韓国と日本を繋ぐ仕事を20年ほどしてきて,日本をよく知るNetclue CEOのカン氏
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開発チームインタビューと時間的にちょっと前後してしまうが,韓国初日の3番めのインタビューは,NetclueのCEOカン・テ・ヒョン氏。氏は,24年前に日本の大学に留学し,卒業後20年ほどを韓国と日本を行き来する仕事に就いていたという。
日本語ぺらぺらで,日本の文化にも詳しいカン氏のコルムオンラインでの戦略とはどのようなものなのか。それを重点的に聞くことにした。記事後半には,2日めの
KIDC見学の模様があるので,そちらもぜひ!(Seal)
forGamer編集部(以下,4G): オンラインゲームが発達している国は,たくさんありますが,なぜ日本での展開を考えられたのでしょうか
カン氏: ここ20年来,日本と韓国を繋ぐIT関連の仕事しかしていませんし,オンラインゲーム事業を始めるあたっては,いろいろと勝手を知っている国(=日本)を選びたいと思っていました。確かに,市場的に発達しつつある中国や,熟成したアメリカでオンラインゲームのサービスをしたほうがいいのですが,やはり
プレイヤーの要望にもすぐに答えられるという自信がもてる国で,展開したかったのです。そのほうが我々だけでなく,プレイヤーにもメリットとなりますし。
日本はまだオンラインゲーム市場は小さいですが,いずれ大きくなると確信しています。Netclueが参入するには少し遅いタイミングだったかもしれませんが,ラグナロクオンラインやリネージュで市場が活性化している今が,参入するいい時期だと思いました。
4G: なるほど,タイミングを見計らっていたということですね。
カン氏: そうです。何事においてもタイミングは重要です。日本は,パッケージ販売のゲームに人気があり,非常にクォリティの高いゲームがたくさんリリースされています。これは逆に,これらを作っている
日本のメーカーが,オンラインゲーム市場へ進出しにくい理由の一つとも考えています。イメージが定着しているメジャーなメーカーが,"完成していない状態"のゲームをβテストなどで公開するわけですから,プレイヤーからの叩かれる度合いもすごいものになるでしょう。これにどう受け答えするかということではなく,企業イメージに影響してくるというのが問われる部分だと思います。叩かれることで蓄積されるノウハウもあるでしょうから,これを経験しないといずれは行き詰ってしまうかもしれません。そういった意味では,Netclueのようにプレイヤーの先入観のない企業のほうが進出しやすいでしょうね。
4G: 日本はコンシューマゲームの人気が高いので,それが逆にオンラインゲームにとってデメリットになっているということですね。クローズドβテスト,オープンβテストを経て,日本のプレイヤーにはどのようなイメージを持っていますか?
カン氏: 日本のプレイヤーは,まだオンラインゲームが持つ特性への理解が少ないように思います。オンラインゲームには,決められているストーリーに沿った道筋ではない部分,いうならば
"旅"に似たところがあります。キャラクターの成長だけでなく,新しい発見や不意のトラブル,フレンドを見つけるなど,そのような部分を楽しんでほしいですね。
また,日本では無料のβテストだけをプレイする人がたくさんいますが,本当にゲームを楽しみたいならば,お金を払ってプレイしてみるのがいいと思います。メーカーの利益という話ではなく,プレイヤーがメーカーと一体となってゲームをよりよいものにしていくために必要なことだからです。完成品をプレイするというパッケージゲームも面白いですが,
自分たちで作り上げていけるというオンラインゲームの面白さも知ってほしいと思います。
4G: 日本と韓国では国民性の違いでプレイヤーの嗜好も変わってくると思いますが,コルムオンラインではどのようなことに力を注いでいますか?
