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[プレイレポ]言語読解+女性向け恋愛+ホラー。異形の言語を読解しながら人ならざる彼と交流する「文字化化」は予想外の名作だ

 Steamでは日々多くのゲームが発売されており,そのすべてをチェックするのはかなり困難だ。「人気の新作」で取り扱われている作品に絞って見たとしても,数が多く,また似たようなジャンルを取り扱っているものも多いため,面白そうな作品を見つけるのはなかなか難しい。

 しかし,そのなかで一際目を引く作品があった。ということで,今回の記事では,筆者がストアページの説明文を読んで強く興味をそそられた作品である「文字化化」のプレイレポートをお届けする。

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 「文字化化」は八名木氏製作のインディー/同人ゲームだ(クレジットを見る限り個人制作といってよさそうだ)。ストアページの説明文によると「言語解読」「ホラー」の要素を含んでおり,それに加えて「女子向け恋愛」の要素も含まれている。

 「女子向け恋愛」を取り扱っているゲームなので,いわゆる「乙女ゲーム」に区分してもそれほど大きくは間違ってなさそうではあるが,作者本人が「乙女ゲーム」という説明をしていないため,この記事で積極的に「乙女ゲーム」という語を用いるのは避ける。

 本作のストアページを初めて目にしたとき,特に気になったのは「言語解読」の部分であった。「言語解読」は(過去にも例はあるが)近年特に「7 Days to End with You」「Chants of Sennaar」などのインディーゲームで取り扱われるようになってきた題材で,まだまだ作品数が少なく,一部の好事家たちの間で楽しまれている……という印象のある要素だ。

 そんな,ややマニアックな要素である「言語解読」に加えて「女子向け恋愛」であり,さらに「ホラー」であるというのは,かなり意外性のある組み合わせといえるだろう。「一体どういうゲームなんだろう?」と,非常に興味をそそられた。

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 ゲームは,いきなり異界っぽい場所で怪異っぽいものに襲われる(?)場面からスタートする。雰囲気はかなりおどろおどろしく,また,怪異登場時の演出がややジャンプスケア的であるため,「ホラーがかなり苦手」という人にとっては(特にゲーム序盤部の何が起こるのかよく分からないパートは)結構怖いかもしれない。

 とはいえプレイしていくと徐々に世界観に慣れてくるため,怖さは緩和されていくような印象があった。筆者としては本作を「ホラゲーが苦手な人間は絶対プレイできない!」ほど怖いとは思わない。

 本作は基本的にはオーソドックスなノベルゲームであり,場面によってはポイント・アンド・クリックの形式で画面上の何かをクリックすると進行する。一部を除いてクリックしなければならないポイントが難しい場面はあまりなく,ゲームに不慣れなプレイヤーであっても進行すること自体は困難ではないだろう。

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 ゲームをそのまましばらく進行すると,異界らしきその世界の住民とコミュニケーションをとる機会が訪れる。そこで登場するのが,本作の最も特徴的な要素である「言語解読」だ。

 異界の住民たちが話す言語は意味が分からず,プレイヤーはそれが何を言っているのか推理しながら遊ぶことになる。画面に赤線で表示された言葉は,クリックすることで予測した意味を書き留めておける。

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 たとえば上のスクリーンショットだと,「フードの男」はこちらを指さしているので「You」に相当する言葉であろうことが推測される。では一旦仮に「あなた」という言葉を入れておこう……というように,言語を推理しながら遊ぶのが本作の醍醐味だ。

 また主人公がやけに優秀なため,独り言的にかなり的確なヒント(というか答えそのもの)を提示してくれることも多い。反面,文字が視覚的に判別しづらく,文字と意味を紐づけて覚えづらいなど難しい部分もあるが,言語解読ゲームとしては入門的な難度になっている。ほとんどの場合単語の意味を適切に訳すというだけで,語形変化がどうこう,というような高度な言語解読能力は要求されない。

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 ゲーム中にはみずから異界人たちの言語を喋ってコミュニケーションをとらなければならない場面も存在する。選択式であるため,ほとんど言語が解読できてなくてもゲームは進行するのだが,流してしまうと話の内容が分からなくなる。よって,解読する機会があった単語は積極的に意味を特定する必要があるだろうし,特定できない場合でも推測をメモしておいたほうがよいだろう。

 筆者は一応エンディングまでプレイしたが,何が起こっているのか,どんな会話が行われているのか理解できない部分も多くあった。なので先ほど「入門的な難度」とは書いたが,「簡単」とは言えないとも思う。一度特定/推理した言葉はやり直した際も残るため,何周もプレイすることで物語やキャラクターの心情への理解が深まっていく作りとなっている。

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 ここからはストアページに掲載されているキャラクターを紹介していこう。

