●Preview#34:ソルジャー オブ フォーチューンII〜二重螺旋〜
Text by Okutani
写実的な表現で本家Q3Aをも凌ぐリアリティを実現
ベトナム戦争の英雄にして傭兵,ジョン・ミューリンズ氏監修によるRaven
Software社のSoldier of Fortuneが帰ってくる。日本ではサイバーフロントから「ソルジャー
オブ フォーチューンII 〜二重螺旋〜」というタイトルで発売される"Soldier of FortuneII:Double Helix"(以下,SOF2)は,同名の軍事愛好家向けの刊行誌をベースにした,第1人称視点型のシューティングゲーム(FPS)で,プレイヤーはテロリストと戦う傭兵として,世界各地を転戦することになる。
SOF2では新たに,バイオ工学で生成された"ジェミニウイルス"を操る国際テロリストが暗躍しはじめる。ジェミニウイルスが人類に大きな影響を及ぼす前にこの陰謀を阻止するというのが,SOF2でのプレイヤーの目的だ。前作では物議をかもし出した流血のリアリスティックな描写に磨きがかかっているばかりでなく,前作での問題点や改善できる部分を前向きに見直した作品であるのだ。
Raven Softwareは,Doomのゲームエンジンを公式にライセンスして制作した「Heretic」以来,id Softwareとは非常に親密な関係を続けている。前作もQuakeIIエンジンを使ったものだったが,QuakeIIの発売からかなりの時間が経っての登場だっただけに,グラフィックス面ではファンを魅了するには至らなかった。そんな経緯もあり,「QuakeIII:Arena」(以下,Q3A)のものを大幅に改良したSOF2では,現実的な風景を見事に表現し切っているのだ。その好例ともいえるのが地形のレンダリングシステムだ。Q3Aの公式追加パックだった「Team
Arena」で使われたものが広大な屋外の表現に最適化されていたとはいえ,RavenがSOF2で開発した"ROAM地形システム"は,比較にならないほど素晴らしいものである。どんなに広いマップであっても,個々に茂っている草木が風に揺れていたり,リアルな視覚効果を実現した雨や雪,霧などの気象表現にも力を入れており,ジャングルであれ極地であれ,広大な屋外の雰囲気を十分に堪能できるはずだ。
もっとも,どんなに写実的なグラフィックス効果を達成していても,ゲームプレイ自体はRainbow Six的なコンバットアクションというよりも,Quakeと同じような敏速なシューティングゲームに終始しているのは変わらない。ただ,「よりリアルなゲーム世界にしよう」という開発チームの意図は,さまざまな部分で伝わってくる。伏せながら進んだり物陰に隠れたりという隠密行動にも重点が置かれ,サイレンサーを使った敵の暗殺などといったアクションも,より効果的にミッション内容に組み込まれていることだろう。
ちなみにRaven Software社は,同じくQ3Aエンジンを使って制作した「Star Trek Voyager:Elite Force」(以下,STVEF)が最新作であるが,現在は非常に手広い開発作業を続けている。LucasArts
Entertainment社との協力で「Star Wars Jedi KnightII:Jedi Outcast」を手がけているばかりでなく,情報こそ皆無だがid
Softwareに代わって「QuakeIV」を開発していることでも知られている。
目玉まで動くキャラクターモデル
SOFで使用されていたキャラクターのレンダリングシステム"GHOUL"は,プレイヤーが腕や頭など個々の体部に照準を定めることを可能にし,相手も撃たれた場所によっては足を引き摺るなどしていた。このときは,個々の部位に分かれたあらかじめ作られたモデルをかけ合わせて一つのキャラクターを作り上げるような手法が使われていた。それはそれで効率の良いものだったのだが,少ないソースの組み合わせなのでバリエーションが少なく,1体につき300ポリゴン程度という制約もあって,大きな効果を生み出すまでには至らなかった。
SOF2では,その第2世代となる"GHOULII"を開発しており,メッシュベースではなく分類体系的なスケルタル・アニメーション(先に骨格を制作してアニメーションを付け,そこに肉となるポリゴンを付着させていく。欧米のPCゲームでは一般的になりつつある技術)を導入している。弾丸は,このキャラクターモデルのピクセルごとに反応するため,より正確なダメージ描写を可能にしているのだ。これにより,頭部だけでも14か所にも及ぶ場所に分かれてダメージポイントが設定されるなど,ヒットゾーンが36か所にまで増加しているのである。またGHOULIIシステムはメモリに影響を与えることもなく,キャラクターモデルに帽子やメガネ,個々の武器を加えることができるのである。
さらにテクスチャなども随時変更したり追加したりすることが可能なため,事前に決定された場所ではなく,撃たれた場所ごとにユニフォームに弾丸の穴が開くなどの表現も可能になっている。キャラクターモデルのポリゴン数も,前作の10倍に相当する3000ポリゴン程度にまで向上し,目玉まで動かせるようになっているのがコワイくらいだ。本作では,ハリウッドのスタントマンを雇って,モーションキャプチャーを使ったアニメーションを使用しており,前作でも緻密にアニメーションされていたようなナイフを投げたり銃を振り回したりするような動作も細かくなって復活する。1024×1024ドットに対応したテクスチャマップも,STVEFのものの4倍,SOFと比較すれば実に16倍の緻密さになっており,顔にペイントや傷,ホコリなどが付いた男たちをアップで見ても見苦しくない。このようなテクスチャを表示するにはかなりのシステムでなければならないと思われ,SOF2はGeForce3に最適化される予定になっている(もっとも,テクスチャの細かさは設定画面でレベル変更できるので安心だが)。