カン氏: コルムオンラインの開発をしているeSOFNETは,コルムの8年ほどの歴史だけでなく,N-AgeやDragon Rajaなどのオンラインゲームのノウハウもあります。コルムオンラインは,
パッケージゲームの技術と,オンラインゲーム先進国ともいえる韓国で培われた技術とを融合させているのが一つの特徴といえます。とくにオンラインゲームとしての通信部分は,500人程度と10000人規模ではバグの形も違いますし,ISP(インターネットサービスプロバイダ)での問題点も異なってきます。
また,ダンジョンがゲームの大半を占めているといった,コルムオンラインがほかのMMORPGと異なる部分を使って,どのようにコミュニティを発展させていくかにも気を配っていきたいと思っています。現在ではギルドシステムとフレンド登録機能でのコミュニティが主になりますが,このときのメリットをどのように具体化していくかが悩みどころです。例えば,村によってアイテムの売却数やその利益は異なってきますが,その売り上げを周辺のダンジョンへ還元するといった方法などで,ダンジョンを占領していることがメリットに繋がるようにしていければと思っています。いずれはすべてのプレイヤーがギルドに入って仲間を増やし,ダンジョンを協力して占領や防衛するようになるといいですね。
日本ではコンシューマゲームの人気が高いので,それがオンラインゲームの発展を阻害していると,カン氏は語る。プレイヤーと一緒にコルムオンラインを成長させていきたいという
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4G: 日本ではPvP(対人戦)はあまり好まれないのですが,この点に関してはどういった考えてを持たれていますか?
カン氏: ええ,日本のプレイヤーがあまりPvPを好まないのは分かっています。コルムオンラインでは3000のダンジョンを用意していますので,1回もダンジョンを占領したことのないプレイヤーはいずれ少なくなると思います。また日本で展開するにあたってのローカライズは,単に言語として単語を翻訳するのではなく,
ゲーム自体をローカライズしていきたいと考えています。つまりは,日本市場,日本のプレイヤーに合ったゲームに変化させていくということです。しかし,ゲームの気に入ったところ,気に入らないところというのは人それぞれなので,そのバランス調整が課題となっています。
Netclueでは,メーカー側のすべてのスタッフがプレイヤーの生の声を聞くようにしています。私も1プレイヤーとしてエルランドサーバーでプレイしていますが,日本には親切なプレイヤーが多いですね。そういえば,この前スタッフ全員に,プライベートでコルムオンラインをプレイして,
2月中にレベル80にしないと首って通達したところです(笑)
4G: それって結構厳しいと思いますが……(笑)
カン氏: いやいや,私は本気ですよ。いずれはスタッフ全員を,レベル150までプレイさせようと思ってますし。私の日課として,公式サイトのBBSや不具合報告センターへのメールにほとんどすべて目を通し,何か問題点があったらメモを取り,それをスタッフへ伝えるというのがあります。メールへの返事の書き方やFAQのチェックなどに対して指示を出すこともありますが,ほとんどはゲームを改善させていく方向のものが多いですね。プレイヤーがどのようなことを感じて,どのような部分を問題としているかは,実際にプレイしてみないと分からないことですからね。
4G: BBSの書き込みに面白いものはありましたか?
カン氏: 面白いというわけじゃないんですけど,この前すごく熱心なCorumファンがいて,BBSにもよく書き込みとかしてくれていたので私もずっと動向を追っていたのですが,彼が突然Corumはもうできません,と書き込んだことがあったんです。なんでもビデオカードが貧弱でダメだ,と。こんなに熱心な人がCorumを辞めてしまうのは惜しいなぁと思った私は……・
4G: ……どうしたんですか?
カン氏: マシン一式を買って送ることにしました(笑)。だって熱心なプレイヤーはMMORPGの運営にとって財産のようなものですからね。辞められてしまうのは本当に惜しいです。最高のスペックのマシンを早速買い揃えて,さあ送るぞ,というところまできたんです。
4G: またすごい手段に出ましたね(笑)。それは結局送られなかったんですか?
カン氏: そうです。我々がまさに送ろうとして梱包しているときに彼がBBSに書き込みをして「ビデオカード買ったら動きました〜」と。戻ってきてくれたのは嬉しいのですが,このマシンはどうしてくれようかと悩んでるところです(笑)
4G: かなり本気でプレイして,BBSをチェックして対応をしてるんですね。ということはもしかして,公式サイトのGM雑談にあるエウロスさんへの電話も本当なのですか?
