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Diabloを超えるアクションRPGとなるか? 「Titan Quest」開発者,Brian Sullivan氏インタビュー
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印刷2006/08/07 19:32

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Diabloを超えるアクションRPGとなるか? 「Titan Quest」開発者,Brian Sullivan氏インタビュー

 「タイタン クエスト」(原題 Titan Quest)は,古代ギリシア神話などをモチーフとしたファンタジーアクションRPGだ。Blizzard Entertainmentの「Diablo」シリーズと同様に俯瞰視点で,マウスクリックで移動/攻撃といった操作のほとんどがカバーできる,今やアクションRPGの標準となったインタフェースを採用している。
 タイタン クエストがどのようなゲームか知らない人は,4Gamerでもたびたび記事化しているので,GC 2005の紹介記事E3 2006の記事などを参照してもらいたい。また,4Gamerから体験版をダウンロードできるので,実際にプレイしてみてもいいだろう。

 タイタン クエストの開発元は,「Age of Empires」の開発者の一人,Brian Sullivan(ブライアン・サリバン)氏が率いるIron Lore Entertainment。今回4Gamerでは,たまたま来日中のサリバン氏にインタビューする機会を得たので,タイタン クエストの開発についていろいろと聞いてみた。



■6年近い開発期間を経て登場した「タイタン クエスト」

4Gamer:
 本日はお時間を割いていただきありがとうございます。日本には何度もいらしてるんでしょうか。

サリバン氏:
 そうですね。ほとんど毎年来ています。毎回2〜3週間程度滞在しますね。もう12回目くらいでしょうか。日本は大好きですよ。日本の夏は暑いから,冬のほうが好きなんですけどね(笑)。

4Gamer:
 日本でもタイタン クエストが9月1日に発売されることが正式に決まり,初めて興味を持った人も多いと思います。まずは,タイタン クエストのリードデザイナーであるサリバンさんのゲーム業界での経歴をあらためて教えてください。

サリバン氏:
 1996年にEnsemble Studiosに入ったのが,私のゲーム業界でのキャリアのスタートになります。当時,ちょうどMicrosoftがWinG(※編注:DirectX以前の3D技術)で開発するゲームを探していて,Age of Empiresの開発をすることになったんです。当時はオンラインゲームの黎明期ということもあり,タイミングがとてもよかったと思います。ちなみに,それまでは別の会社で情報システムのコンサルティングのような仕事をしていました。

4Gamer:
 なぜゲーム開発の仕事に転職しようと考えたのですか?

サリバン氏:
 いろいろと理由はありますが,友人がEnsemble Studiosにいて一緒に働けること,ゲーム開発はクリエイティブなこと,元々ゲームが好きだったことなどが挙げられますね。

4Gamer:
 その後独立し,Iron Lore Entertainmentでタイタン クエストの開発に取りかかるわけですね。開発にはどのくらいかかったのですか?

サリバン氏:
 それは答えるのが難しい質問ですね(笑)。
 Iron Lore Entertainmentは,Paul Chieffo(ポール・チーフォ)と私が中心となって,2000年の10月に立ち上げました。これがタイタン クエストのプロジェクトの始まりといえます。
 当時はまだお金がなかったので,オフィス探しや名刺作りといった会社の準備をしながら,4〜5か月かけてタイタン クエストのデザインを作り,パートナー企業を探していました。しかし,ほとんどのメーカーの興味はXboxのようなコンシューマゲームばかりにいっていました。いくつもゲームメーカーを回ったのですが,どこもPCゲームには興味を持ってくれず,開発費を出してくれるパブリッシャは現れませんでした。

4Gamer:
 当時は今よりPCゲームが強いと思うのですけど。

サリバン氏:
 そうですねえ。結局,自分達の資金で3人スタッフを増やして,10か月かけてタイタン クエストのプロトタイプを作ったんです。これは非常によくできたものだったと思うのですが,それを見せてもPCゲームに開発費を出そうというパブリッシャはなかなか見つかりませんでした。
 さらに18か月かかって,やっとTHQとコンタクトが取れて,2004年の1月にパブリッシングの契約を結ぶに至りました。当時のスタッフは9名ほどでしたが,契約が結べたおかげで,その後2年でスタッフは合計38名にまで増え,無事タイタン クエストも先日完成に至ったというわけです。
 結局のところ,開発には5年半から6年かかったというのが実情です。非常に長かったですね。

4Gamer:
 開発に5年半もかかったような作品であれば,「Titan Quest 2」といった次回作はしばらくなさそうですね。

サリバン氏:
 そうですね(笑)。

4Gamer:
 ではまず,タイタン クエストの拡張パックなどがリリースされるのではと考えてしまうのですが,今後の方向性などがもし決まっていれば教えていただけますか。

サリバン氏:
 まだタイタン クエストが発売されたばかりですし,私の口からオフィシャルに発言できることは現在ありません。それはパブリッシャであるTHQに聞いてください(笑)。

