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「リネージュ」開発者インタビュー:「エピソード5 ラスタバド〜混沌の塔〜」の魅力と,その後の展開について
■韓国人/日本人プレイヤーの好みを意識し,ストーリー面にも注力した「エピソード5」
まずは,日本では8月22日に実装されるエピソード5の魅力,とくに力を入れたところを教えてください。エピソード4と同様に,今回もまたずいぶんと多くの新要素が用意されていますよね。
キム・ミンギュ氏:
そうですね,数ある新要素の中でも一番ユーザーに見てもらいたいのは,「ラスタバド城」周辺のコンテンツです。これまでリネージュのメインストーリーは,ダークエルフとアデン王国の戦いを描いてきましたが,ラスタバドはその戦争のクライマックスに当たります。ダークエルフの本拠地であるラスタバド城には,「内城戦」と呼ばれる,制限時間内に次々と部屋を突破していくシステムが導入されています。
ラスタバドの魅力をさらに付け加えるなら,ダークエルフの本拠地ということもあって,強力な新アイテムが多数登場します。それに,ほかの狩り場に比べてドロップ率も高いんですよ。そのほかにも,メインストーリーから少しそれた,外伝的な要素の海賊島や影の神殿などもあります。
4Gamer:
そればかりか,ナイトの新スキルや新変身,新サモンなどなど,びっくりするくらいの新要素が用意されていますね。ところで,韓国では5月10日にエピソード5が実装されましたが,一番人気があったのはどのあたりなんでしょうか。
キム・ミンギュ氏:
なんといっても,新アイテムが人気ですね。単純に武具の種類が増えたからというわけでなく,性能面でも満足してもらえているようです。
キム・キュホ氏:
それと,今まではエピソードごとに物語が途切れ,ストーリーの連続性がなかったのですが,エピソード5はエピソード4とシナリオがつながっています。とくに海賊島は,物語だけでなく,ダンジョンそのものも拡張されているので,多くのプレイヤーから好評を博しました。
4Gamer:
4Gamerでは,エピソード4の日本実装前にもインタビューをさせてもらいましたが,そのときの話では,韓国のプレイヤーはレベルや強さを追い求め,ゲームの背景設定やクエストにまつわる物語の部分には,あまり興味を示さない傾向にあると聞きました。韓国で人気が高かったということは,相当ストーリーに魅力があるのでしょうね。
では,日本のプレイヤーに人気がでそうな要素はどこだと思われますか? あくまで予想でかまいませんが。
キム・キュホ氏:
韓国のプレイヤーはアイテムの性能だけを気にする傾向がありますが,日本のプレイヤーは,アイテム収集を楽しむ「コレクター気質」があるように思います。エピソード5には「ジェネラル」と「ビショップ」のセットアイテムというものが実装されるので,これが受けるんじゃないですかね。
それと,先ほどもいいましたが,海賊島にまつわるストーリー。これはエピソード4と連続性のあるストーリーなのですが,物語性はより強くなっているので,興味を持っていただけると思いますよ。
たしかに日本のプレイヤーは,ストーリーを含む「世界観」を重視する人が多いですね。コレクター気質については,ゲーム内だけでなく,現実世界でも当てはまる人が多いと思いますし。
ちなみに,その「ジェネラル」「ビショップ」セットアイテムをコンプリートするのは,やはり相当難しいのですか?
キム・キュホ氏:
いえ,そんなに難しいというものではないです。ただ,日本のプレイヤーはソロプレイを好む割合が高いと聞きます。セットアイテムが入手できる新ダンジョンというのは,パーティで挑まなければ狩りが成立しづらい場所なので,ぜひ仲間とパーティを組んで,セットアイテムのコンプリートを目指してほしいですね。
4Gamer:
なるほど。今回のエピソード5には,強力な新アイテムが多数用意されている一方で,「キャラクターの強さ」には影響しないNPC達や,ダンジョンに関するバックストーリーが充実していますよね。
これは先ほども話に出た,強さや性能を求める韓国プレイヤーと,キャラクター設定/ゲーム背景にまで興味を持つ日本のプレイヤー,その両方を満足させるために,意識して導入したのでしょうか?
