というわけで独占取材に成功したFuncomの「Midgard」。かなり長い原稿になってしまったが,その大いなる魅力をあますところなく紹介しよう。
■海の民の生活を楽しむユニークなMMORPGの登場! "Anarchy Online"で知られるFuncomの次期大型オンライン専用RPG
「Midgard」の
最新情報を独占入手することに成功した。未来を舞台にした設定がユニークなAnarchy Onlineだが,Midgardはノルウェーのソフトハウスらしく
北欧神話をテーマにした,言わば"自分の家の庭"のようなもの。開発者たちも,自国の歴史や神話を扱うことには非常にエキサイティングになっている様子で,今までとは全く違うアプローチのMMORPGを製作しようという信念が見える。
まず,ゲームエンジンだが,
Anarchy Onlineのものとは全く異なるものが制作されている。会場の特別ブースで見せてもらった唯一の動画デモが,プレイヤーキャラクターらしい漁師が小さな釣り舟に乗っているもの。実は,キャラクターが船の側面に固定されたような感じになっていたので,これが完成時に予定されているモデルを使用したものであるのかさえ疑わしい。しかしここで開発者が見せたかったのは,キャラクターや船ではなく,その波の物理効果だと強調する。
Midgardにおいて
海は非常に重要な存在であるため,とことんリアルに作り込んでいるとのことだ。波は海の深さによって高さが変わるようになっており,太陽光がキラキラと水面に反射している。水面下には魚やオルカが泳ぎ回っているし,完成すれば魚網やモリを投げ込んで実際に引き上げることが可能になるらしい。さらに,嵐が起これば山のような高波がバイキング船を襲い,北部を航行すれば氷山の危険にさらされるようになるという。
実際のゲームプレイはどうなるのだろうか。プレイヤーが選択できるキャラクターは人間族だけとなり,世界観はスカンジナビアに非常に似た環境になるという。Midgardの開発を指揮するラグナー・トーンクイスト氏(ノースらしい名前だ)は,
「このゲームは人間と自然の闘争を強調をテーマにしている」と説明する。プレイヤーはゲームマップの南部地方からプレイをスタートすることになるが,この地方はNPCの王によって治められていて,安全や食料の給付と引き換えに,多くの税金が取られてしまう。プレイヤーは,この世界で生き抜いていくのにある程度の自信ができたら,単身なりグループなりで海を越えて移住していくのだ。
もっとも,いったん未開地に飛び出したら,モンスターや野生動物,さらにはバーバリアンたちとの争いが待っている。鍛冶屋を目指すプレイヤーは,良質の鉄鉱を確保できる山岳地帯に移り住んでいくことになるだろうが,そこには自分の領地であることを主張するジャイアントやドワーフ,クマやオオカミなどが住んでいて,プレイヤーの脅威になるだろう。
このゲームの面白味は,最近の3D系MMORPGに見られる流行である"戦闘"ではない。どちらかといえば「ウルティマオンライン」のように,ほかのプレイヤーとのインタラクションと非コンバット系のスキルに重点が置かれた内容で,酒場でのケンカ以外はプレイヤー対プレイヤーの戦いは一切禁止されることになるようだ。もちろんソードやアーチェリーといった戦闘用スキルもあるが,植民地の警護をしたり狩りをしたりするのに使われることが大半になるかもしれない。ちなみにプレイヤーは,北方の寒さで凍え死んだり空腹や喉の乾きによっても病気になったりもしてしまう。そうこのMidgardは,
久々に登場する"生活を楽しむMMORPG"なのだ。
■独創的なスキルの数々 面白いのは,
このゲームに登場するアイテムのすべては,プレイヤーによって製作されるという点。ウルティマオンラインがいまだなしえていないことを最初から念頭に置いてデザインしているというわけだ。
家や船は購入するのではなく"作る"ものであって,プレイヤーには「釣り」や「大工」,「調理」「服飾」「狩り」「木こり」「鉄鍛冶」「鉱堀」「ミルク絞り」などのスキルが用意されることになりそうだ。船を作るにしても,
船大工が鉄鉱夫から購入した鉄で作ったクギを購入し,木こりから仕入れてきた木を使ってバイキング船を作り,仕上げには服飾士の布で帆をかけ,「ルーン文字細工」を技能にする人に"安全航行の祈り"を掘り込んでもらう,というように様々な職業のキャラクターと協力していく必要がある。
例えば植民地先で必要なのは,最初は皆が共同で生活できるような宿営施設。その時点での大工の能力はそんなに高くないので宿営施設の質も高くなく,ねずみにカジられたり食料を奪われたりするそうだ。植民地が村として機能するようになってきたら,それぞれの職業をより効率良くできるワークショップを築き,猟を行うことでコミュニティを形成していく。海岸線に移住したグループは鉄がないだろうから,山に移り住んだグループと魚を引き換えに鉄や材木をトレードするようになるだろう。ワークショップがフルに稼動してくるようになったら,新入りのプレイヤーキャラクターやNPCを弟子として雇い入れ,ビジネスを発展させていくのである。
