●Preview#19: Arcanum:Of Steamworks and Magick Obscura Text by 奥谷海人 機械技術と魔法文化がせめぎ合うスチームパンクの世界 そのタイトルが示すとおり「Arcanum:Of Steamworks and Magick Obscura」は,ファンタジーRPGとスチームパンクのエッセンスをかけ合わせたユニークなゲームだ。開発元のTroika Gamesは,第1作めの「Fallout」を制作したティム・ケイン(Tim Cain)氏らによって創設されたチームである。Falloutは1996年に発売され,「Diablo」を押さえて数々のゲーム賞を受賞した異色のRPG作品として記憶に新しい。Arcanumは,人間のほかにオークやエルフ,ドワーフといった種族が混在する世界を描いており,蒸気機関などの機械が急速に発明されているという,産業革命真っ盛りの時代背景だ。ただ,ウィザードたちによって古より伝わる魔法文化も古びてはおらず,機械と魔法,そして魔法使いと科学者たちが対立し,世の中のバランスが狂い始めているという世界観なのである。技術がどんなに進歩しても,結局は物理的な真理からは逃れられない。ところが,一方の"魔法"はこの物理の法則を曲げてしまうところに本質があり,魔法信奉者と機械技術促進派によって一触即発の状態にある,というのが物語の基礎になっている。 キャラクターの体質から生まれ育ちまでを事細かに設定する 新しいキャラクターを制作した場合,プレイヤーは人間,ドワーフ,エルフ,ハーフエルフ,ノーム,ハーフリング,ハーフオーク,ハーフオーガという8種から好みの種族(そして性別)を選択でき,それぞれにベースとなるパラメータ値が設定されている。パラメータの中には,体力や知性などベーシックなものから,移動速度を示す"スピード"や可能運搬アイテムの総量を決定する"キャリーウェイト"などの15項目が存在する。 中には,NPCのリアクションに差がつく"ビューティ"(美顔度)というものもある。いままでにいくつかのRPGに似たような要素があったこともあったが,Arcanumのそれはキチンと機能しているものだ。この数値が高ければNPCとの会話がより友好的なものになるし,逆に低過ぎるために品物を売ってくれないショップキーパーがでてきたりする。 性別は,男を選んだ場合はストレングスが1ポイント加算されるのに対し,女性は1ポイント低くなり,その代わりに回復力や毒への耐性などに影響する"コンスティトゥーション(Constitution=体質)"にボーナスが与えられるようだ。各パラメータの最大数値は,NPCの反応を示す"知名度"や"キャリーウェイト"以外のものなら20にまで成長し,人間なら初期設定ですべてのパラメータに8が設定されている。
さらに面白いのが,キャラクターの簡単な「素性」を選択できるようになっていることだろう。製品版ではこの設定が50種類程度あると考えられるが,どれもパラメータやスキルに一長一短の変化を加えることになる。 Arcanumの世界を彩る"技術"と"魔法" キャラクターの設定にかなりの説明を費やしてしまったが,さらに細かい分野に分かれているのが,Arcanumに用意された魔術力と技術力だ。このゲームには,プレイヤーキャラクターの傾倒を示すバロメータが存在していて,魔法と技術をバランス良く使いこなしているか,もしくはどちらに偏っているかを確認できる。これらは,プレイヤーの設定したキャラクターのパラメータによって影響されるだけでなく,プレイを進めていくうえでプレイヤーがどのような武器や魔法を使ったかによって変化する。 例えば魔法に偏ったキャラクターなら,魔法で攻撃したときにクリティカルヒットが出やすくなったり魔法に対してある程度の耐性ができたりする一方,銃や爆破物の攻撃には弱くなる。つまり,どういうキャラクターに育てるかはプレイヤーの好み次第になっており,事前にキャラクターの職業を選択しないのもそのためなのだ。ただし,レベルアップのときのポイント振り分けを自動化するため,ある種の職業へ成長していくように固定してしまうことは可能だ。 技術には,
の8学派があり,さらに細かく七つずつの知識が存在する。
となる。この中ではMeta(変成)が分かりづらいが,これは敵が繰り出したスペルに影響を及ぼし,別の学派のスペルに変化させてから敵に送り返すようなものになる。 300種類のNPCと280種類のモンスターが登場 非常に前置きが長くなってしまったが,実際のゲームプレイについてもここで触れておこう。ストーリーはFalloutと似た構造になっており,中心となる流れ以外はプレイヤーの行動に依存したオープンな形を取っている。ゲームは,冒頭シーンのツェッペリン墜落現場で託されたリングの持ち主を探すことから始まる。大きく分けて三つの本筋が存在しているが,どのような行動でそこへ目的地に辿りつくか,どのようにしてプレイヤーの前に出される問題や数々のサブクエストを解決しているかは,すべてプレイヤーに任されているのである。時計もあるが,行動が時間的に制限されるようなことはないため,街のカジノで儲かるまでギャンブルしてもよいのだ。
サブクエストは200種近くになると思われ,クエスト内容やNPCとの会話はジャーナルに逐一記述されるのがとても便利だ。Arcanumのゲーム世界は非常に大きく,大陸の端から端まで歩いていくと,リアルタイムで48時間はかかるという。ゲームには昼と夜の概念があり,1日は現実世界の2時間に設定されている。夜にしか出ないモンスターも登場するし,日が暮れると店じまいするショップが多くて不便になる。その代わり,プレイヤーのカギ開けスキルが高ければ,店に侵入してアイテムを略奪することだって可能なわけだ。もっとも,夜には警備隊がうろついていたりするので,ローグ系のプレイヤーキャラクターでも十分な注意は必要になるだろう。 Arcanumは,インターネットやLANで最大8人までのネットワークモードもサポートしている。国内での発売もカプコンからと決まっており,アメリカではSierra Studiosから8月中の発売を予定している。Falloutファンを中心に根強い人気のソフトになりそうだ。
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