップデートを発表

 以上,駆け足で紹介してきた。Catalyst Omegaが,特別版の名に恥じない,新要素てんこもりのリリースになるということは,伝わるのではないかと思う。
 テストを行った限り,性能面での劇的な進化が,少なくとも1つ前の公式最新版比でほとんどないのは残念だが,ここれだけ機能が増えて問題が潰されていれば,十二分に自己責任で導入する価値はあるといえるだろう。


発表後,ほどなくして公開されたドライバの

入手先とリリースノートをチェック(※16:50頃追記)


 発表後,ほどなくして,32/64bit版Windows 7(+SP1)および32/64bit版Windows 8.1対応のCatalyst Omegaドライバが公開された。「Display Driver」のバージョンは14.501.1003.0000(1411281459-14.501.1003-141120a-177998C)で,Catalyst 14.11.2 betaの同14.301.0.00001411171644-14.301-141117a-177808Eと比べると,「14」に続く3桁数字が200も上がっている。この3桁数字は修正内容に応じて大きくなっていくので,バージョン表記からも,今回のアップデートが大規模であることが窺い知れよう。

 というわけで,入手先は下に示したとおり。本稿の最後には,リリースノートの和訳も付記してあるので,興味のある人は合わせてチェックしてもらえれば幸いだ。

32bit版Windows 8.1用Catalyst Omega(212MB)
64bit版Windows 8.1用Catalyst Omega(288MB)

32bit版Windows 7用Catalyst Omega(212MB)
64bit版Windows 7用Catalyst Omega(288MB)

32bit版Windows 8.1用Catalyst Notebook Omega(212MB)
64bit版Windows 8.1用Catalyst Notebook Omega(288MB)

32bit版Windows 7用Catalyst Notebook Omega(212MB)
64bit版Windows 7用Catalyst Notebook Omega(288MB)

32/64bit版Windows 8.1・7用Catalyst Chipset Driver(48MB)

4Gamerの最新ドライバリンクページ


#### 以下,リリースハイライトまとめ ####

●Catalyst Omegaの対応GPU
  • Radeon R9 200シリーズ
  • Radeon R7 200シリーズ
  • Radeon HD 8000シリーズ
  • Radeon HD 7000・7000Aシリーズ
  • Radeon HD 6000・6000Aシリーズ
  • ATI Radeon HD 5000シリーズ
  • Radeon R9 M200シリーズ
  • Radeon R7 M200シリーズ
  • Radeon R5 M200シリーズ
  • Radeon R3 M200シリーズ
  • Radeon HD 8000M・8000D・8000Gシリーズ
  • Radeon HD 7000M・7000D・7000Gシリーズ
  • Radeon HD 6000M・6000D・6000Gシリーズ
  • ATI Mobility Radeon HD 5000シリーズ
  • AMD A-Series APU with Radeon R7・R6・R5・R3 Graphics
  • Radeon E8860・E6760・E6460


●Catalyst Omegaにおける新要素
・Virtual Super Resolution(VSR)対応
  • 詳細は本文を参照のこと

・5K解像度のディスプレイ対応
  • 詳細は本文を参照のこと

・「ALIENWARE Graphics Amplifier」対応
  • 詳細は本文を参照のこと

・ビデオ関連の拡張
  • 詳細は本文を参照のこと

・CrossFireの拡張
  • 「Assassin's Creed Unity」「Call of Duty: Advanced Warfare」「Dragon Age: Inquisition」に向けたCrossFireプロファイルの更新

・Frame Pacingの拡張
  • Dual Graphics環境における,「3DMark 11」「Assassin's Creed Unity」「Batman: Arkham Origins」「BioShock Infinite」「Dragon Age: Inquisition」「GRID 2」「HITMAN ABSOLUTION」「Metro 2033 & Metro: Last Light」(Metro Redux)「Plants vs. Zombies: Garden Warfare」「Sniper Elite 3」「Sniper Elite V2」「TOMB RAIDER」「UNiGiNE Valley Benchmark」「World of Warcraft」のFrame Pacing改善
  • CrossFire環境における「Far Cry 3」「HITMAN ABSOLUTION」「TOMB RAIDER」「Watch_Dogs」のFrame Pacing改善

・OpenCL 2.0対応の拡張
  • 共有仮想メモリ
    複雑なポインタを利用したデータ構造をホストとデバイス(GPU)の間で共有できるようになった。ホストとデバイス間のデータ転送を明示する必要がなくなり,プログラミングの自由度が向上する
  • デバイス側のエンキュー
    プログラマビリティを向上させ,アプリケーションの効率を引き上げた
  • 汎用アドレススペース
    名前付きアドレススペースを利用することなしに関数を書けるようになった。複数の関数を書く必要がなくなるため,時間を節約でき,また自由度が向上する


●Catalyst Omegaにおける性能向上
  • 「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」に向けた性能最適化(※性能向上率は明らかにされていない)
  • 「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」に向けたMantle API対応
  • FXAAを有効化した低解像度設定時に,「Call of Duty: Advanced Warfare」で最大30%
  • シングルGPU構成で動作させる「Assassin's Creed Unity」に向けた性能最適化(※性能向上率は明らかにされていない)
  • シングルGPU構成時に,アンチエイリアシングを有効化した「Dragon Age: Inquisition」で最大15%
  • シングルGPU構成時に,アンチエイリアシングを有効化した「Far Cry 4」で最大50%
  • いくつかのAMDプラットフォームにおいて,ドライバの最適化により,マルチコアCPUの性能効率を最大15%引き上げ


●Catalyst Omegaで解決した問題
  • Catalyst 14.9のインストール後に,ドライバがクラッシュしたり,画面に何も表示されなくなったりする問題
  • Catalyst 14.9のインストール時に,Catalyst Control Centerが「AMDMantle64.dll」のエラーをポップアップさせることのある問題
  • ハードウェアアクセラレーションを有効にしたままYouTubeのムービーを再生すると,(再生しているWebブラウザが)クラッシュすることのある問題(※ということだと思われる。原文は「Online video can sometimes crash when watching YouTube videos with hardware acceleration enabled」)
  • ハードウェアアクセラレーションを有効にしたままChromeブラウザからオンラインのビデオストリームを再生すると,Chromeブラウザがクラッシュすることのある問題
  • ディスプレイがスリープに入った後,復帰しないことのある問題
  • AHCI対応のチップセットドライバを導入すると,起動時にシステムがクラッシュすることのある問題
  • CrossFire構成のシステムを垂直リフレッシュレート144Hzのディスプレイと接続した状態で,Direct3Dアプリケーションを実行すると,(アプリケーションが)クラッシュすることのある問題(※ということだと思われる。原文は「144Hz displays in AMD CrossFire configurations can cause intermittent crashing when launching D3D Applications」)
  • 4-way CrossFire構成時に,ゲームの動きがカク付いたり,テアリングが生じたりする問題
  • 「State of Decay」で,テクスチャが貼られるべき場所からはみ出たり,表示がおかしくなったりする問題
  • HDMI経由でテレビと接続してあるとき,HDMI経由のサウンド出力をいったん無効化してから有効化しても,有効にならない問題


(記事本文:米田 聡,テストパート協力:宮崎真一)
  • 関連タイトル:

    AMD Software

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