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着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
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印刷2012/02/15 16:26

インタビュー

着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー

画像集#007のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
 エヌ・シー・ジャパンのMMORPG「リネージュ」の国内サービスが,2012年2月12日をもって10周年を迎えた。

 リネージュは,日本のオンラインゲーム黎明期に多くのファンを獲得した,クリックタイプMMORPGの定番タイトル。現在に至るまで数多くのアップデートを重ね,順調にサービスを続けている。その後にリリースされた「リネージュ2」や「The Tower of AION」といった“重厚長大なMMORPG”にプレイヤーをごっそり奪われることもなく,うまく共存できている。これはパブリッシャにとって,実に理想的な状況と言える。国内有数のオンラインゲームパブリッシャとして大きな影響力を持つエヌ・シー・ジャパンの礎は,このリネージュによって築き上げられたといっても過言ではないだろう。

 今回はリネージュの主要スタッフに,これまでのサービスを振り返ってもらうと共に,10周年記念キャンペーンや,今後のアップデートなどについて話を聞いてきた。現役プレイヤーはもちろん,かつてリネージュプレイヤーだった人もぜひチェックしてほしい。

「リネージュ 〜Eternal Life〜」公式サイト

左から,「リネージュ」サービスチームの石川彰英氏,アシスタントプロデューサーのキム・ソンファン氏,プロダクトマネージャーのキム・ギョンス氏
画像集#001のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー


「リネージュ」の10年を振り返って


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。皆さんイベントなどを通じて,プレイヤーに顔を覚えてもらっていると思いますが,まずはあらためて,簡単な自己紹介をお願いします。

画像集#002のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
キム・ギョンス氏:
 リネージュのプロダクトマネージャーを担当しているキム・ギョンスと申します。プロダクトマネージャーというのは,いわゆるプロデューサーに近い役職で,日本のリネージュに関する事業計画やアップデート,コミュニティ周りの施策など,同作を日本で盛り上げるためのあらゆる業務に携わっています。

4Gamer:
 今の役職に就いたのはいつ頃ですか?

キム・ギョンス氏:
 約1年半前に,韓国NCsoftからエヌ・シー・ジャパンへ移りました。韓国にいた頃は主に,ローンチ前のタイトルの面白さを追求する“Fan QA”と呼ばれる部署に在籍していました。当時は「Wildstar」などにも携わっていましたよ。

キム・ソンファン氏:
 アシスタントプロデューサーのキム・ソンファンです。プロダクトマネージャーの業務をサポートすると共に,日本の運営チームと韓国開発チームの橋渡しを行ったり,公式ウェブサイトの企画を担当したりしています。

石川氏:
 リネージュ サービスチームの石川です。ニコニコ生放送をはじめとして,ゲームの内外でお客様と直接触れ合ったりする,“FS(ファン&サポート)”に近い活動を行っています。

4Gamer:
 リネージュは,2月12日にめでたく10周年を迎えました。率直な感想はいかがですか。

キム・ギョンス氏:
 すごく嬉しいですね。サービスの期間だけを見ても,日本でここまで長く続いているタイトルはほとんどありません。しかもリネージュは,これほど移り変わりの激しいオンラインゲーム市場において,今でも多くのお客様に楽しんでもらっているんです。

4Gamer:
 リネージュの国内サービスが10周年を迎えられた秘訣は,どのあたりにあるとお考えですか?

キム・ギョンス氏:
 一番の理由は,定期的なアップデートによってゲーム内世界が絶えず変化しており,長くプレイしても飽きないことですね。また,それと同じくらい大切なのが,プレイヤー間のコミュニティに対するケアです。何年もの間遊んでくださっているプレイヤーの中には,「友達がいるから今日もログインしてみよう」といった動機を持たれる方も多いです。

4Gamer:
 リネージュにとっての10年は,日本のオンラインRPGの10年と言い換えても差し支えないと思います。その間,オンラインゲームに対するニーズやトレンドも変化してきましたが,いま振り返って大きな転機となった点はありますか?