武器のモデルでさえ平均1500ポリゴンを使って描かれており,クリップなども含めて非常にリアリスティックになっているが,キャラクタータイプによって保有している武器が異なっているなど,地域差を出したような試みがなされているのも見逃せない(多くのテロリストたちがAK-74で戦っているのに比べ,米軍の海兵隊ならM-4を持っていたりということである)。銃器だけでなく,手榴弾もすべて地域によって違ったタイプのものが登場し,武器は全14種類,手榴弾だけでも10種類も用意されているのだ。これらの武器は,敵を倒すことによってのみ入手可能になるようである。
シングルもマルチも十分楽しめる
さて,ゲーム内容はというと。
シングルプレイヤーモードでは,熱帯雨林のコロンビアを始めとし,香港やカムチャッカ半島,プラハ,ジョーダンなどへと飛び回り,ジェミニ・ウィルスの黒幕を突き止めるために奔走する。合計10種類のミッション制となっており,これらミッションは,大小合わせて70種類のマップで構成されていてボリュームたっぷりになっているようだ。"搭乗型レベル"といわれる,前作の列車レベルのようなものも用意されているようだが,ほかにもジープやヘリコプターに乗っての戦いを経験するようなものまである。ヘリコプターでは,パイロットが操縦する傍らで,マシンガンを使って敵を攻撃するという形になっている。中には,海兵隊の一個師団に指示を与えながらミッションをこなしていくようなマップもある。
Raven Softwareの開発チームは,自分たちで開発した技術に命名するのが好きなようで,SOF2用に新しく開発されたのが"ICARUS
2スクリプティングシステム"と呼ばれるものだ。ICARUS 2はSTVEFで開発されたもののアップグレード版で,この新システムにより,プレイヤーにはミッションを達成するための道筋が複数用意されることとなり,直線的なストーリーラインとは思えないようなゲームの進行を体験できるだろう。
オリジナルのSOFでは,NPCが取る行動はすべてレベルデザイナーによってスクリプトされていたのだが,SOF2になると,NPCは個々の目的を与えられるという形式に変更された。また周囲のオブジェクトには敏感に反応するようになっていて,プレイヤーとの銃器の差が大きければテーブルをひっくり返して後ろに隠れたりという,少しでも長く生存できるような工夫をしてくるという。複雑なストーリーが絡む場合はともかく,これらの行動をスクリプトすることなくNPCが自動的に行うというのは驚くべき行為だ。
ジョン・ミューリンズ氏自身は,アドバイザーだけではなく傭兵の親分――つまりプレイヤーキャラクター自身――となって登場するが,ゲームが進んでいくうちにはNPCとの会話シーンも登場するなど,Half-Life以降のFPSでは不可欠なゲーム内ムービーも,随所に含まれているようだ。SOF2で相棒として登場するのは,生物学の知識に秀でたマデライン・テイラー(前作の終盤にも登場)と,ベトナムやCIA諜報員としての経験も持つサム・グラッドストーンの2人。実際にプレイヤーがコントロールはできないが,マップ上でいっしょに戦ってくれたり,ミッション遂行に必要な情報を提供してくれたりするだろう。テイラーとは,ゲーム内に登場する現代的なコミュニケーションツールを利用して連絡を取り合いながら進めていく局面も多そうだ。ほかにも工作員や一般市民など,多くのNPCが登場すると予想される。
SOF2では,ミッションやマップを自動的に生成するジェネレータ機能も用意されており,半永久的にゲームを楽しめるようになっているのはありがたい。これはパラメータの調節で簡単に作成できるようなもので,マップのサイズや環境,ミッションの目的などを設定してランダムに作り出すことができる。ミッションジェネレータは,ストラテジーゲームではお馴染みではあるものの,SOFのようなシューティングゲームでは珍しい機能であるため,発売後にオンラインコミュニティにどのようなインパクトがあるのかは興味のあるところだ。面白いマルチプレイヤー用のマップというものは,依然として職人的な才能と作業によるところが大きいので,どの程度ミッション内容やレイアウトの変化に違いが出てくるのかが,非常に気になる部分である。
発売は,アメリカでは5月頃の予定になっている。デモ版の予定はあるものの,それが発売前になるのか後に出されるのかさえ,現時点では決まっていないようだ。ともかく,これだけの期待作をプレイできる日が,もうそこまでやってきていることが喜ばしいといえるだろう。
Soldier of Fortune(R) II: Double Helix (C) 2001 Activision,
Inc. Developed by Raven Software Corporation. Published and distributed
by Activision, Inc.
Activision(R) is a registered trademark of Activision, Inc. Soldier
of Fortune(R) is a registered trademark of Omega Group, Ltd.
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