カン氏: もちろん,ちゃんとプレイしていますし,本当です。というか日本サーバーではファイター弱すぎなんで早く強くしろってずっと言ってるんですけどねぇ。なかなか聞き入れられません(笑)。そういえばあのときのエウロスときたら「失礼ですがどちらさま?」とか聞いてきたりして,ホント失礼な奴です。
GMエウロス氏: だってただの酔っ払いのオヤジかと思ったんですよ〜
カン氏: まぁ夜中の3時だったし,しようがないね(笑)。ところで私のキャラクターはレベル70のファイターなのですが(編注:取材当時の話。2月2日時点では,Lv73 ファイターだ),高レベルのハンティングポイントに強引に行ったりして死にまくってます。この前見たら,"くやしい〜ランキング"で37位だったかな。そういえば韓国サーバーの話ですが,eSOFNETの社長は,自分で拾った
アイテムをフリーマーケットで売りまくって儲けてるみたいですよ(笑)
4G: スタッフ全員が,コルムオンラインにかける情熱や意欲が高いのいうのがよく分かりました。最後に日本での正式サービスなどを含めた今後の予定を聞かせてください。
カン氏: 2月には"不滅のアメリタット"のほかに,
ミニゲームが出来るようなアップデートを予定しています。3月以降では,日本に合わせたゲームシステムのローカライズがスタートします。またクラスチェンジシステムも具体化してきて,おそらく現在のクラスそれぞれに対して
1段階めで2種への分岐,2段階めでさらにそれぞれが2分岐といった案があります。2段階めは,1段階めのクラスチェンジを実装し,クラス間バランスを調整してからという流れになりますけどね。まぁ正式サービスは,3月の日本向けローカライズで,プレイヤーが楽しく遊べるようになってからにしたいので,早くとも4月以降になると思います。
GMエウロス氏とのやり取りや,いきなりマシンを送ってしまうというエピソードなど,いろいろと面白い話が聞けたインタビュー中で最も驚いたのは,カン氏が日本語でメモしているところだ
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■コルムオンラインのサーバーが設置されているKIDCを見学■ 韓国2日めには,コルムオンラインのサーバーが置かれているKIDC(Korea Internet Data Center)を見学した。KIDCは,韓国の通信大手DACOMが100%出資する,データセンタ事業を行う会社。ソウル市内には,KIDC最大のデータセンタが20か所ほどあり,韓国の複数のIT企業が利用している。コルムオンラインの日本サーバーも設置されているので,特別に見学させてもらえることになった(韓国サーバーは別会社とのこと)。
KIDCのビルの内部は,
厳格にセキュリティ管理(12段階あるとのこと)されていた。受付の脇にはモニタ室があり,壁一面のモニタで各ルームの状況が把握でき,数人の警備員が常駐していた。ドアの通過手順や内部の案内役の警備員が少ないなど,日本国内での同様の施設よりはセキュリティが甘めといったイメージを受けたが,Netclueスタッフが熱心に頼み込んだおかげなのかも。
データセンタ内部は基本的に撮影が禁止で,
コルムオンラインのサーバーが置かれている一角だけ特別に撮影の許可が下りた。2枚のドアを通ってサーバー室に入ると,一定の温度湿度管理された空間が広がっていた。
コルムオンラインのゲームサーバーは,ログインサーバー1台,ワールドマップサーバー1台,村サーバー1台,ダンジョンサーバー5台で1セットが構成され,これにデータサーバー3台が加わって,計11台で運用されていた。データサーバーはゲームサーバー2セットで共用するようになっているので,現在のアルカディアとエルランドで,データサーバーが1セット使われるという仕組みだ。ちなみに,予備のゲームサーバーとデータサーバーが1セットずつ用意されているほか,
正式サービス後の会員の増加に対応するために,ラック10台分のスペースもすでに確保されていた。
長方体で巨大な豆腐のようにも見えるKIDCのビル。コルムオンラインの日本サーバーは11台で構成され,この施設に設置されている
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