4Gamer:
 それでは質問をちょっと変えますね。先ほどXboxという言葉が出たのでお聞きしますが,タイタン クエストはXboxのようなコンシューマにもとても向いているタイトルだと思います。コンシューマでの開発は考えているのでしょうか。

サリバン氏:
 会社設立当初から“いつかコンシューマでも開発をすること”も視野に入れていました。シングルプレイのRPGであれば,コンシューマへの移植も比較的容易だからです。しかし,タイタン クエストについてはPC以外は考えていませんでしたね。



■ヒット作が少ないからこそアクションRPG市場にはチャンスがある

4Gamer:
 それでは,次の質問に移ります。Ensemble StudiosというRTSに対してとてもノウハウのある会社にいたにもかかわらず,Iron Lore Entertainmentでは,なぜアクションRPG,しかもMMOではなくシングル/MORPGをやろうと思ったのですか?

サリバン氏:
 PCゲームには,RTS,RPG,アクションなどさまざまなジャンルがあります。私もゲームをいろいろとプレイしていますし,どのジャンルも好きです。その中でアクションRPGを選んだのは,マーケット的なチャンスを考えたときに,ベストな選択肢だと思ったからです。
 ヒットしたRTSはそれこそ星の数ほどあるけれど,MMOタイプ以外のRPGでは,Diablo以降目立ったタイトルはありませんよね。Diablo/Diablo IIが500万本以上売れたことからも,アクションRPGが好きな人は多く,よいゲームの登場を待っているだろうと推測しています。
 あと,Ensemble Studiosにいたときは,いろいろなRTSを毎日毎日,朝から晩までやっていたんですよ! 正直ちょっとRTSは飽きました(笑)。

4Gamer:
 なるほど(笑)。そのアクションRPGについてですが,いわゆるディアブロライクなスタイルをとっているゲームタイトルは,ヒットしたかどうかは別として,数はたくさんあります。タイタン クエストを作るにあたって,最も気をつけた部分はなんですか?

サリバン氏:
 美しいビジュアル,優れた操作性,そして奥の深いゲームシステムといった,製品としての完成度の高さですね。“High Production Value”と私は呼んでいます。
 アメリカのPCゲームマーケットは,ピラミッド的な構造をしていて,一番上にコアゲーマーがいます。真ん中から下のほうに向かって,カジュアルなゲーマーが多くなるわけですが,タイタン クエストでは,上のコアゲーマーから真ん中当たりのややカジュアルなゲーマーまで,幅広く受け入れてもらえるようにしています。
 私達は,Webゲームなどが好きなカジュアルなゲーマーが“次”にプレイするゲームとして,美しいビジュアルのゲームを求めていると考えています。そしてそこには,優れた操作性が求められると思います。ご存じのように,タイタン クエストでは細かいグラフィックスにもこだわっていますし,カジュアルなゲーマーでも馴染みやすいように,インタフェースにもこだわっています。操作もマウスのクリック一つで移動したり,NPCに話しかけたり,攻撃したり,アイテムを拾ったりできます。非常に簡単です。
 ハードコアゲーマー向けとしては,フレキシブルで奥の深いスキル&クラスシステムを用意しました。また,数千ものユニークなアイテムがあります。ゲームに宝探しの要素を期待している人もいますから,アイテムの豊富さは非常に重要と考えています。そのほか,ハードコアゲーマーには付属のマップエディタなどでも楽しんでもらえると思います。



4Gamer:
 なるほど。同じタイプのゲームとして,Ascaron Entertainmentの「セイクリッド」(原題 Sacred)というアクションRPGがあって,ヨーロッパでは高い評価を得ています。しかし,日本ではいま一つ名を上げられませんでした。セイクリッドとタイタン クエストは何が違うと思いますか。

サリバン氏:
 セイクリッドはヨーロッパでは非常にポピュラーですが,ヨーロッパのとてもハードコアなゲーマーに向けてデザインされたタイトルだと思います。インタフェースなどに複雑な面があるのがその理由だと思います。カジュアルなゲーマーにとっては遊びづらいでしょうから,High Production Valueは持っていないタイトルといえるのではないでしょうか。

4Gamer:
 確かにタイタン クエストでは,キャラクターメイキングが非常に簡単にできるなど,導入部分はとてもシンプルなものになっていますね。その後,プレイしていくにしたがってゲームの奥深さが分かってくるような印象を受けます。キャラクターのスキルポイントの割り振りなどは,奥深い遊び方を想定している象徴的な例で,そのあたりでもコアゲーマー向けという印象を受けました。

サリバン氏:
 スキルシステムの一つの目的は,スキルのコンビネーションを即座に作れるように,と意図したところがあります。タイタン クエストのスキルシステムは非常に柔軟なので,プレイヤーのさまざまなゲームプレイスタイルに合わせて,ベストなコンビネーションを作り出せるようになっています。
 キャラクターを成長させていくという点では,スキルコンビネーションを楽しむなど,ハードコアゲーマーでも満足できる奥深さがあります。長く遊べるシステムという点では,RTSよりもRPGのほうが向いていると思います。

4Gamer:
 そうですね。確かに,プレイしていると「次はこのコンビネーションにしてみよう」などと考えますし,長く楽しめるタイトルであることは感じられます。しかしそれだけに,Diabloのようなランダムマップ機能がない点が非常に悔やまれます。開発中にランダムマップを搭載する案は出なかったのですか? 

