Xbox2のハードウェア仕様流出? - 2004/06/25 23:33


 マイクロソフトが2005年に発売すると見られているXboxの後継機についての妙に具体的な「噂」が流出している。GPU部分についてはATI製のものが使われるという「噂」はすでに流出して久しかったわけだが,CPU部分ほか全体像についての情報までもが流出してきた。真偽のほどは不明だが,現状ではそれなりに確度の高そうな情報と見られているようだ。
 詳しくは同記事を読んでいただくとして,とりあえずコードネームXenonと呼ばれるXbox後継機のCPUとGPU周りを中心に軽く解説してみたい。

■XenonのCPUはマルチコアPowerPC系?

 Xenonで使用されるのは,三つのコアをまとめたPowerPC系のプロセッサで,1コアあたり2命令を同時発行できるという。これが3.5GHz以上で駆動されるので,基本性能は21G命令/sec以上ということになる。基本的に三つのコアではあるが,コアごとに2スレッド流すことで,全体で6スレッド同時実行するというイメージだ。
 さらに,ベクトルレジスタがスレッドごとに128個搭載されているという。VMXとあるので,これはおそらく128ビットレジスタでベクトル演算を行うAltiVec(VelocityEngine)がついているという意味だと思われる(AltiVecは128ビットレジスタで32ビット浮動小数点演算を同時に4個実行するPowerPC系のマルチメディア命令実行ユニット)。その場合の演算性能は84GFLOPSとなる(PlayStation2のEmotionEngineで6.4GFLOPS程度)。レジスタ数が不自然に多いようにも思われるが,これが仮に複数のレジスタに対して同時に演算ができる仕様であるなら,最大10.5TFLOPSの演算性能を発揮する可能性もある。
 CPUは,コアごとに32KBの命令キャッシュと32KBのデータキャッシュを持っている。まあこれはごく普通だが,さらに3コアで共用する2次キャッシュ1MBを搭載し,この2次キャッシュはGPUから直接参照できるという非常に特異な構造になるとされている。CPUで加工したテクスチャやモデルを直接レンダリングするなど,かなりダイナミックなことが超高速で可能になりそうだ。
 搭載されるメモリは256MB以上。これをCPUとGPUで共有するのはXboxと同じ構成だ。メモリ帯域幅は22.4GB/sec以上とされている。CPUにとってみれば超高速,GPUに取ってみればちょっと低速という感じか(近いところではRadeon 9800XTのメモリ帯域が23.4GB/sec程度である)。

■Xenonのグラフィック性能

 グラフィックについては,ATIのグラフィックコア,おそらくは来年出てくるXI800系(?)のGPUコアを使い,500MHz以上で駆動するという。
 搭載されているALU(演算ユニット)が48個ということで,最大64個の頂点ないしピクセルへの演算が可能という表記が見られる。ALUのどれをVertexShaderとPixelShaderにどれだけ割り当てるかということはプログラマブルな構成となっている。ShaderModelは3.0以上のものということで,32ビットの浮動小数点演算をサポートする。
 また,GPUには10MB程度のRAMをチップ上に搭載するという。これは横720ピクセル程度のスクリーンを想定した場合,フレームバッファとして適した容量であるという。帯域幅は256GB/secということで,この内蔵RAMは全体の処理速度をかなり引き上げそうだ。全体的にはVRAMをメインメモリと共有する方式だが,内蔵RAMはキャッシュ的にも使われることになるのだろう。このあたりは,GameCubeのFliperを開発したArtXチームを擁するATIには十八番の分野だ。

■検討

 CPUもGPU部分も,演算性能は桁外れに凄そうな気配である。その割にPixelFillRateは4GPixel/sec以上ということだが,これは少々もの足りない(X800XTの場合8GPixel/sec)。フレームバッファは超高速で,多数のピクセルパイプラインが動作するというのに,これは不自然なことだ。
 さて,PowerPCのアーキテクチャを知っている人なら分かると思うが,「2命令同時発行」というのはあまりなさそうなスペックだ。PowerPCでは命令の種類ごとに実行ユニットが異なり,それぞれに命令を発行してプログラムが動くので,最低限,ロード/ストアユニット,整数演算ユニット,分岐ユニットなどは省略しがたい。最近のPowerPCでは整数演算ユニット2個と浮動小数点演算ユニット1個の構成がほぼ最終解といえ,整数部分を有効に使うにはこれらに同時に命令を発行しないことにはメリットは出てこない。
 また分岐ユニットも,命令実行部分とはまったく別に処理するのが通例なので,最低でも3命令同時発行くらいはしないと効率はよくない。2命令しか発行できないのでは1クロックあたりの命令実行数が少なすぎ,スーパースカラプロセッサのメリットが発揮できない。コアごとに2つのスレッドが実行されるとなっているのだが,整数命令ユニットは2重化されているとしても,分岐やロード/ストアユニットが共用の設計では,パイプラインの流れはちょっと悪そそうな気配である。
 マルチコアのCPUについてはIBMの得意とするところであり,最近のトレンドなので問題はないだろう。Xboxでハードウェアハッキングされて懲りていると思われるので,馴染みのないCPUを使うということでPowerPC系というのも十分ありうる話である。もっとも,過去にはCPUはVIA C3ベースになるといった「噂」も流れていたわけなので,鵜呑みにするのはまだ危険だ。
 なお,コードネームXenonというのはアキレスと亀のパラドックスで有名なギリシアの哲学者の名前である。若干,眉唾な感が拭えないのだが……。(aueki)


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