キム・ミンギュ氏:
はい,おっしゃる通りです。もちろん韓国のプレイヤーを楽しませることは大切ですが,日本のプレイヤーのことも当然視野に入れています。エピソード4から5にかけて,世界観/物語性の拡充を図ったのは,まさにそういった点を意識してのことです。
キム・ジョンムク氏:
ただ,リネージュはグローバルな展開を行っているとはいえ,開発は韓国で行っています。そのため,日本人にはこれが好まれるだろうか,こんなアイテムは受けるだろうかと想像してみても,限界があります。……とはいえ,今回の来日目的の一つは,日本市場の生の声を聞いて情報を持ち帰り,開発に役立てることなんですけどね(笑)。
■運営期間が長いから,良い点も悪い点もある。持続的なゲームバランスの調整が,最大の課題
日本の公式サイト内特設ページなどで公開されている情報を見る限り,エピソード5のアップデート内容は,繊細でもあり,大胆とも思えます。開発で一番苦労したのは,やはりバランシングの面なのでしょうか。
キム・ジョンムク氏:
はい。一番難しかったのは,多種多様な新アイテムと,既存アイテムとのバランスを取ることでした。単純に高性能なアイテムを作ってゲーム内に実装するだけなら簡単ですが,その場合,既存アイテムの価値が失われてしまい,プレイヤーが不満を抱いてしまいますからね。
それと,変身スクロールによる変身時のディレイ調整も,細かな部分ですが苦労しました。熱心なユーザーは,24分の1秒というディレイタイムでさえ,気になるものなので。
4Gamer:
その気持ちは,一プレイヤーとして非常に理解できますね。
ところで,新たに追加される変身モンスターで,「このクラスにはこれがオススメ」というものがあったら,ぜひ教えてほしいのですが。
キム・ジョンムク氏:
とくに,クラス別のオススメというものはないのですが……,実は武器との相性は存在します。エピソード4までは,モンスターに変身しても能力的な変化はさほどなかったのですが(編注:変身により,移動速度や攻撃速度は変化した),エピソード5からは,変身後に装備する武器によって,その戦闘力が大きく変化します。
あるモンスターに変身すると,ツーハンドソードを持ったときに戦闘力が高まるのですが,鈍器系を持つと,攻撃スピードが極端に落ちる,といった効果がハッキリ出るようになるんです。
4Gamer:
ということは,自分の所有しているメイン武器に合わせて変身モンスターを選ぶと,変身のメリットが体感しやすいかもしれませんね。
キム・ジョンムク氏:
はい。新しい変身モンスターを一通り試しながら,自分にとって最適なものを見つけ出してください。
4Gamer:
変身とともに注目度が高い要素といえばペットですが,エピソード5で新ペットが登場する予定はないのでしょうか?
キム・ジョンムク氏:
韓国では,近日中に2種類のペットが実装されます。一つは可愛らしい犬で,韓国の伝統的な犬種「珍島(ジンドウ)犬」,もう一つは虎です。日本への実装がいつになるかは分かりませんが,必ず実装しますので,楽しみに待っていてください。
4Gamer:
前回実装されたペット,「ラクーン」の人気はどうでしたか?
キム・キュホ氏:
ラクーンは,従来のペットよりも育成が大変な割りには人気ですね。直接的な攻撃手段としてではなく,飼い主を支援する能力を持っている点が,ラクーンへ愛着を湧かせる要因なのかもしれません。実はこのラクーンの成功が,虎や珍島犬の実装を後押ししたようなものなんですよ。
4Gamer:
ペットは動物好きだけでなく,ソロプレイヤーからも人気がありますからね。新ペットの追加は多くのプレイヤーが待ち望んでいると思います。
ところで,ウィザードは「サモンモンスター」を,エルフは「精霊」を,専属の“お供”として召喚できますよね。ナイトやダークエルフに,そういった召喚獣を用意する予定はないのでしょうか。
キム・ジョンムク氏:
そういう要望もあるにはあるのですが,クラスの特徴と性格を考えると,ナイトとダークエルフに限っては,通常のペットで我慢してほしいですね。ナイトはそもそも,自らの力と技で接近戦を行う職業ですから,召喚獣に助けられるのも不自然です。ダークエルフは“アサシン”的な,単独での行動をイメージさせるクラスなので,同様に召喚獣は必要ないかな,と考えています。
4Gamer:
なるほど。となると,ナイト/ダークエルフでプレイしている人は,今後拡充されていく新ペットを積極的に利用していきたいところですね。
■リネージュならではの魅力を維持しつつ,さらなるコンテンツ拡充を図る
さて,ここからは,エピソード5の話を少し離れて,リネージュ全体のことをいくつか質問させてください。日本国内サービスが始まってから5年ということで,リネージュは大変息の長いタイトルになるのですが,既存のユーザーが離れていかない理由,リネージュだけが持つ魅力は,どこにあると考えていますか?