サリバン氏:
 確かにおっしゃるとおりです。ランダムマップのプランは,最初は私達も持っていました。しかし,ビジュアルの美しさを重視すると,ランダムでマップを生成するのは非常に困難だったのです。どちらを重視するかを考慮して,今回はビジュアルのほうを選択しました。ただ,ランダムマップが面白いというのは我々も重々理解しているので,将来的にはランダムマップを使ったシステムを考えています。

4Gamer:
 それはタイタン クエストの拡張パックとかで実現したりするんですか?

サリバン氏:
 残念ながら,タイタン クエストではなく以降の作品になると思います。



4Gamer:
 システム面の話が出たので,ちょっと質問を変えます。タイタンクエストの特徴の一つに,独自開発された物理エンジンも挙げられると思うのですが,物理エンジンについて教えてください。

サリバン氏:
 タイタン クエストの物理エンジンは,実はODE(Open Dymanics Engine)というフリーウェアをベースにしています。もちろん,非常に多くのプログラムを追加していますけどね。確か,Havokなどでも,誰でも使えるフリーバージョンのミドルウェアが提供されていますよね。
 ただタイタン クエストは,FPSと比べると,それほど多くの効果物理をシミュレーションしているわけではありません。FPSだと,破片などを作り出すのにPhysicsを使いますが,タイタン クエストでは,ゲームの一部でしか効果物理を使っていません。ゲームの楽しみを増やすための追加要素的に利用しています。

4Gamer:
 おや,あれはフリーのエンジンだったんですね。それにしても美麗なビジュアルと相まって,美しい世界を作り出していると思います。
 ところでビジュアルについてですが,こちらも細かいところまで凝っていますよね。ぱっと見は派手ではないものの,レザーアーマーとレザーレインフォーストアーマーなど,名前が違うだけで装備のビジュアルが変わるなど,かなりのこだわりを感じます。非常に大変な作業だと思うのですが,グラフィックスデザイナーは何人いるんですか?

サリバン氏:
 タイタン クエストの開発に関わっているスタッフは,合計35人います。デザイナーは9人で,アーティストと呼ばれる人達は12人います。プログラマーは5人ですね。彼らが主にタイタン クエストの世界を作り出しています。



■「すべての人が自国の言葉で楽しめる」のが理想

4Gamer:
 我々も毎年E3を取材しているんですが,取材に行くたびに,タイタン クエストのような,職人が作ったというこだわりが感じられるパッケージのPCゲームというものがどんどん少なくなっていくような気がします。実際にプレイしてみて,この血を絶やさずがんばってほしいと素直に思いました。

サリバン氏:
 ただ,オンラインゲームやコンシューマゲーム機のシェアが伸びてきていて,最近はPCのリテール市場が縮小傾向にあると感じています。パッケージゲームがPCゲームのマーケットで成功するのは,非常に難しいであろうことは理解しています。

4Gamer:
 ただ,別の見方をすれば,PCは世界共通のプラットフォームとしては唯一のものであり,潜在的な市場としては非常に大きいともいえますよね。

サリバン氏:
 そうですね。確かに最近,アメリカではノートPCで3Dゲームをプレイする人が増えてきているので,期待したいところではあります。

4Gamer:
 9月1日には,日本語マニュアル付きのパッケージが発売されることになりましたが,4Gamer読者に向けて,ここに注目してほしいというメッセージをお願いします。

サリバン氏:
 ゲームをプレイしてみてほしい,それがすべてです(笑)。あと,これは読者に向けてのメッセージとは異なるかもしれませんが,すべてのゲーマーに自国の言葉で楽しんでもらえるようにしたい,というのが私達の理想です。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

 アクションRPGというジャンルにおいて代名詞となったDiabloという壁は高く,10年以上経ってもDiabloを超えたといわれるタイトルは存在しない。また,昨今のMMORPGブームもあり,パッケージソフトは苦戦を強いられている状況である。そんな状況の中でのタイタン クエストは,サリバン氏が“High Production Value”と呼ぶだけあり,同タイプのゲームでは近年まれにみる完成度の高さで評判になっている。
 日本語マニュアル付きの英語版ではあるが,日本のパブリッシャ経由での発売が決まったことで,日本人が手にする可能性は非常に高くなった。果たしてタイタン クエストはDiabloを超え,アクションRPGの代名詞的タイトルになれるかどうか,MMORPG全盛の中,パッケージタイトルの起爆剤となるのか,今後の動向に注目していきたい。



 なお,今年の夏の大プレゼントでは,サリバン氏の直筆サイン入りのタイタンクエスト(英語版)を2本提供している。興味のある人は,応募開始までもう少しだけ待ってほしい。(Interviewed by Kazuhisa,Photo by kiki)

※収録:2006年7月25日

  • 関連タイトル:

    タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版

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