連日,
EA Mythicのブースには長蛇の列ができる。ずらりと並んだ彼らのお目当ては,もちろん
「Warhammer Online: Age of Reckoning」(以下,Warhammer)のプレイアブル展示だ。ブースの奥に設置された部屋にはネットワークでつながれたPCが数台用意され,20分ほどWarhammer Onlineを思い切りプレイすることができるのである。驚いたことに,展示されているのは“ドイツ語バージョン”。アメリカの会社が作る,まだα版にさえなっていないMMORPGなのに,だ。ボードゲーム版のWarhammerが根強い人気を持つヨーロッパ市場に対し,EA Mythicがいかに力を入れているのか分かる。プレイ後の人々の評判もなかなかに良いものがあり,GCの目玉展示の一つと言っていいかもしれない。
なにしろ,2006年5月に開催されたE3に登場したバージョンから大幅に進歩しており,E3版が「テックデモ」に近いものだったのに対し,今回のGC版はかな遊べる仕上がりなのである。こりゃ,行列も作ろうというものだ。
というわけで,EA MythicのExective Producerである巨漢の好漢,
Jeff Hickman氏にゲームを見せてもらいつつ,もっぱら開発の進捗状況などについて話を聞いてみた。こちらはアポイントのあるメディアなので,列に並ぶことなく試遊台に案内されたわけだが,外の来場者からは「なんであいつだけ」的な視線が投げかけられ,いささか冷や汗。どうもごめんなさい,ドイツの皆さん。
Jeff Hickman氏
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第一印象は,主観的な物言いで恐縮だが「ゲームらしくなったなあ」ということ。ボタンだけはあるが,クリックしても何も起きなかったE3版とは異なり,さまざまなフィーチャーが実装され,それらをいちいち試してみることが可能なのだ。また,グラフィックスもさらに手が加えられ,魔法やダメージエフェクトなど,見違えるよう。今週完成したばかりという波立つ水面の様子なども良かったが,「でもね,海岸線のポリゴンがちょっと不満なので,このへんは直さないといけない」とJeff氏は言う。
彼の案内で,今回新たに付け加えらた数々の新エリアをめぐってみた。大きく言って,E3版との違いは新種族(アーミー)の追加とマップの拡大だ。全部で6つの種族が登場する予定のWarhammerだが,E3版のオークに加え,GC版にはドワーフが登場。そして,一つしかなかったマップも新たに8個作られている。マップは,沼地が広がる土地や山岳地帯,そして雪の積もる平地など,なかなか個性豊か。ただし,「Greenkin Zones」と「Dwarf Zones」のうち,いずれの首都も未実装で,ためしに行ってみると,地面に大きく「16」だの「8」といった数字が描かれている。「デザイナーがこの数字に合わせて建物をつくるわけだね」とJeff氏。
関係ないけど,(チートコードを使って)さまざまなマップに我々を案内してくれた広報担当者は,英語とは微妙に配置の異なるドイツ語版キーボードに終始,悪戦苦闘。コードがちゃんと打ち込めず,「英語のゲーム。ドイツ語のキーボード。そしてフランス製のPCときた」と肩をすくめた。ワールドワイドもなかなか大変なのである。
ちなみに,新たに登場したドワーフだが,特徴として「泳げない」ことが挙げられる(むろん,そればかりではないのだけど)。では,水に囲まれた島はどうやって攻撃するのか,という質問に「樽に入って」との答え。樽に入ったドワーフの大群が襲ってくる様子を想像すると,恐ろしいというか,笑っちゃうというかだが,こうした明るい遊び心が随所に見られるのもWarhammerの徳の一つと言えるだろう。たしかに,試遊台の海岸にはたくさんの樽がうち上げられており,なんだろうなあ,とは思っていたんですよ。
ゲームプレイ面でも,歩き回るだけだった以前のバージョンに比べ,街以外の場所では好きなところでPvPが可能になっており,いよいよWarhammerらしくなってきた。しかし
「War in Everywhere!」(街中以外はどこでも戦争)をモットーとする本作らしいのは,Banner(バナー)スイッチかもしれない。残念ながら今回は未実装だったが,これは背中に旗を背負える機能。戦争といえばやはり旗である。マントでギルドを,そして旗で種族を誇示しつつ,PvPに,あるいはRvRに熱中する自分の姿を想像すると,楽しいったらありゃしないのである。いやホント。
細かいところでは,エンサイクロペディア機能が実装され,モンスターの特徴や,プレイヤーインフォメーション,クエストの進捗具合などがクリック一発でチェック可能になっている。クエストといえば,パブリックエリアのクエストが実装されたりと,私が作っているわけではないが,開発が進歩しているという確実な手ごたえを感じることができる。ちなみにクエストは,
EverQuest IIや
World of Warcraftに代表される「異様なまでに親切な進捗表示システム」を踏襲している。このハードコアなゲームにこのシステムか……と一瞬思ったが,考えてみたらPvPが「本当の売り」なわけで,いわばサブのフィーチャーと言ってもよいクエストは,これくらい遊びやすいほうがいいのかもしれない。
クエストの様子や樽から出てくる(?)ドワーフの様子を撮影した
ムービーを2本作ってUpしてあるので,ぜひ
「こちら」から,合わせてチェックしてみてほしい。
Jeff氏によると「E3版が15%ぐらいだったけど,開発はまだまだ
30%前後の進捗状況」だとか。現在手がけているのは「ダンジョンの制作」だそうで,全部で9か所ほどあるダンジョンを作るのはかなり手間のかかる作業とのことだった。「まあ,大変には違いないけど,ダンジョンはゲームの重要な要素だから,力を入れているよ」だそうだ。
スケジュールとしては,
2007年秋頃にクローズドβテスト。その後,オープンβテストに進み,2007年5月ぐらいには,メディア向けのクライアントをリリースし,同年の第4四半期には正式サービスにこぎつける予定。日本でのサービスについては「検討中」という答えではあったが,我々の耳にはすでに何社か手を挙げた会社の名前が(別ルートから)入ってきているので,実を言うとまったく動きがないというわけでもない。大きな契約の話なんてそうそう簡単に決まるものではないが,可能性は大いにある。本作の日本展開を楽しみにしている人は,4Gamerに掲載されるであろう続報に要注意だ。
さて,EA Mythicといえば,DAoCこと
「ダーク・エイジ・オブ・キャメロット」。ダーク・エイジ・オブ・キャメロットといえば最新拡張パック
「Labyrinth of the Minotaur」。実はこのGCで遊べるのではないかとこっそり期待していたのだが,残念ながらプレイアブル展示は見られなかったようだ。ついでに,なんて言っちゃ悪いが,Jeff氏に拡張パックについて聞いてみたところ「Labyrinth of the Minotaurは,
2週間前からクローズドβテストに入り,開発は順調に進んでいるよ」との返事。なんだったら,こちらもついでに続報に期待していてほしいところだ。(松本隆一)