なお上記の"ルーン文字細工"は,ウルティマオンラインでの"書写"に相当するもののようである。鍛冶屋が剣を作ってそこにルーン文字を書き込むことによって,マジックアイテムを製作することもできるという。詳しくは説明されなかったが,魔法には3種類の宗派が予定されてているという。
狩りの獲物を追う「トラッキング」スキルもユニークだ。プレイヤーは,ペットとして猟犬やタカを飼うことができ,彼らを使ってより簡単に狩りを進めていくことができるようになるという。また開発者のリサーチでは,このあたりの時代の猟犬はオオカミの子供を育てて調教していたらしく,ゲーム中でオオカミの子を盗むのを職業にする人も出てくるかもしれない。ほかのMMORPGとは違って,オオカミやクマ以外の動物はプレイヤーキャラクターに立ち向かうことはなく,ウサギに襲われたりすることはない。
狩りでトナカイから弓が逸れたら,そのトナカイは一目散に森の中に逃げ込んでいくというわけだ。
大海で船出するときには「航行」というスキルが必要になる。航行スキルの秀でたプレイヤーが,複数のプレイヤーが乗る船のキャプテンになるだろうが,
海で嵐にあったときはほかのプレイヤーは固唾を飲んでキャプテンの腕前に頼るしかないだろう。キャプテンのスキルが十分でなかったり船の質が良くなかったりすれば,嵐で船が破壊されてしまい,海に投げ出されたプレイヤーは,人のいない未開の土地に流れ着いてしまうかもしれない,と開発者は説明する。
もちろん嵐に遭わない方法もある。北欧神話に登場する,多くの神々たちの加護を受けるのだ。神殿を建てて神に進物を贈ることで,海や森林での安全を請うことはできる。複数の神を信仰することも可能だが,神々によっては仲の悪いものもおり,同じように信奉されるのを快く思わない神も出てくるようだ。例えばロキはいたずらの神だが,ほかのコミュニティに悪影響を与えることができる分,ほかの神々からも疎まれるという。
なお神への信奉は,キャラクターが死んだときにも威力を発揮する。プレイヤーキャラクターが死んでしまってもスキルが失われたりすることはないが,十分な進物を贈っていなかった場合は,黄泉の世界で神のために無償のクエストをおこわなければならなくなってしまうのだ。
■Midgardにはレベルがない!? ミーティングが通常の30分枠から45分枠に延びるほど盛りあがったミーティングだが,筆者が一番興味を覚えたのは,
"Midgardにはレベルという要素がない"ということだ。
開発者によるとプレイヤーキャラクターのスキルは,タイプによって,なんと年齢に比例して上昇するらしいのだ。そうなると,
若い時分には戦士となって斧を振り回してモンスター狩りに出かけたり遠くに船出してほかの民族と戦争したりして,プレイヤーキャラクターの年齢が上がるにつれて,体力や戦闘スキルの衰えから鉄鍛冶や漁師へと転身するというようなことができるのではないだろうか。もっともプレイヤーキャラクターは老齢で死ぬことはなく,年齢の上昇を回避するような仕組みが考えられている。それは"神を信奉すること"。神に若返らせてもらうことが考慮されているという。
もちろん年長者は「政治系」や「知識系」のスキルが上がりやすくなるらしい。これで,村の長老となってほかのコミュニティの交渉にあたったりという面白さも加えられているのだ。プレイヤー間での闘争が禁じられているのでクラン同士の戦闘はないのだが,村を反映させるために必要なNPCを含め,限られた資源の取り合いといったような戦略眼がコミュニティの発展には必要になる。世界の端っこにはケルト系やラテン系,アフリカ系などの民族も住んでおり,貿易などでも長老の才覚が必要になることも考えられる。戦闘やアイテム製作に飽きても,コミュニティマネージメントという新しいゲームプレイを楽しめるというわけだ。
モンスターは野生動物のほかに,北欧伝説で描かれているようなものが多くなるはずだ。
空を埋め尽くすような大きさの"ミッドガード・サーペント"や,山一個分もあるような大きさの"フェンリスウルフ"も登場する。しかし,これらのハイレベルモンスターたちは,通常のゲーム世界を歩き回っているということはなく,
イベントで発生して何百人というプレイヤーが力を合わせて戦うことになるらしい。また(ゲームマスターが扮した?)神々も,NPCに混じって街を徘徊していたりというシチュエーションもあるようだ。
非常に面白そうなシステムのMidgardは,日本のオンラインプレイヤーも飛びつくゲームに仕上がることは十分に予想される。語弊を承知でいえば
「第二世代に入ったウルティマオンライン」といった感じだろうか。ただAnarchy Onlineのゲームデザインが終了した時点で企画を始めたらしく,まだ数か月ほどの制作期間しかないところを見ると,あと2,3年はリリースされることはないだろう。Funcomも,そのあたりについては一切公言することはなかった。
しかし情報を追い続ける価値は十分にありそうなこのゲーム。forGamer.netでも目を離すことなく情報を追い続けるのでお楽しみに。