オーバークロックメモリモジュールメーカーとして,北米や欧州市場で一定の地位を築いている米OCZ Technology(以下OCZ)。同社は2006年12月6日から2日間の日程で,アジア太平洋地区の報道関係者向け新製品&技術説明会,「OCZ Summit 2006 APAC」を開催中だ。 本稿では,新製品情報が語られた初日の模様から,とくに4Gamer読者の関心が高いであろう部分を紹介していきたい。
左:開会を宣言したOCZ Technologyのアジア太平洋地区ゼネラルマネージャのScott Suo(スコット・スオ)氏(General Manager, APAC, OCZ Technology Group Inc. Taiwan Branch)
右:新製品情報を明らかにする,OCZ Technologyのマーケティング&コミュニケーション担当副社長,Alex Mei(アレックス・メイ)氏(VP of Marketing and Communications, OCZ Technology)
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グラフィックスカード市場参入を謳うスライド
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さて,発表会で最も衝撃的だったのは,OCZのグラフィックスカード市場への参入が発表されたことだ。メイ氏は「詳細は次のCESで」と,2007年1月に開催されるトレードショウ「2007 International CES」において具体的な内容を発表すると述べるに留めていたが,NVIDIA製GPU(グラフィックスチップ)を採用することだけは確かで,「GeForce 8800 GTS」採用製品のイメージが実際に公開されている。 なお,アジア太平洋地区テクニカルディレクターのLawrence Lee(ローレンス・リー)氏は,「OCZは,ハイエンド市場にのみ注力します。ミドルレンジやローエンド市場向けにカードを投入する予定はありません」と断言。メイ氏が「『OCZ』は『Over ClockerZ』の略。オーバークロックを行う人達に向けた製品を展開していきます」と説明したのを受ける形で,オーバークロッカーに向けた,高い冷却能力を持つGPUクーラー搭載モデルの投入を示唆していた。
製品ボックス案のイメージ
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ちなみに気になる日本国内展開については「もちろん参入するつもりで動いていますが,現在のところ,代理店などは決まっていません。いいところがあれば教えてください(笑)」(リー氏)とのこと。2006年12月時点だと,OCZ製メモリモジュールの国内販路はお世辞にも充実しているとはいえないが,グラフィックスカードで代理店が決まれば,電源ユニットなども含めて入手しやすくなる可能性がある。今後に期待したい。
■水冷&空冷両用オーバークロックモジュールをデモ ■Shuttle製のゲーマー向けPCなども
3種の新製品を発表するスライド
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メイ氏はまた,一部海外サイトなどでその概要が報じられていた,水冷&空冷両用モジュール「Flex-XLC」と,ATXサイズの1000W電源ユニット「ProXStream」,銀の棒が複数埋め込まれたCPU水枕「Silver Array」(開発コードネーム)を発表。Flex-XLCに関しては,動作クロック557.9MHz(DDR2 1116相当)設定の1GBモジュール4枚差しで24時間以上安定して動作したというデータを示し,パフォーマンスと信頼性の両方をアピールして見せた。
Flex-XLCの水冷デモ機。4枚差しされたFlex-XLCを,パイプがつないでいるのが分かる。デモ機は本体前面を使って冷却していた。なお,右下のカットはDDR2 1116相当で4枚差しシステムが24時間以上連続稼働した“証拠写真”(※右下の画像はクリックすると全体を表示します)
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開発コードネームSilver Array(左)。CPUとの設置部に銀の棒が埋め込まれている。右は会場にさりげなく展示されていたNVIDIA SLIおよびCrossFire認証済みメモリモジュール。ヒートスプレッダのデザイン能力に定評のあるOCZらしく,非常に分かりやすい製品になっている。ちなみにこの2製品は発売済み
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Stan Cheng氏(Sales Division Vice President, Shuttle)
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このほか初日のセッションでは,OCZと密接な関係を持つパートナーとして,ASUSTeK Computer(以下ASUSTeK)とShuttleが紹介された。3社は,共同でオーバークロック市場の拡大を図るとしており,メモリ周りの技術や冷却面でOCZが協力したASUSTeKのマザーボードやShuttleの小型PC「XPC」,あるいはやASUSTeKのマザーボードを搭載したShuttle製PCなどが,今後登場する予定という。 Shuttleの営業部門副社長であるStan Cheng(スタン・チェン)氏は「これまではサイズの大きなPCケースだけが,オーバークロックメモリやハイエンドグラフィックスカードをハンドリングできていました」と切り出し,同社の小型PCシリーズ「XPC」では,熱効率を高めてこれらのパーツに対応したと強調。同時に,OCZとの協力によって,オーバークロック動作のためのチューンを行った新モデルや,詳細未発表の「将来のハイエンドGPUによるSLIにも対応する」(同氏)という,電源ユニットを本体前面上部に搭載するユニークなミドルタワーPCを展示していた。 これらは基本的にPCとして提供されるが,日本では,日本Shuttleによってベアボーンキットとして販売される可能性もあるとのことだ。
上段:既存のCore 2ファミリー対応ベアボーン「SD37P2」をベースに,マザーボードの搭載コンポーネントやBIOSなどでオーバークロック動作の安定性を追求したとするモデル
下段:ゲーマー向けを謳うナゾの新作。将来のハイエンドカードによるSLIに対応とのことなので,拡張スロット周りには相当な余裕が設けられるはずだ。内部の撮影は許可されなかったので,別の角度からの2カットでご容赦を
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会場には,OCZのロゴが入った,青色のまぶしいA4Tech製(のOEM品だろう)マウスもあった
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ゲーマーのなかには,OCZというメーカー名がそもそも初耳という人も少なくないと思われるが,オーバークロックメモリメーカーとして出発した同社は,次第にPC環境全般へと手を広げつつある。とくに,グラフィックスカード市場参入と,ASUSTeK ComputerやShuttleとの連携あたりは,日本市場でも近い将来に何らかの動きを呼びそうで,興味深いところだ。 グラフィックスカードという,PCゲーマーとは切っても切り離せないデバイスのメーカーとなったこのタイミングを機に,OCZという名を記憶に留めておくといいかもしれない。(佐々山薫郁)
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