[COMPUTEX 2006#17]ハイエンドグラフィックスカード市場に参入するOEMの雄「Foxconn」はゲームイベントのスポンサーにも
COMPUTEX TAIPEI 2006会場のブースではなく,隣接する高層ビル「台北101」でのみグラフィックスカードを展示していたHon Hai Precision Industry(Foxconn)。非常に分かりづらいところにあって,見つけるまで相当な時間を要した
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コンピュータ業界に身を置くものなら,知らぬ者はないほどの大企業,Hon Hai Precision Industry。同社の本業は「OEM」や「ODM」と呼ばれる製造委託請負で,扱っている品はそれこそ,PC本体から,液晶ディスプレイ,テレビ,マザーボード,コンシューマゲーム機,ネットワーク端末,携帯電話に,ケーブルやコネクタなど,“作っていないものはない”ほどだ。ただ,あくまで製造委託先だったため,これまで本誌読者のようなエンドユーザーに,名前はほとんど知られていなかった。 この状況を打破するため……かどうかは分からないが,2005年の春に,同社は「Foxconn」(フォクスコン)ブランドで,リテール/チャネルと呼ばれる小売り市場に参入。北米を中心に,マザーボードで一定の成果を上げているようである(国内では参入こそしたものの,残念ながらまだ成功していないが)。
あれから1年。Hon Hai Precision Industryは,グラフィックスカード市場にも,Foxconnブランドで参入するという,新たな戦略を発表した。
■Foxconnはハイエンドグラフィックスカードに注力
さて,Hon Hai Precision Industry(以下Foxconn)が参入するのは,当面,ハイエンド製品が中心となる。これについてFoxconnのVGAグローバルプロダクトマネージャー(VGA Global Product Manager, Channel Service Devision, Personal Compiter & Enterprise Product Business Group)であるSteven Chen(スティーブン・チェン)氏は次のように語る。
「価格競争になりやすいメインストリームやバリュークラスでは,利幅が小さすぎてリスクが大きい。こうしたバリュークラスについては,我々はOEMビジネスですでにシェアを築いていて,新たに開拓する意味を感じない。それよりも,リファレンスデザインがしっかりした,設計にコストのかからないハイエンド製品で勝負したほうがいいと考えた。これは利幅が大きく,ビジネスとしては効率がいい。また,Foxconnのハイクオリティなイメージとハイエンドクラスのグラフィックスカードは消費者にとっても分かりやすいのではないかと思う」
台北101ビル内のプライベートブースに展示されていたのは3モデル。チップクーラーも含めて確かにリファレンス仕様だ。いずれもワールドワイドでは8月中旬から店頭に列ぶ予定で,時期は若干前後するものの,日本でのリリースも決定したという。 筆者は意地悪にも「日本のPCユーザーはまだほとんどFoxconnの名前を知らないと思う。Foxconnに何らかのブランドイメージを持っているのは業界関係者だけだと思うが……」と意見してみた。「そう。我々もそれは理解している。だから,うまく報道してくれ(笑)」(Chen氏)。 そんな冗談に続けて同氏は「日本市場はハイエンドグラフィックスカードが売れる特異なマーケット。進出し甲斐がある。ブランドイメージを確立させるための努力は惜しまない」とコメント。日本市場進出に掛ける意気込みは相当なもののようだ。
価格は以下に示したが,「いずれも,発売1か月後には100ドル程度低くなることを覚悟している」(Chen氏)とのことである。
左:「FN-N795M4D2-OD」(GeForce 7950 GX2)。コアクロック500MHz,メモリクロック1.2GHz相当,メモリ容量512MB×2と,見事にリファレンスどおりだ。予想実売価格は599ドル
中央:「FV-N79XM3D2-OD」(GeForce 7900 GTX)。こちらも頂点シェーダユニット700MHz,ピクセルシェーダユニットが650MHz,メモリ1.6GHz相当と,リファレンスどおりのクロックで動作する。予想実売価格は499ドル
右:「FV-N79TM2D2-OD」(GeForce 7900 GT)。頂点シェーダユニット470MHz,ピクセルシェーダ450MHz,メモリ1.32GHzで,やはりリファレンスクロックの動作となる。評価の高くないGeForce 7900 GT用リファレンスクーラーまでそのままというのはちょっと残念だ。予想実売価格は399ドル
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■ハイクオリティさが感じられる(?)これまでにない化粧箱
さらにブースでは,GeForce 7950 GX2カードの化粧箱プロトタイプが展示されていた。現時点におけるデザインは2種類あるが,それについてChen氏いわく「“Foxconnブランド”の製品ということを,一目見て分かってもらうために,特徴的なデザインにしたんだ。シンプルな感じで,見るからにハイクオリティさが感じられるだろう?」
FN-N795M4D2-ODの化粧箱。ほかの製品も同種のデザインになるらしい。このピカソ風デザインでFoxconnブランドを定着させることを狙うそうだが,さて
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……ハイクオリティさが感じられるかは,今の時点では何とも言えないが,確かに店頭に並んだとき,目を引くデザインではある。 ハイエンドグラフィックスカードの化粧箱は,モンスターや宇宙人,中世風の鎧を着た戦士,サイバーコスチュームに身を包む美女といったものが多かった。それだけにこの無機質な,幾何学的デザインが継続的に投入されれば,確かに,消費者に「Foxconnブランドである」ということを認識させること自体は,比較的時間も掛からずできそうだ。(トライゼット 西川善司)
■ゲームイベント「KODE5」サポートでゲーマーとしても注目の存在に?
Hall 2のFoxconnブース。大会用に,ゲームをモニターするディスプレイが置かれているのが分かる。「ハードウェア業界のイベントでなぜゲーム大会?」と思うかもしれないが,COMPUTEX最終日は“一般日”となり,がらりと趣を変え,(台湾の)エンドユーザーのためのショウになるのだ
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また,COMPUTEX TAIPEI 2006会場の同社ブースでは,Foxconn(とCorsair Memory)がスポンサーになっているゲーム大会「KODE5」の台湾ファイナルが行われた。 KODE5は2006年に発足した大会で,世界各地の予選を勝ち抜いた優勝チーム/プレイヤーが,「Global Finals」と呼ばれる大会に進出するというルールのもの。台湾ファイナルはまさにそのGlobal Finals進出をかけた台湾予選決勝という位置づけになる。 KODE5では「Counter Strike 1.6」の5対5チーム戦,「Warcraft: The Frozen Throne」「Quake 4」が採用されているが,「Quake 4はプレイヤーが少ないから(笑),台湾ではやらない」とは,FoxconnブースにいたKODE5実行委員会のLester Lau(レスター・ラウ)氏。Counter Strike 1.6には19チーム,Warcraft: The Frozen Throneには31人のプレイヤーが集まったという。
取材時は決勝前だったが,ブースでは練習している人達がいた
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現在のところ,KODE5の予選が日本で開催される予定はないが,Foxconn製品が国内で浸透すれば,その可能性は(少しかもしれないが)上がってくるはず。その意味でも,Foxconnのリテールグラフィックスカード戦略には,ゲーマーとして注目していきたい。(佐々山薫郁)
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