キム・ギョンス氏:
 たくさんありますが,最も印象に残っているのは,“秘譚 魔術師 ハーディン”のアップデートです(関連記事)。リネージュにとって初のインスタンス形式のダンジョンでしたが,それ以上に“日本独自コンテンツ”という意味で,作る側にとっては苦労の連続でした。

画像集#003のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
キム・ソンファン氏:
 それまでのリネージュは,最初に韓国でアップデートされたコンテンツが,他国へローカライズされるのが当たり前でしたからね。日本で好評だったため,その後韓国へ逆輸入のような形でローカライズされていったんですよ。

4Gamer:
 現在は「リネージュ2」などでも,日本発のコンテンツが作られていますが,その最初のきっかけとなったアップデートだったのでしょうか。

石川氏:
 はい。それまでは韓国から日本へ一方的にローカライズされていたんですが,今はNCsoftの開発チームと,エヌ・シー・ジャパンの運営チームが,共にゲームコンテンツを作り上げていくというイメージですね。そういった面でも,大きな意義のあるアップデートでした。

4Gamer:
 そのほかに,とくに印象に残るエピソードはありますか。

キム・ギョンス氏:
 やはり,リネージュのビジネスモデルを“基本プレイ無料+アイテム課金制”に移行したことです(2009年3月)。リネージュにとっての再出発と位置づけたうえで,あえて“リネージュ 最期の日”という挑戦的なプロモーションを仕掛けたのですが,まぁ賛否両論がありましたね(関連記事)。

石川氏:
 当時はノイズマーケティングという言葉もありませんでしたし,大きなショックを受けた方も多いと思います。私なんて今でもお客様からツッコまれますよ……。

4Gamer:
 そういえばリネージュのサービス開始時は,今でこそ当たり前となった“ファン&サポート(FS)”の部署もありませんでしたよね。

石川氏:
 当時は弊社にとっても,いわゆるガチガチの“GM”が当たり前でしたね。
 今から2年くらい前にFSの部署を立ち上げたのですが,お手本となる組織が他社さんを含めて見当たらず,苦労の連続でした。いま振り返ると,社員に恵まれていたからこそ出来たのかもなぁ,と思います。

4Gamer:
 恵まれていたというのは,どういう意味でしょうか。

石川氏:
 弊社のスタッフは業務で命令されるのではなく,自らがゲームを盛り上げよう,お客様を楽しませようというモチベーションがとても強いんですよ。そういう人が多かったからこそ,FSのような活動がうまくいったのかもしれませんね。

4Gamer:
 確かに2年経った現在も,他社ではあまり見られない展開ですよね。

画像集#004のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
石川氏:
 リネージュが10周年を迎え,数字だけ見ると「長い」と思われるかもしれません。でも我々としては「まだ10年しか経ってない」という印象ですね。固定観念にとらわれる必要などありませんし,FSにもそういった考えがベースにあるかもしれません。

4Gamer:
 個人的には,リネージュ2やAIONといった大型の後続タイトルが出てきたときに,リネージュの扱いを疎かにしなかった点は「さすがだな」と思いました。世代的にはAIONが最も新しいですが,たとえばイベントを取材していても,リネージュやリネージュ2も同じくらい盛り上がっていますよね。

キム・ギョンス氏:
 各タイトルの担当がプライドを持っていて,他タイトルの部署と良い意味で“競争”していることが大きいのかもしれませんね。確かにリリースされた時期は古いかもしれませんけど,遊んでくださっている方は確実に沢山いるわけで。むしろ「10年経ったMMOだから,こういう展開はどうだろうか?」といった視点で企画を考えていますよ。

キム・ソンファン氏:
 新作タイトルのローンチ時に,従来タイトルとの住み分けについての議論はよく行われます。その際の基本ポリシーは,いかにして共存させるかであって,ではそのためにどうやって差別化すればいいんだろうか,といった流れで考えています。

4Gamer:
 ちなみに,いまのプレイヤーの平均年齢層は,どういった感じなのでしょうか。

キム・ギョンス氏:
 長く続けてくださっている方が多く,他タイトルと比べて年齢層も若干上がっています。「リネージュ」が一番上で,「リネージュ2」そして「AION」と,それぞれ約5〜6歳離れているイメージですね。

4Gamer:
 新規プレイヤーの数はいかがでしょうか。

キム・ギョンス氏:
 ビジネスモデルを“基本プレイ無料+アイテム課金”に切り替えたあとは,一定のペースで増加していますが,割合としてはそれほど多くはないですね。プロモーションに関しても,休眠プレイヤー向けの復帰キャンペーンなどが多いです。