 まずは「這いばい男」。名前の通り這って移動する長髪のキャラクターだが,大体の場面で親切であり好意的に接してくれるため,脅威度は低い。序盤から主人公と行動する機会が多く設定されており,かなりメインキャラクター的な印象がある。ルックスも序盤のうちは怖く感じるが,慣れてくるとなかなか可愛らしく見えてくるから不思議だ。

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 「銀髪の男」はかなり長身かつ長い銀髪を持つキャラクターだ。詳細は不明だが,出会うロケーションや風貌から,どことなく医師っぽさがある。彼もどちらかといえば親切寄りのキャラクターで,いち早く主人公が言語が分からないことを察し,有用な言葉をいくつか教えてくれる。

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 続いて「長鉈男」。言葉どおり長い鉈を持っており,彼との遭遇は危険を伴うことが多い。暴力的で野蛮なキャラクターであるが,関わっていくうちに暴力性以外のいろいろな側面が見えてくるので面白い。

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 「隙間の男」はありとあらゆる隙間に現れる怪異で,やや粘着質なストーカー気質を感じさせるキャラクターだ。登場の仕方もなかなか不気味であり,いままで紹介したキャラクターの中では一番怪異っぽさが強いキャラクターであるように思う。敵意があるわけではないのだが,こちらの常識が通用せず,困らされることも多かった。

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 最後に名前が挙がっているのが「赤い傘の男」だ。「隙間の男」とは逆に,外見からはあまり怪異感が感じられない。だが,ネタバレとなりそうな記述は控えるとしても,ストーリーの根幹に関わっているらしきキャラクターであり,遭遇時には危険が伴う,ということは言ってしまってもよいだろう。かなりミステリアスなため,人気が出そうなキャラクターだ。

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 ストアページで紹介されている以外にも,本作には特徴のあるキャラクターが目白押しだ。かなり脅威度が高く接触に命の危険が伴うキャラクターもいれば,どことなくユーモラスで親しみやすいキャラクターもいる。それぞれ独自の行動原理やルールのようなものを持っていて,言葉が分かるようになるにつれて,キャラクターとの接し方も理解できるようになっていく。

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 個人的に最も特徴的なキャラクターだと感じたのが主人公だ。主人公は一見普通の人なのだが,ゲームを進めていくとポジティブかつコミカルな性格をしていると分かってくる。

 また,かなり順応性が高く,なんだったら過酷な状況を楽しんですらいる。前述の通り優秀な言語解読能力も持っているので,プレイヤーにとってはクスッとさせられ,勇気づけてくれ,攻略を助けてくれるかなり心強い存在でもある。

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 本作のストーリーは非常に先が気になる作りになっており,言語とともに世界のルールや怪異たちの行動原理が明らかになる仕組みも相まって,個人的には非常に楽しめた。

 もともと言語解読ゲームとして本作に注目していた筆者だったが,プレイしていくうちに,どちらかというとキャラクターや世界観の魅力のほうに興味が移っていった。謎に満ちた世界観が,言語を解読していくことで徐々に理解可能なものになっていく,という体験自体が面白いので,恋愛ゲームに一切関心がないプレイヤーが遊んでも楽しいだろう。

 余分なあらすじなどがなくいきなり異界から始まる,という思い切った構成も個人的には非常に好みで,中だるみすることなく遊べた。ただ,ストーリーや世界観,キャラクターが魅力的な反面,ガッツリした恋愛要素を期待するとやや肩透かしの可能性もある。

 というのも,本作は言語解読ゲームであるため,キャラクター会話に用いられる語彙のほとんどが極めてシンプルなものだからだ。また,筆者も数キャラクターの個別エンディングを見たのだが,言語の判別が不十分だったためか,どの程度イチャイチャしているのかなどはいまいち分からないシーンもあった。

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 総評すると,本作は非常にユニークな世界観とキャラクターを備えたノベルゲームで,言語解読ゲームの入門作としてもよい作品だ。先述のキャラクター個別エンドを含めエンディングもかなりの量があり,展開ごとのちょっとしたテキストの差異などのバリエーションも豊かで,価格帯からするとボリュームも充分という印象である。女子向け恋愛ゲームや言語解読ゲームに現時点であまり興味を持っていないプレイヤーでも,世界観にピンと来たならば,きっと楽しく遊べるだろう。

 ただ,ホラー要素はかなりあり,グロテスクな描写も多いので,そういったものが苦手な人にとっては注意が必要な作品である。たとえば「ダンガンロンパ」シリーズなど,グロテスクな展開を含むノベルゲームを遊んだことがあるプレイヤーであればおそらく平気だと思うが,そのあたりは個人の許容範囲によるので断言はできない。

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 「文字化化」は現在SteamおよびDLsiteで販売中だ。体験版も配布されているので,自分に合うかどうかを試してから購入するのがよいだろう。筆者としては事前情報で期待した以上に楽しめた一作で,かなりおすすめだ。ぜひとも遊んでみてほしい。

「文字化化」公式サイト

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