キム・ジョンムク氏:
韓国でも日本でも同じでしたが,MMORPGというジャンルの中でも,リネージュは割とと先行タイトルであったため,そのメリットはやはり大きいでしょう。日本市場で受け入れられた理由としては,ゲーム内での結束を深める強いコミュニティ性,展開が早くスピード感のある戦闘,レベル制限なく自由に装備できるアイテム,などではないかと思っています。
これは余談になりますが,実はリネージュでは,いまだレベルキャップに到達したプレイヤーがいないんですよ。これはつまり,まだ誰もキャラクターの能力を味わい尽くしてない,まだ誰も,最強のキャラクターを操作したことがない,ということです。プレイヤーがリネージュに飽きない理由は,そんな所にもあるのかもしれませんね。
4Gamer:
古参タイトルの課題としては,新規ユーザーをどう獲得していくか,という点がありますが,リネージュでは,新規ユーザー獲得に向けて,何か具体的な方策を立てていますか?
キム・ジョンムク氏:
エピソード5で,というよりは,従来から行ってきていることではあるのですが,初心者専用の修練所を設けたり,新規ユーザーが楽しめるよう,ダンジョンやフィールドモンスターのバランス調整などは随時行っています。
4Gamer:
今現在のリネージュの問題点として,クラス間のバランス崩壊が,一部プレイヤーから叫ばれています。かつては,ウィザード,エルフ,ナイトの3種族間に,いわゆる三すくみのバランスが綺麗に保たれていましたよね。しかし,ダークエルフやウィザードの上位魔法導入以降,そのバランスが崩れてしまったような印象を受けます。リネージュは対人戦に重きの置かれたゲームなので,こういったバランス面での問題は,新規ユーザーの獲得にかなり影響すると思うのですが。
キム・ジョンムク氏:
確かに,今指摘されたようなバランスの崩壊は,あるとは思います。しかし逆に,そういったクラス間の天敵関係を設けることは,必ずしも必要だろうか? という疑問も私たちにはあります。タフさで劣るウィザードでも,レベルを上げてすべての魔法を習得すれば,レベル差が開いているナイトに勝てる,ということがあっても良いのではないでしょうか?
ただ,今や「代表的なMMORPG」に成長したともいえるリネージュにとって,ゲームバランスの調整は最重要の課題なので,ゲーム内世界の動向には常に目を光らせ,迅速な対応ができるような体勢を整えています。
4Gamer:
ゲームとしての完成度が高いからこそ,今でも多くのプレイヤーに楽しまれている作品だと思うので,バランシングの問題には大いに期待しています。今後とも頑張ってください。
……そろそろお時間ということなので,最後に一つ,二つ。エピソード5以降のアップデート予定など,可能な範囲でいいので教えてください。
キム・ミンギュ氏:
リネージュ クロスランカーは,次のエピソード6で,一旦終了となります。エピソード6では,ラスタバドのすべての実態が明らかになるほか,「欲望の洞窟」の実装,カルマシステムの拡張,海賊島へ通じる海底ダンジョンの導入などを予定しています。
4Gamer:
クロスランカーの最終エピソード,実に気になりますね。では最後に,読者へのメッセージをお願いします。
キム・キュホ氏:
では3人を代表して私が……。長期に渡ってリネージュを愛していただき,本当にありがとうございます。今後もさらに努力して,より愛されるリネージュを作っていきます。また,今回は日本のプレイヤーの声をたくさん聞かせてもらったので,帰国したら,必ず開発作業に反映させます。期待していてください。
2005年11月に実装された「エピソード4 歴史と記憶」から,約8か月ぶりのアップデートとなる「エピソード5 ラスタバド〜混沌の塔〜」。高性能かつコレクター魂をくすぐるセットアイテムや,エピソード4から続く豊かなサブシナリオなどが用意されている。もう間もなく始まるダークエルフとの最後の戦いへ向け,早くエピソード5で実装される新エリアで腕を磨きたいものだ。
今回のアップデートも,単純に「新エリア・ダンジョンを追加しました!」というレベルではなく,幅広い楽しみかたが可能ないくつもの要素を提供し,そのどこに注目するかはユーザー次第という自由度が備わっているようだ。
インタビュー中にキム・ジョンムク氏が述べたとおり,リネージュは日本国内のMMORPG市場では先行者であり,MMORPGの選択肢がほとんどなかった数年前には圧倒的にアドバンテージがあった。とはいえ,プレイヤーは「愛着」だけで一つのタイトルをプレイし続けてくれるわけではない。既存プレイヤーを飽きさせない細かな配慮があってこそ,リネージュは今も愛されているのだろう。(ライター:麻生ちはや)
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リネージュ エピソード5 ラスタバド〜混沌の塔〜
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