●Preview#23: Pool of Radiance:Ruins of Myth Drannor =page 1= Text by 奥谷海人 Rool of RadianceはRPGの王道 Stormfront Studiosといえば,今でこそシミュレーションゲームでは名の通ったSSI(Strategic Simulation Inc.)の中核を担う古参の開発元である。しかし,1987年にはテーブルトークゲームAD&D(Advanced Dungeons&Dragons)のライセンスを取得し,"ゴールドボックス・シリーズ"と呼ばれる12種のRPG作品を輩出したことは,日本では余り知られていない事実だろう。近年は販売元が混乱しており,SSI自体がMindscapeからBroderbund,Hasbro Interactiveへと目まぐるしく吸収された後,現在ではフランス大手のUBI Soft EntertainmentにStormfrontを含めたゲーム部門が買収されたことによって,アメリカではようやく今月末のリリースにこぎつけた。上記ゴールドボックス・シリーズは,D&Dのルールに裏付けられた絶妙のゲームバランスを生み出すキャラクターやアイテムの数々を搭載し,テーブルトークファンだけではなくコンピュータゲーマーの人気をも掴み取っている。特に,1988年にリリースされた第1作の「Pool of Radiance」を始め,そこから続く「Curse of Azre Bonds」「Secret of Silver Blazes」「Pool of Darkness」の4連作,さらに「Eyes of the Beholder」や「Champion's of Krynn」などはゴールドボックス・シリーズでも人気が高く,今でも古いゲーマーには思い出の作品となっていることだろう。 Stormfront Studiosの新作「Pool of Radiance:Ruins of Myth Drannor」(以下,PoR)は,D&Dの公式ルール第3エディション(名称が混乱するが,AD&Dは第2版にあたる)に則った世界初のゲームだ。同じく第3エディションに対応した「Neverwinter Nights」(Interplayから発売予定)が,2002年2月まで発売が延期されているため,最新ルールの面白さを味わってみたいなら,PoRは願ってもいないゲームだといえる。 D&Dシリーズは「指輪物語」と同じく数多のRPGの源流になっているともいわれるほどの作品で,「Ultima」「Might&Magic」など,D&Dの影響を受けたゲームを挙げればキリがない。D&Dのライセンスを獲得したSSIのゴールドボックス・シリーズも,後発でありながらも由緒正しい"正統派"として見られていたのである。その流れを引いたPoRは,最新技術を使いながらも古典的なRPGの王道を突っ走る作品となりそうだ。 繊細なグラフィックスとスムーズなアニメーション 13年ぶりに開発されているPoRは,1988年にリリースされた同名タイトルの10年後の世界を舞台にしており,ストーリー面では完全な続編という立場を取っている。物語は,フォーゴットン・レルムズ地方(Forgotten Realms)での1369年が舞台となっており,前作のドンピシャ10年後の世界である。ニューフラン(New Phlan)という街の地下で,前作のエンディングで封印されたはずの"光輝の湖水"(Pool of Radiance)が再び妖美な光を放ち始め,その光に触れた警備兵たちが次々とアンデッドになってしまうという部分から始まる。街のグランドメイジらは,エルフ族の廃墟都市として知られ,フォーゴットン・レルムズの中でも最も恐れられている場所であるミス・ドラノー(Myth Drannor)に原因があることを突き止めるのだが,そこに送られたアセンをリーダーとした調査団も消息を絶ってしまう。プレイヤーは2回目の調査団のリーダーとしてミス・ドラノーの一帯に潜入し,失われた先発隊とこの湖に関するミステリーを追っていくのである。
PoRのグラフィックスエンジンは美しく,手書きのタイルセットによって作られた2Dの背景はバルダーズゲートシリーズにも見劣りしない緻密さだ。現状では解像度が800×600ドットに固定されているのが残念だが,キャラクターやモンスターは3Dで製作されているため,巨大なモンスターも容易に画面上に登場させることができる。大きなものなら,1体で画面の半分くらいまでのモデルをレンダリングさせることができるという。 ターン制ながらアクションが豊富なコンバット PoRはアクションを中核にしたゲームとなり,ストーリーが進行する過程ではダンジョンや廃墟での戦いがメインになる。このためNPCとの会話などはほとんどなく,同じくフォーゴットン・レルムズを舞台にした"バルダーズゲートシリーズ"を想定しているプレイヤーは,少し戸惑いを感じるかもしれない。これは,キャンペーン制のような形式を採るバルダーズゲートのようなゲームではなく,テーブルトークらしいモジュール的な雰囲気を演出するための仕様なのだ。コンバットシステムも,テーブルトークに近い"イニシアティブ・ベース"と呼ばれる方式を採用している。プレイヤーがモンスターの一群と共に順番にコマンドを入力していく,ターン型のコンバット方式である。プレイヤー自身のコマンド入力から相手の入力までの時間差は,最短なら1キャラクターにつき6秒までに設定できるようになっており,ターン制とはいえ忙しそうなプレイになりそうだ。モンスターを含めた個々のキャラクタータイプには"イニシアティブ率"というパラメータがあり,1ターンでどれだけの動きが行えるのか,どのキャラクターが優先的に行動を起こせるのか,などの細かい設定がなされている。
ゲームはもちろんパーティ制で,6人までのキャラクターで構成することができる。それぞれのキャラクターを個別に操作できるということは,より戦略的な攻撃ができるということだ。例えば,4人を正面から突撃させつつも2人を背後に回して,長距離攻撃を仕掛けてくるユニットを排除するなどということもできるだろうし,戦列から離脱させて貴重なアイテムを回収したり,ポーションを使って体力を回復させることだって容易だ。もちろんフォーメーションを組むことができるようになっているので,地形やモンスタータイプに合わせた組み合わせを考えてながらプレイするのも楽しいかもしれない。 インタラクティブなオブジェクトも多く,本棚やテーブル,酒樽などといったさまざまなモノを動かしたり壊したりすることができるのも面白い。それぞれのオブジェクトには重さのパラメータが用意されていて,壊すのにどれだけのダメージを加える必要があるのかなども計算されているのがスゴい。これらのオブジェクトを戦闘時に戦略的に利用することもできるのがミソで,チェスト(宝箱)をドアの前に移動させて敵の侵入を拒んだり,テーブルの上に登って弓を射掛けるというような局面も考えられるだろう。なにしろD&Dのルールに合わせて,高いところからの攻撃には+2のアドバンテージが加算されるのである。
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