ATIが,グラフィックス統合チップセット「RADEON 9100 IGP」を発表 - 2003/06/27 21:04

 ATIは2003年6月23日,世界初のプログラマブルシェーダ内蔵型グラフィックス統合チップセット「RADEON 9100 IGP」(以下,R9100IGP)シリーズを発表した。
 カナダに本拠を構えるATIは,現在,新型肺炎SARSの影響でスタッフの海外渡航を自粛している。そのため発表会は,日本時間23日22時にインターネット上で世界同時に行われた。

■DirectX 8.1対応のグラフィックス統合チップセット
 R9100IGPシリーズは,エントリーからメインストリーム向け統合チップセットの「RADEON 9100 IGP」と,そのモバイル版にあたる「MOBILITY RADEON 9100 IGP」の2タイプを用意。
 "9100"という型番から想像がつくように,チップのベースはRADEON 9000(9200)で,プログラマブルピクセルシェーダはバージョン1.4だ。つまりグラフィックスコアはDirectX 8世代,世界初のプログラマブル(ピクセル)シェーダ機能を実装したグラフィックス統合チップセットというわけだ。
 R9100IGPシリーズの主要スペックと特徴を,以下にまとめておこう。

<<システム>>
 ・Pentium4/Celeron対応(Hyper Threading対応)
 ・Pentium4-M/Celeron/Pentium-M対応(MOBILITY)
 ・FSB 400/533MHz対応
 ・AGP8X(AGP3.0)対応
 ・DDR400 SDRAM デュアルチャネル対応(メモリバンド幅6.4GB/sec)
 ・最大4GBメモリサポート

<<グラフィックス>>
 ・16MB〜128MBのメモリをグラフィックスに割り当て可能
 ・プログラマブルピクセルシェーダ1.4対応
 ・最大解像度2048×1536ドット/32ビットカラー
 ・異方性フィルタリング&FSAA対応
 ・MPEGアクセラレーション機能

 サウスブリッジはIXP250で,USB2.0×6ポート,ATA100×2CH,3COM Etherポートを提供,R9100IGPとは266MB/secの専用バスで接続される。

■FSB800MHzへの対応は? プログラマブル頂点シェーダは搭載しない?
 上記のスペックを見たうえで,気になる点を挙げるとすれば二つ。
 一つはFSB800MHzの最新Pentium4ファミリーへの対応をうたっていない点だ。ノートPC用のMOBILITY版はともかく,デスクトップPC向けのR9100IGPで対応していないのはツライ。これは技術的問題よりも,インテルとのライセンス問題が影響しているらしく,問題が解決し次第,Pentium4ファミリーにも対応すると思われる。

 もう一つの気になる点は,プログラマブル頂点シェーダについて一切コメントしていない点だ。これまでATIは,自社GPUに搭載するプログラマブルシェーダを「SMARTSHADER」と呼んでいたが,なぜか今回は「プログラマブルピクセルシェーダ1.4対応」としか説明しなかった。
 詳細は不明だが,プログラマブル頂点シェーダは搭載せず「CPUエミュレーションで代用」という可能性もある。確かにプログラマブル頂点シェーダ2.0まではCPUエミュレーションが可能なので,未実装でもアプリケーションは問題なく実行できる。ちなみにSiS製GPUのXabreも,プログラマブル頂点シェーダを搭載していない。

■安価に3画面環境を提供
 R9100IGPでユニークなのが,同チップの塔載マシンに外部AGPビデオカードを挿入しても,内蔵グラフィックス機能を利用できるところ。これは今までのグラフィックス統合型チップセットで"ありそうでなかった"機能だ(今までは,どちらか一方のグラフィックスだけがアクティブになる"排他仕様"になっていた)。
 現在多くのビデオカードが2画面出力をサポートしているので,こうしたカードをR9100IGPシリーズと併用すれば,合計3画面の出力が得られることになる。ただ,MATROXのParheliaシリーズのように3画面すべてで3Dアプリケーション表示ができるとは説明されなかった。とはいえ3画面環境でデスクトップ画面(2D)が表示できるだけでも,ビジネス/プロフェッショナルユースには訴求力が強い。歓迎するべきフィーチャーだ。

■パフォーマンスは競合他社製チップセットの6倍?
 無印のMOBILITY R9100IGPはデスクトップPC用,MOBILITY R9100IGPはノートPC用だが,コア自体は共通(動作クロックは非公開)。これまでと同様,ハードウェアベンダ側がデザインするPCの熱設計等に応じた動作クロックに設定するはずだ。

 また3Dグラフィックス機能は完全にRADEON 9000/9200ベースというわけではなく,情報筋によればピクセルレンダリングパイプラインは2本とのこと。つまり同クロックで動作したとしても,パフォーマンスはRADEON 9000/9200の半分程度ということになる。

 しかしR9100IGPは,競合する他社製チップセット内蔵グラフィックスの機能と比較すると"6倍以上"も高いパフォーマンスをもつとのことで,発表会では視聴者にベンチマーク結果を見せるパフォーマンスも行われた。
 測定環境は不明だが,ベンチマークソフトは3DMark03,競合グラフィックス内蔵チップセットはインテル系コアと思われ,スコアは競合チップセットが128,R9100IGPが915であった。
 3DMark03は,テスト2以降プログラマブルピクセルシェーダが必要なので,競合チップセットはこれを実行できていないはず。スコアに7倍以上の差が生じたのはここに大きな理由がある。しかし,これまで動かなかった3Dアプリケーションが動かせるという点では,R9100IGPにアドバンテージがあるのは確かだ。
 R9100IGPのリリース時期は2003年夏。今年中盤以降,採用デスクトップPC,採用ノートPCも発表される見込みだ。旧MOBILITY RADEONシリーズとのピン互換は維持されているので,現行モデルからのマイナーチェンジ版での採用も多くなりそうだ。(トライゼット西川善司)

(写真上段左) ……ビデオストリームで開かれたRADEON 9100IGP発表会
(写真上段中央)……RADEON 9100 IGPシリーズのシステムブロック図
(写真上段右) ……これは「The Elder Scrolls III:Morrowind」(Bethesda Softworks Inc)を使用した,R9100IGPとその競合チップセットとの表現力の差を見せるデモ。左側のR9100IGPの水面は,周囲の景色が映り込み,さざ波なども見える。それに対して右側の競合チップセットは,水面が平坦になっている。皮肉なことに,この水面のシェーダをコーディングしたのは,なんとNVIDIAの技術者Greg James氏だったりする。ATIがこの事実を踏まえてこのゲームを選択したのなら,相当シャレが効いている演出といえるが……
(写真下段左) ……「3画面出力対応」とあるが,単体で実現できるわけではない。誤解ないようにアピールするなら「外部ビデオカードを挿入しても内蔵グラフィックス機能が使用可能」という感じ
(写真下段右) ……これはちょっとした数字のマジック。3D性能だけを求めるなら外付けのノートPC向けGPU,たとえばATI MOBILITY RADEON 9600とかNVIDIA GeForce FX 5600Go搭載機を選ぶべき


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