4Gamer:
 となると,離脱する人がかなり少ないということなんでしょうね。

石川氏:
 ええ。リネージュと共に10年,年を取った……という方も少なくないと思いますよ。


10周年キャンペーンが展開中


4Gamer:
 今後のリネージュの動向についても,お話しできる範囲でお願いしたいと思います。まずは,リネージュ 10周年キャンペーンの特設サイトが現在オープンしていますね。

画像集#005のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
キム・ギョンス氏:
 はい。かねてよりお伝えしていた,美樹本晴彦さんによるキャラクターデザインを,ここで正式に公開します。計7体のキャラクターを,4月くらいまでかけて順次公開していく予定です。

4Gamer:
 イメージイラストのほかに,何か関連イベントを行う予定はありますか?

石川氏:
 まだ企画段階ですが,たとえばイラストのキャラクターをゲーム内に登場させたり,イラストで着用している装備品をゲーム内に実装したりなど,あれこれ考えているところです。

4Gamer:
 今後のアップデートについてはいかがでしょうか。

キム・ギョンス氏:
 急な話になってしまいましたが,2月14日に「TRANSFORM UPDATE」を実施させていただきました。

4Gamer:
 TRANSFORM UPDATEについては,2011年末のオフラインイベント(関連記事)でも少し紹介されましたが,ずいぶん急な実装となりましたね。“変身”を軸にしたアップデートということですが。

キム・ギョンス氏:
 ええ。これまでのリネージュの世界で活躍した,8体の“英雄”キャラクターに変身できるようになりました。“ケンラウヘル”や“ケレニス”など,リネージュの世界ではお馴染みの英雄ですが,あれよりも若い姿で登場するので,きっと楽しんでいただけると思います。種類に関しては,レベル75と80の段階で,それぞれ4種類を用意しています。

4Gamer:
 リネージュの世界観に慣れ親しんでいる古くからのプレイヤーにとっては,見逃すことのできないアップデート内容と言えそうですね。

キム・ギョンス氏:
 そのほかにも,“ラスタバド”のエリアをリニューアルしました。新しい対象レベル帯は55となっています。今後も引き続き,既存の不活性エリアをリニューアルしていく予定で,その第1弾がラスタバドという形です。

画像集#006のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
キム・ソンファン氏:
 あとは細かい部分ですが,“血盟システム”も調整します。たとえば,倉庫からアイテムを出し入れする際に履歴が残るようになります。あとは血盟主のキャラクターと,万が一連絡がつかなくなったときなどのために,“副血盟主”が設定可能になります。

石川氏:
 また,2月14日の導入ではありませんが,弊社のセキュリティシステム“NC OTP”が,近日中にリネージュにも対応します。いわゆるワンタイムパスワードで,セキュリティが強固になりますので,お客様にはぜひ利用をご検討いただきたいですね。

4Gamer:
 わかりました。それでは最後に,リネージュのこれからの10年に向けての意気込みをお願いします。

キム・ギョンス氏:
 リリース当時のリネージュはハードコアなゲームでしたが,現在ではより遊びやすく,そして手軽に楽しめるオンラインゲームになっています。今後はより一層,お客様と対話する機会を増やし,安心して末永くプレイできるよう,チーム一同頑張っていきます。2012年もいろいろなチャレンジを行っていきますので,ぜひ期待してください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


画像集#008のサムネイル/着実に改善を重ねてきた“変わらない”MMORPG。国内サービス10周年を迎えた「リネージュ」運営スタッフインタビュー
 リネージュの10周年記念特設サイトで,4Gamerの編集長であるKazuhisaもコメントしているが,世の中には「変わることを求められるもの」と「変わらないことが美徳であるもの」が存在し,オンラインゲームはその後者に当たるに違いない。
 ジャンルの性質上,継続的なアップデートで次々とコンテンツを拡充し続けなければならない一方で,コミュニティを含むゲーム内世界の“居心地”もキープしなければならない。その微妙なバランスを上手に保ってきたリネージュだからこそ,こうして10周年を迎えることができたのだろう。今後も“変わらない”リネージュに注目していきたい。

「リネージュ 〜Eternal Life〜」公式サイト

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